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2023年9月の記事一覧

習作 #18

「わざわざ死ななくても、無人島なんて自由に行けばいいじゃないか。」彼はそう言って、私の目…

やぐま
1年前
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習作 #19(完成)

 「無人島」  死んで花実が咲くと、何か不都合でもあるのだろうか。別に悲しい出来事があっ…

やぐま
1年前
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小説 #1

地獄巡りというと、暗い石窟を松明片手に歩いていくようなイメージを思い浮かべるかもしれない…

やぐま
1年前
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小説 #2

どのように男を捜すか、まずは交差点の角にあるチェーンの喫茶店に入って考えることにした。通…

やぐま
1年前
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小説 #3

いくつかある芸人の所属事務所のHPを巡回して捜せば、男はすぐに見つかった。 渡された写真の…

やぐま
1年前
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小説 #4

西武新宿駅の裏手にあるその劇場は思っていたよりも清潔感があった。屋外の階段を降りて地下の…

やぐま
1年前
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小説 #5

終演後、電信柱の陰から楽屋口を見張った。太陽は真上にあって、道路の照り返しが眩しかった。建物の裏には出待ち風の客が溜まっていて、そこが楽屋なのだとすぐにわかった。少しすると若者たちがぞろぞろと出てきて、先ほどまで舞台で見ていた面々が立ち話を始めた。ファンというよりは友達に近いのだろう、どの芸人も和やかな表情をしていた。 少し前に見た彼のネタを思い出す。素人目にも、彼が頭抜けて面白いのは一目瞭然だった。フリップの絵はかわいらしく、目にクリアに届く。台詞には無駄がなく、発声も明

小説 #6

私の母は酒で死んだ。ちょうど高校に入学する直前のことだった。 母は優しい人だった。私が物…

やぐま
1年前
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小説 #7

母とはじめて遠出をしたのは、中学に入って初めての夏休みだった。 その日も母は食卓のいつも…

やぐま
1年前
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小説 #8

閻魔はその翌日、丸の内にある財閥系の美術館に行った、地獄からJRを乗り換え、東京駅の地下街…

やぐま
1年前
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小説 #9

駅の西側には森につづく小さな小道があった。人が踏みならしてできたその道は、口を開けて私た…

やぐま
1年前
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小説 #10

夕方、ひとまず家に帰ろうと電車に乗り込み、目の前の席がちょうど空いたので座ると、隣のかわ…

やぐま
1年前