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往復書簡:ひびをおくる

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写真家・鳥野みるめが撮影した写真から、書肆 海と夕焼 店主・柳沼雄太が物語を紡いでゆく往復書簡。東京と鎌倉、互いに離れた場所でおくる日々。見るものも感じることも違う日々の中で、写…
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往復書簡:ひびをおくるとは

往復書簡:ひびをおくるとは

本記事では写真家・鳥野みるめさんと、私、書肆 海と夕焼 店主の柳沼雄太がnoteのマガジンにて連載している「往復書簡:ひびをおくる」についての概要をお伝えします。初めてお読みいただける方も、途中からお読みいただいた方も改めて楽しんでいただきたいという思いのもと、筆を執りました。

1.往復書簡:ひびをおくる とは
 「往復書簡:ひびをおくる」は、写真家・鳥野みるめと書肆 海と夕焼 店主・柳沼雄太の

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太005

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太005



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夏の音と隔たり

 百日紅の時期は長く、初夏から秋にかけてが見頃である。夏が一度だけ巡って過ぎ去ってゆく時間を、百日紅の花は見つめている。長く続いてゆく時間の中で、僕らが過ごしてきた時間は、百日紅の花のように小さくも鮮やかであり続けるのであろうか。それとも———。

 電話口から聞こえる彼女の声は、いつかの霧雨の夜を再び思い出させる。どこまでも続いて

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【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ005

【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ005



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柳沼雄太様

こんにちは。暑さもようやく落ち着き、にわかに秋めいてまいりました。

夜道を歩いていると、虫の声が聞こえたり昼間より涼しい風が吹いてもう秋を感じます。

今年の夏は例年と違い遠くへ行くことはかないませんでしたが、鶴岡八幡宮のぼんぼり祭りを見に行ったり、早起きをして大仏の裏山を散歩したり

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太004

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太004



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遠回り

 あの夜から幾度目かの朝を迎えている。部屋の窓から見える家のアンテナは、首を伸ばして朝が訪れる音を聴いているかのようである。瑠璃色の空が徐々に白色へと変わりゆく様相は、僕の気持ちを明快に表しているようで気持ちが良く、穏やかな風にそよぐ緑も祝祭の前の群衆のさざめきのような気がして、どこか誇らしい気持ちにもなる。

 彼女と連絡を取ることができ

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【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ004

【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ004



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柳沼雄太様

こんにちは。梅雨が明けてからは夏らしい青空と暑い日が続いておりますが、東京も気温の高い日が多かったのではないでしょうか??

先日届いたお手紙を読んで「よだかの星」を読み直してみたくなり「宮沢賢治 <ちくま日本文学全集>」を購入しました。昔、初めて読んだときは「勿体ない死に方、可哀想な

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太003

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太003



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人影と足取り

 どれほど歩いただろうか。果てなく続くような街並みの中で、いまだに歩みを続けていた。民家や居酒屋から漏れる光もいつしか消え、街は人々の生活とともに眠りについたようだった。生温かい風は吹くことを止め、茫とした空気だけがそこに残っていた。

 何も聞こえなかった。通り過ぎる人の足音や、吹き抜ける海風や、街に眠る人々の息づかい。そのいずれも

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【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ003

【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ003



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柳沼雄太様

こんにちは。7月ももう終わろうとしてるのにまだまだ傘の手放せない日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか??

先週もお手紙ありがとうございました。
ポストを覗くことや文房具屋さんで今の気分にあった便箋を探すことが、楽しい習慣になりつつあります。

柳沼さんからのお手紙で「不自由さ

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太002

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太002



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ある夜の明かり

 降りるつもりもない駅で降りてしまった。残業の後、電車の座席に体を預けると、いつの間にか眠りに落ちていた。最寄りの駅を過ぎたことはなぜか分かった。そう思った瞬間、この駅に降り立っていた。

 上りの電車までは、相当な時間があった。澱んだ眼差しで、改札を抜けた街並みに目を遣った。街灯だけが朧げに浮かぶ風景にたぐり寄せられるように、改札

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【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ002

【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ002



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柳沼雄太様

こんにちは。七夕も晴れ間がほとんど見えず、どんよりとした曇天が続き梅雨明けが待ち遠しいですね。

先日は素敵なお手紙をありがとうございました。

編集者のような気分で大きな封筒から出来立ての原稿を取り出しながら、わくわく読ませていただきました。

本屋さんでのときめきのお話、少しわかる気がします。わたしも『本屋さんしか行きたいとこが

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太001

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太001



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朝露と海鳴り

 海鳴りを聞いた気がする。空が鮮やかに白みはじめるころ、僕はふと目を覚ました。フロントガラスに流れる雨の滴を目で追いながら、つい数時間前のことを思い出した。

 昨日は彼女と付き合い始めて2ヶ月の記念日、そして彼女の誕生日だった。僕は花束を届けるつもりだった。彼女の誕生花であるクロタネソウを使ったささやかな花束を、近所の花屋に注文して

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【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ001

【往復書簡:ひびをおくる】鳥野みるめ001



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柳沼雄太様

こんにちは。

梅雨明けが待たれる今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか??

先週の土曜日に6年近く住んでいた吉祥寺から離れて、鎌倉へと引っ越してきました。

気を抜いて過ごしているとうっかり知らない人の部屋にお世話になっている感覚になりますが、片付けの終わっていない自分の荷物を眺めてはこれからここで暮らすのだな…と現実に引き

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