景泉

たまに怪文書を投棄します

景泉

たまに怪文書を投棄します

最近の記事

  • 固定された記事

スレイト・オブ・ガルラジ

神楽邸の物置の奥にある不思議な石盤。そこには時たま不可解なものが映るという。信じるか信じないかは貴方次第… 2/11駿河湾、漁船の上 「凪紗さん!もう少し右です!」 白糸結の普段の印象からかけ離れた大声が夜の駿河湾に響く。彼女が見つめているのは魚群ソナーだ 「はいよっ!しかし本当に良いのかね…?これどう考えても『密漁』だよ?あたしに至っては船舶の無免許運転のおまけ付きだし」 「いいんです!仲間との絆より大事なものなんてありませんから!」 「まーた結の変なスイッチが入っちゃっ

    • ダック's奮闘

      「はあ…はあ…お待たせしました綴理先輩。召し上がってください」  さやが肩で息をしながら料理の乗ったカートをガラガラと運んできた。お皿の上で主役を隠している銀色の丸い蓋を取るとそこには 「おお…これが本物の北京ダック…!徒町生まれて初めて見ます!」 「ボクも初めて。さやすごい」  きっかけは本当に些細な事だった。ビッグボイス選手権の後、すず、ひめ、ぎん達に部室に置いてあるぺきんだっくの名前の由来を話している時に 「そういえば徒町北京ダックって食べた事ないなあ。吟子ちゃん達はあ

      • 2年分のエールを

        「こんめぐー!」  忌々しい宿敵(補習)を倒した私が部室へ向かうと 姫芽ちゃんをはじめとした小三角の面々がわいのわいのしていた 「でもさあ吟子ちゃ…めぐちゃんせんぱいこんめぐー!」  姫芽ちゃんがエクソシストみたいな体勢でこちらを向いて挨拶してきた 「本当に姫芽は慈先輩が挨拶するとどんな事していてもすごい体勢で慈先輩に身体を向けて返事するよね…」 「こういう時の姫芽ちゃんって人間やめたみたいな動きしてるよなあって徒町思うんだ。凄いよね!」 「姫芽は姫芽!ふつうの女子高生だから

        • 安養寺文庫

          竜胆祭にて 「花ちゃん、そういえば私渡さないといけないものがあったの」 「え、何何せっちゃん?プレゼント?」 「昔花ちゃんが退院する時に託されたアレ。他の院友とも話し合ったんだけどやっぱり花ちゃんが持っているべきだって話になって」 「えっ…それって…」 「ちゃんと返したからね。私はまた向こうの屋台の偵察に行ってくるから」 「せっちゃーん!」 数日後  ゲームをやっているとどうしても勝ってばかりではいられない。負けが込んできた時にどう復調するか。それはゲーマーによって異な

        • 固定された記事

        スレイト・オブ・ガルラジ

          幕間 金沢料理を食べに行こう 本編

          AM5:45 「おお…ここが…金沢!」 「そうですよ結さん。遂に、遂に辿り着きましたね…!金沢!そして右に見えるはゴーゴーカレースタジアム!」 「二人とも盛り上がってるところ悪いんだけどさぁ…先にちょっと休ませて…」 「凪紗さん、夜にお店閉めてから今までほぼ休憩無しですからね…鉄人レース並のハードさですよ」 「じゃあ朝市で美味いもの食べてゆっくりしましょう。道は調べておきましたので」 「すず…鬼か。結…頼む。ちょっとだけ代わって…」 「ちょっ、凪紗さん…!?(凪紗の身体をゆす

          幕間 金沢料理を食べに行こう 本編

          ウィングド・スピンドル

          「花帆先輩はどこ!」 「藪から棒にどうしたの吟子ちゃん。ちなみにまだ部室には来てないよぉ」 「寮の私の部屋に大きなブーケが届いてたんだけどいつもの通り花帆先輩の仕業でしょう!?」 「あー、その件かぁ。確かに花帆せんぱいの実家に頼んで発注したんだけど依頼者はアタシと小鈴ちゃんなんだよねえ」 「えっ…」 「リンドウとブッドレアとエキザカム。『誠実』『あなたを慕う』『尊敬』の花言葉を持つ吟子ちゃんの誕生花をうまくまとめてもらったブーケだよ」 「本当に…?」 「大切な友達の誕生日に嘘

          ウィングド・スピンドル

          ミッドナイト・スナック・シスター

           明日は月曜日…という事でいつもの事ながら寮母さんに食堂のキッチンを使う許可をいただき綴理先輩と小鈴さんとわたしの分のお弁当を作るのが週末のわたしのルーティーンです。いつものとは言いますが季節に合わせて献立を変えたり飽きが来ないように工夫を重ねたりしているので毎回大変ではあるのですが…  今は消灯時間の少し前、洗い物や片付けを終えて帰ろうとしたら食堂の席の方から聞きなれない物音がしたのでそっちの方を向くと…姫芽さんがいました。 「あれっ、さやか先輩?」 「姫芽さんこそこんな時

          ミッドナイト・スナック・シスター

          幕間 ある日の玉笹家

          「おかえり彩乃!親子丼!」 「だからあたしは料理じゃないっつのバカ美!今日は仕事じゃなくて用事で出かけてくるんだって昨日のうちに言っておいたでしょ!?」 「それは聞いてたけどさあ…何の用!?まさか男!?」 「花菜の事!黙っておくとまたアレだから先に言っておくけど…」 「えっ彩乃それ本当…?」 「本当。ついでに家の様子も見てきたからこれお父さん達からお土産のぶどうとほうとう」 「ほうとうイェーイ!」 「単純過ぎる…」 「彩乃、さっきの話なんだけどさ。あたし達はどうすればいいの

          幕間 ある日の玉笹家

          TYMF

          「姫芽…これ、お誕生日…おめでと」 始業前、教室に来るや否や自分の席にもつかずにアタシの席にやってきた吟子ちゃんは顔を真っ赤にさせながら綺麗な包みを渡してきた。何だろうこれ。そこまで重いものではなさそうだけど… 「ありがと〜吟子ちゃん!朝からそのかわいい表情を見せてもらっただけでもうアタシ大満足だよ〜」 「…茶化すんならやっぱこれなしにしようかな…」 「う〜…ごめん、ごめんなさいってばぁ!」 アタシの親友は本当にフラグ管理の難しいヒロインだなあ…オタクたるものギャルゲーも嗜ん

          ラスト・ムーン・オンリー・ノウズ

          「さやかちゃんさやかちゃんさやかちゃーん!」 「なんですかなんですか、月見のお団子なら今冷ましているところなのでもう少し待ってください」 「やったあ!ってそうじゃなくてぇ。梢センパイ達が三年生だけでお月見するって出かけちゃったからあたし独り身なの!」 「綴理先輩もさっき同じ事をわたしに伝えてから出かけていきました。そんなに長くは出かけないとの事でしたし小鈴さん達も後でこちらに合流すると話していましたからそんなに慌てなくてもじきにみんな揃うと思いますよ?」 「それはそうなんだけ

          ラスト・ムーン・オンリー・ノウズ

          硝子越しに映るあなたはわたし

          「吟子さーん!」  指名が入った。珍しい。本当に珍しい。今日もお茶をひいているだけで1日が終わると思っていたから慌てて身なりを整え小走りで指定された座敷へと向かう。  私みたいに愛想の悪い舞妓を指名しようなんて人は大体二手に分かれる。ひとつは今まで指名したことがないとか誰でもいいから。と思って呼ぶタイプ。顔と名前は覚えているけれども2度呼ばれる事はまず無い。そしてもうひとつは…案の定だった。 『変な人』  幾ら愛想が悪く愛嬌が無いとしてもお客様を面と向かってそう呼んだ事は

          硝子越しに映るあなたはわたし

          イレブン・イヤー・エルダー

           今夜行われるるりちゃんのお誕生日パーティーの為に私は金沢市内のケーキ屋さんに向かっている。最近のるりちゃんの好みを調べ上げて特注のケーキを注文していざ受け取る!るりちゃんが『めぐちゃん天才…!』と泣いて喜ぶ姿が目に浮かぶようだ。にやにや笑いを抑えきれないままお店の入り口に向かうと先客がいた。片眼を隠すような髪型の少し歳上っぽい女の子。どっかで見たような気がする…めぐちゃん記憶力を駆使してライブの記憶を掘り返す…多分めぐ党さんだ。けどお互いプライベートの筈だし触れないでおこう

          イレブン・イヤー・エルダー

          バニー・サン・デイ

          「っしゃあ!アタシの勝ちぃ!」 「鬼気迫るってこういう感じなんだろうなあ…ってバーサーカーっぷりだったけどおめでとうひめっち。約束通りチャレンジ成功だけどルリ達に何をして欲しいの…?」 「はい…それがまた私欲で申し訳ないんですが…」 「姫芽ちゃーん!みんなで居間でゲームしよーっ!…って何!?なんでバニーさん!?いかがわしいプレイ中で徒町達お邪魔だった!?」 「姫芽…だらやだらやとは思ってたけどまさかここまでとは…だらぶち!」 「ちょ、ちょっと待って小鈴ちゃん!吟子ちゃん!決

          バニー・サン・デイ

          ランチタイム・エンジェル

          「はーい、午前の特訓はここまで!3年生はもう少し自主練するから後輩ちゃん達は1時くらいまで休憩!」  慈先輩からの号令がくだり徒町を含めたみんながその場にへたり込みました。漸くお昼ご飯にありつける…と思った矢先に誰もが気付きました。あれ、今日早朝に映画の撮影をしたからさやか(先輩)(ちゃん)お昼ご飯用意してないんじゃないの…?という事に 「わたしのミスです…今から冷蔵庫の中身で何かしらを錬成してくるので10…いや20分待ってもらえますか?」  さやか先輩が据わった眼をしてゆら

          ランチタイム・エンジェル

          蓮ノ大三角VS玉笹花菜(2)

          「慈!?慈は何処!?」 「うわっどうしたんですか梢センパイ」 「いきなりこち亀のオチみたいですねぇ」 「それ多分通じないよひめっち。めぐちゃんならまだ来てませんよこずこずパイセン」 「そう…スクールアイドルクラブの3年生宛に手紙が届いていたのだけれども私も綴理も全く心当たりがないからまた慈が何かやらかしたのかと…」 「ボクもなにもわからないからめぐに聞きに来たんだ」 「それはちょーっとと言うか大分めぐちゃんに失礼じゃなーい?梢、綴理」 「噂をすれば影がさすとはこの事ね…3人揃

          蓮ノ大三角VS玉笹花菜(2)

          蓮ノ大三角VS玉笹花菜(1)

          「どうしたんだい花菜。さっきからずっと神妙な顔をしてるけど」  久しぶりに会った親友はスマホの画面を見ながらずっと何かに悩んでいるように見える。少し、いや長めの逡巡の後、彼女は口を開いた 「あのね、菜月。お願いがあるの。力を貸してもらいたい」  人生の約1/3くらいはつるんでいる仲だ。今更こんな事を言うなんて水臭いじゃないか。そう思っていたが次に彼女が発した言葉で全てがひっくり返った 「私と一緒にLiveに出て欲しい。私と菜月の二人で戦いたい相手がいるから」  口に含んでいた

          蓮ノ大三角VS玉笹花菜(1)