二度と戻らない渡り廊下の日々
昨日から学校を貸し切って、ある企業のCM撮影を行っている。独身男性としては、こういう機会でもないと学校に来ることはまずない。出演する高校生たちの甲高い笑い声が廊下のすみずみにまで響き渡っていく。
僕はなんというか、学校だとか学生時代というものにとことん弱い。下駄箱のひんやりした空気。階段の奥から聞こえてくるひそひそ話。黒板消しの匂い。机の落書き。窓際の一番後ろの席から見る入道雲。あの頃の根拠のない希望や不安やけだるさが、至るところに降り積もってはキラキラと透きとおっている。