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珠玉集

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心の琴線が震えた記事
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#日記

京都丸太町の路地裏にある本屋「誠光社」。世界でも有名な本屋「恵文社 一乗寺店」の元店長のお店。おしゃれな空間と手に取りたくなる本との出会い。本好きは、必ず立ち寄るべき一店。

11月前半のエンタメ事情|読書・映画感想

11月に入り、読書欲が戻ってきました。 私は遅読です。漫画であれば、戦闘シーンの「ダダダダダダダダタダー」とかも真面目に読んでしまう。 それでも今月は今のところ満足な読書体験ができています。 だけど最近視力が弱ってきていて、目の疲労から一時中断することも多く、読書の合間に映画も観ました。 そんな記録です。 ①夏木志朋著 『二木先生』 読みながら嫉妬してました。このテーマで私も書いてみたかった~、という。 全身全霊でこの一冊を書かれた感、作者の気合いをビシビシと感じ

掌編: 霧にいた二十年

 霧の朝を車内で迎えた。 二十年記念日は雲海を見ながら過ごしたい、 そんな夫の要望で日付が変わる頃には家を出て、車内で眠っていた。  目覚めると辺りは霧の中。ほんの数メートル先が幕を張ったように不透明。対向車のヘッドライトも白味がかってマイルドな光を射す。 めくる風景は山林で、枝がない真っ直ぐな杉が整然と緑を成していた。 「もうすぐ着きますよ」  夫は正面を見たまま、私の起きた気配で声をかける。 「山ってもっと鬱蒼としているかと思いました」 ドリンクホルダーから取るミルク

正直、創作に嫌気がした人へ

 頭や理屈で判っていても、 心が受け入れないときがある。  なんの慰めにもならないけど、 気分が換気できればと思い、書いてみる。  わたしはコロナ禍にある頃、 二軒のクラブから雇われママとしてスカウトされた。理由は聞いてない。聞いても忘れた。  その頃は皆さまもご存知のように、飲食店は大打撃に遭う最中。 「いつまでも世間は閉じてない。 やがて再開する日が来るので、そのときにお願いしたい」とのことだった。  雇われが付いても、ママ。 一体どんな仕事で、なにを、と実社会

10月31日に捨てていく思考

イヤホンがない。多分、ダイニングテーブルの上にある。積み上げられた本の下敷きになっているだろう。歩いている時は、大抵イヤホンをつけているから、なんだか寂しい。それに耳が余計に音を拾う。目も見るもの見るものを拾ってくる。頭の中は、余計なことばかりを考える。それが面倒だから、イヤホンをつけているのに。今日は、イヤホンがない。 寄り道した商業ビルで、本のイベントが行われていた。素敵な本がたくさんあった。気になった表紙の本を手に取り、ぺらっとめくる。一行目を読む。あ、と息が止まる。

作家デビューに年齢は関係あるのか?

だいたい週一くらいで更新していこうと思っているこの「あたふた日記」ですが、ちょっと気になることを耳にしたので、急遽記事を書いています。 それは、小説家としてデビューするのに年齢は関係あるのか、ということです。 「自分が中年になってきて、小説家デビューを目指しているのにまだ叶っていない……どうしよう、時間がない」 そう仰るご意見を聞きました。正確な前後の文脈がわからないので、もしかしたらこういう意味じゃなかったのかもしれません。本当に物理的に時間がないのでしたら私の話はまった

書くことについて

小説を書き始めてから、いやおうなしに自分の文章に向き合ってきたわけですけど、語彙力のなさ、重複表現の多さに今さらながら震え上がっております。ブルブル。 自分の文章を読み返すたびに、なんじゃこりゃ〜!!というフレッシュな戦慄が走るのです!! おそらく、ノビノビと書けばそこまでひどくはならないのですが、最近はもう日本語わからなくなる病に振り回されっぱなしなので、からっきし駄目ですね。 芥川、横光利一、村上春樹さんを読み過ぎたせいか、一人称主語で文章を始める癖が直らないのです

なんだ、まだ地球か

私が勤める物流倉庫は4階建てだ。 たかが4階と侮るなかれ。 業務用の倉庫の4階は一般の建物の8階に当するため、かなりの高さになる。天井までの高さは8メートルもあり、使っているフォークリフトはリーチのハイマストタイプ。 荷物の保管効率を上げようとすると、どうしても「高さ」が必要なため、多分、物流倉庫と言えば、これが普通だと思う。 1階はトラックや人の出入りが多いのであまり気にならないが、2階以上での作業はかなり孤独だ。 特に夜勤だと、最初だけちょいちょいっと打ち合わせをして、

メモ|私だけの楽園

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 私のからだは40年の年月を経て、心に響くものだけを吸収するシステムを構築しました。 急激な成長を望んでおらず、じっくり染みてくる感覚を味わいながら呼吸します。 不具合が生じた時には耳を澄まし、私自身の声を聞きます。 しんどいのか虚しいのか。 怒っているのか悲しんでいるのか。 私自身が感情を探り、時にそれを吐き出すべきか貯めておくのか判断します。 誰かに尻を叩かれなくとも私は自分の尻を愛でながら試行錯誤を繰り返します。 そういう生き方を望んで

【閲覧注意】ブスの受難

ブスに生まれると大変なんですよ 皆さま、ご存知でしたか? この、わたしが身をもって ブスの受難を説明しますね まずね、生まれた時から可愛い写真がないの 笑っているし、幸せそうですが 顔が残念で、服だけ際立つんですわ 制服は可愛かったんです ですが、なにせ顔がね 青春時代を送っても、ブスはモテません こんなブスに欲情する人はいません ブスですから 性格の悪さは顔に出ると決めつけられます わたしから言わせれば ブスをよりブスにしてるのはどう考えても周りの 人間で、物

短編: 理想と生きる体感

 木の実と葉っぱをお土産にし、食べずに飾っておくことにした。    飼い主のタツジュンとハムスターの僕は、秋の暖かな日差しの中、田舎へ向かった。  都会の喧騒を離れ、自然の息吹を感じる瞬間、心が解き放たれるようだった。  車窓から見える緑は絵画のように美しい。  田んぼに到着し、畦道で遊んでいると、 僕はリスたちに出会った。  最初は警戒していた彼らは、僕が持っていたドライマンゴーに興味を示し、徐々に近づいてきた。  リスの目は好奇心に満ち、僕は彼らにそれを差し出す。

短編: 僕が田んぼに来て思うこと

 金色に錘が付いているような、 僕は初めてお米の実を見た。 野原と同じ匂いがして、風は吹いても音がない。 「これがご飯になるの?」  ハムスターの僕は、穂の中へ白い粒があるぐらいにしか考えてなかった。 「そうそう、脱穀して玄米から更に白米にして」  飼い主のタツジュンは人間だから普通のことでも、僕には意味が分からない。  ダッコク、ゲンマイ、ハクマイ。金色の粒には過程があるのだけは承知した。 「ねぇ。田んぼってどうなってるか、見ていい?」  畦道に下ろしてもらった僕は、

短編: ももまろの『アリとキリギリス②』

←前編  私はてんとう虫。  アリやキリギリスとも良好な関係を保ちながら野原で生活しているつもり。 しかしアリのキリギリスへ示した態度に幻滅した。  アリは勤勉よ。仲間で女王アリを支えているのは野原の住民なら理解している。 私たちはアリへ口出しをしない。 アリの生き方だもの。  私が思うのは、キリギリスは怠け者と悪口を言われたけど、キリギリスは3〜4ヶ月しか生きられない。  あの音色だって、生まれつき出せる音ではなく、苦しい身体の変化を何度も繰り返し、やがて演奏ができ

エッセイ|いつの間にか私たちはシーソーのように。

 久々に「おじさんエッセイ」を書こうと思い少し書いたところで、新たなおじさんエピソードが舞い込んできてしまい、困っている。  そういうわけだから、本当に書きたいエピソードは今度にして、最近の出来事に絡めておじさんを紹介する。 ・  現在、うたすと2というイベントをしていて、私は課題曲の作詞をした。作詞は初めてだったけれど、ご縁をいただき、結果としてとても有難い経験をさせていただいている。  このことを、私は早くおじさんに知らせたいと思っていた。なぜならおじさんは、小説を