短編: ももまろの『アリとキリギリス②』
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私はてんとう虫。
アリやキリギリスとも良好な関係を保ちながら野原で生活しているつもり。
しかしアリのキリギリスへ示した態度に幻滅した。
アリは勤勉よ。仲間で女王アリを支えているのは野原の住民なら理解している。
私たちはアリへ口出しをしない。
アリの生き方だもの。
私が思うのは、キリギリスは怠け者と悪口を言われたけど、キリギリスは3〜4ヶ月しか生きられない。
あの音色だって、生まれつき出せる音ではなく、苦しい身体の変化を何度も繰り返し、やがて演奏ができる羽や身体が完成する。
私、見ちゃったんだ。
キリギリスが頑張っていた場面。
雨が止んだ夕暮れ。
草むらの奥深くで、ひときわ目立つ黄緑色のキリギリスが身を縮めていた。
まだ梅雨時期はカエルの合唱が辺りへ響く。
でもキリギリスの周囲は静まり、時間が止まったかのように動きを止めていた。
私は雨に打たれたキリギリスが寒いのかと思い、声をかけようかとしたとき、キリギリスは顎を空へ向け、息苦しそうな、外骨格が彼の体を締め付け、成長の限界を知らせているみたいだった。
やがてキリギリスは一歩を踏み出す。
頭部が古い皮を押し上げ、微かな音を立てながら割れていく。新しい体が露わになるにつれ、柔らかな緑色が街灯の光に照らされ、新たな命が生まれる瞬間は輝いていた。
続いて前脚が脱ぎ捨てられ、後脚も次々と解放される。
キリギリスの体は新しい服をまとい、さっきより鮮やかな緑色の軽やかさを取り戻していく。
変化が終わると、キリギリスはしばらくじっとして、周囲の気配を気にしながら新しい服を乾かし、外骨格を固める時間を持っていた。
キリギリスは再び跳躍する準備を整え、成虫としての新たな一歩を踏み出す決意を胸に秘めているかに感じた。
真夏の草むらでは、ひときわ目を引く存在があった。
キリギリス。彼の細長い体は、緑色の光沢を放ち周囲の草葉と一体化していた。滑らかな外骨格は、夕日の光を受けて輝き、夏の美しさを象徴している。
前翅は大きく透明感を持ちながら、微細な筋が走っていた。
軽快に羽を広げると、その下に隠れた柔らかな後翅は、風に揺れるレースのカーテン。
彼の頭部は丸みを帯び、大きな複眼が周囲の動きを敏感に捉えていた。触角は長く、細く、周囲の野原を動き回る。
鋭い顎を持つ彼は草を切り取り、食事を楽しむ。
私へ
「てんとう虫さんが害虫を食べてくれるから、
美味しい草がこうして手に入る。
いつもありがとう」
身体に似合わず繊細な気遣いを見せていた。
キリギリスの脚は長く、特に後脚は発達しており、彼が跳ぶ瞬間、空気を切り裂くような力強さを感じさせる。
強く蹴り上げると高く飛び跳ね、自由自在に空を舞う姿は野原の詩だった。
そうして夏の夜、彼の特徴的な鳴き声が響き渡る。
リズミカルな独奏は静寂を破り、周囲の生き物たちに夏の訪れを告げる。キリギリスの存在は自然の一部として、彼の魅力を一層引き立てていた。
仲間の虫との協奏はうっとりする夏の風物詩。
昼間はセミと気軽にコラボをして
「今日も夏らしい暑さになるのね」
私は木陰でそれを聴いて楽しんでいた。
アリの誹謗中傷は、個々の生き方を蹂躙し、芸術への冒涜だと思うの。
野原で共存しながら生きる者がそれぞれの役割を果たし、アリだけが偉いと私は思わないわ。