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ラスト・ムーン・オンリー・ノウズ

「さやかちゃんさやかちゃんさやかちゃーん!」
「なんですかなんですか、月見のお団子なら今冷ましているところなのでもう少し待ってください」
「やったあ!ってそうじゃなくてぇ。梢センパイ達が三年生だけでお月見するって出かけちゃったからあたし独り身なの!」
「綴理先輩もさっき同じ事をわたしに伝えてから出かけていきました。そんなに長くは出かけないとの事でしたし小鈴さん達も後でこちらに合流すると話していましたからそんなに慌てなくてもじきにみんな揃うと思いますよ?」
「それはそうなんだけど…!でもやっぱりあたし待ってられない。さやかちゃんにも一緒についてきて欲しいの」
「こうなったら止まらないパターンですね…瑠璃乃さんも呼んでみんなで行く支度をしますから少し待てますか?」
「ありがとうさやかちゃん!大好き!」
「花帆さん、誰彼構わずそういう事を言うと勘違いされますからね?」
「え、誰彼構わずじゃないよ。さやかちゃんだからあたしは大好きだよって」
「そういう所です!」
「そんなぁ!」

「とうちゃーく。ここがるりが教えてくれた蓮ノ空敷地内絶好の見晴し台」
「綴理…アンタなんでるりちゃんと…って2月のアレか」
「ここは確かに自力で辿り着くのは難しい場所ね…流石ね瑠璃乃さん」
「はいこれ。さやのところから持ってきた」
「お団子…って綴理あなたつまみ食いする癖はいつまで経っても治ってないのね」
「ボクとこずとめぐでみっつだけ。これなら多分さやも怒らない」
「全員共犯に巻き込む気で持ってきたとはお主もワルよのぉ綴理…」
「ボクワルなの」
「そろそろ本題に入りたいのだけど。どうして私達をここに呼んだの、綴理?」
「そうだね、忘れてた訳じゃないんだ。ボクたち3人でここで中秋の名月を見たかったんだ。めぐ知ってた?来年の今頃同じ事はできないんだよ」
「ふーん、つづたんにしては大分センチメンタルな理由だったなあって。ならみんなで座って見よっ!その為に全員川の字になれるくらいでっかいブルーシート持ってきたし」
「慈にしては気が効くわね。なら私の淹れてきたお茶でも飲みながら綴理の…さやかさんのお団子でも食べましょう」

「あれがデネブ、あれがアルタイル、そしてそっちにあるのがベガ。わかるかしら」
「君は指差す夏の大三角」
「めぐ、なにそれ?」
「姫芽ちゃんが『梢せんぱいが夏の大三角の星の名前を言ってたらこう言うべきです!』って力説してたから言っとくべきかなって」
「茶化さないの。ちなみにそれ、花帆も同じ事言ってたわよ」
「やっぱりあのふたり、時々波長が合う感じがあるよねえ。かほめぐ♡じぇらーとの後釜はやっぱり姫芽ちゃんかなあ」
「じゃあ…るりのとゆかいなこすずたち?」
「蓮ノ休日は…私の時より大人しいユニットになりそうね」
「来年は私達みんなバラバラの場所にいるのかなあ…」
「ボクとこずは違う大学に行くだろうし…めぐは…もういっかい3年生?」
「慈…今度の中間こそ大丈夫よね…?」
「ふたりとも私を見くびりすぎ!ちゃんと進路も決めてるから!」
「ならみんなで来年も空を見上げよう。バラバラのところにいても月はひとつだからきっと繋がっているはず」
「そうね。来年も、再来年も、これからもずっとそうしていたい。綴理だけじゃなく私もそうしたいわ。慈は?」
「私もそうするに決まってんじゃん!このニブチン!」
「めぐだってこずの事大好きなのにそうやって言葉で聞きたがるの、こずは本当に心配性だよね」
「ええ、私の悪い癖ね。なんでも言葉とか証とかそういうものに頼ってしまう」

「梢センパーイ!」
「寂しがっているだろうしそろそろ戻ろうかしらなんて言おうと思っていたら花帆だけじゃなくてみんな来てしまったわね…」
「吟子ちゃん達ももう少ししたら来るからみんなでお月見ですよ!」

「どうも用意したお団子の数が合わないと思ったら綴理先輩がつまみ食いしてたんですね…!?」
「すごいさや。なんでわかったの?」
「その…口にお団子の欠片がついてます…」
「てへっ」
「てへっで許すお話ではありません!後でちゃんとお説教ですからね!」

「へいめぐ。ルリの秘蔵のお月見スポットの感想は?」
「最高だね!けど私に黙って綴理にだけ教えてた事には嫉妬してるので今度はちゃんとふたりきりでデートに誘うこと!」

「あっ…姫芽ちゃんが穴という穴から血を噴き出した…」
「わがめぐるり道に一片の悔い…な…な…ないわけ無い!推し2人の星空デート、ゾンビになってでもきっちり観察します!」
「そういう怖い事言わないで!姫芽のだらぶち!」

「それじゃあ今度は9人でお月見しよう。今しか見れない今日の夜の月を」

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