[日記]2021年3月25日(木)
息継ぎの記憶は殆どないことを自覚する。飛び込み台から水中へ潜り、顔を水面から半分ほど浮かべるまでの数秒間、呼気は水泡となって水中へ姿を現す。身体の側面に沿って足先へ流れてゆき、水面へ辿り着く頃には、その姿を消している。一度水面へ浮上した私は、空気を求めるために軽く口を開けて、幾つかの水飛沫とともに、必要な空気を過不足なく体内へ吸収し、再び水面の少し下へと身を潜める。潜航する船のように、その時ばかりは水面の水飛沫を避けているのかもしれない。体内へ取り込んだ空気は、数秒を数える