![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/9802264/rectangle_large_type_2_c42183083ffde64c3532052b920ee070.jpeg?width=1200)
あなたにしか聴こえないメロディ 〜コミュニケーションにまつわる"ある実験"〜
今日は大事なクライアントさんに向けて、広告コミュニケーションとは何かを教える、というなかなかに恐れ多い会に臨んだ。
その内容については別に減るものでもないので書いていいのだけど、単に書くのが面倒なので割愛するとして…(知り合いの人は問い合わせいただければ見せます)。その中で行なった、コミュニケーションにまつわる"ある実験"の結果が面白かったので、このブログをご覧の方にだけこっそり教えてあげましょう。
その実験は以下の手順で行います。
①2人1組のペアをつくってもらう
②その片方にだけ、ある楽曲を手拍子で演奏してもらう
(曲名を知らせる間、もう片方には目を伏せてもらう)
③楽曲は「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」(つまり誰もが知っている曲)
④手拍子で演奏してもらう間、聴く側は反応を顔に出さないよう釘刺す
⑤実際に演奏してもらう
⑥答えあわせの前、演奏側に、伝わったと感じたか手を挙げてもらう
⑦答えあわせの後、実際に楽曲が伝わっていたペアは手を挙げてもらう
これだけです。僕がこれまで実験した感覚だと、「演奏側は伝わったと感じたのに、聴く側には伝わっていなかった」というペアは3/4にものぼります(今日はちょうど3/4でした)。
この実験で、何を伝えたかったのか。それは「人は何かを伝えるとき、伝え手にしか聞こえないメロディが流れている」ということ。実際にやってみるとわかりますが、手拍子を叩くとき、人は必ず脳内で「ハッピバースデートゥーユー♪」という音楽を再生します。そしてそのメロディが、相手にも聞こえていると錯覚してしまうのです(だから相手に「伝わった」と思い込んでしまいます)。
このことは、一歩引いて考えてみると、「自分が良いと思っていることを相手に伝える」際のあらゆるシーンで同様のことが起き得ます。
自分の担当するこの商品は、知れば知るほど価値を感じる。だから正しく伝えさえすればお客さんはきっと買ってくれるはず。そういうメロディ。
自分が書いたこのブログ、特にこのエピソードなんかは我ながら素晴らしい。だからSNSでツイートすれば広まっちゃうんじゃないか。そういうメロディ。
ですが、伝えられる側には当然ですが、そのメロディは聞こえていません。不規則な手拍子だけを聞いて「なんだこれ?」と怪訝な思いをしています。
そもそも、あなたが思い通りに動いてほしいと思っている相手はふだん、企業の商品スペックやあなたのブログについて知識もなければ、興味もありません。そんな中、話を立ち止まって聞いてくれることなどそうそうないことです。そんな当たり前のことを、人は伝え手側(企画側)に回ってしまうとなぜか忘れてしまいがちです。
私たちは、いち企業人である前に、いち生活者です。
ふだん関心があるのは、好きな人やタレントのこと。少しでも嬉しいことがあって、いい暮らしができること。平たく言ってしまえば、自分や大切な人が幸せになること。
その大前提に立った上で、いかに、自分の頭の中にだけ流れるメロディを振り払えるか。相手にとって関係のあることだと思ってもらえるか。大切なものとして手にとってもらえるか。そうした相手の関心ごとと企業の接点をしつこく考えた上で、意識と行動を変える新しいつながりを生むのが広告コミュニケーションであり、「物を売る」ということなのだと思います。
そんな話をさせていただきました。といっても、これだけではさすがに概念的な話が多すぎるので、実際の広告事例や自分の携わった事例を交えつつ。
はて、どんな感想をお持ちになっただろう。僕にしか聴こえないメロディで勘違いしていないか、実は不安でいっぱいです。