ウィングド・スピンドル
「花帆先輩はどこ!」
「藪から棒にどうしたの吟子ちゃん。ちなみにまだ部室には来てないよぉ」
「寮の私の部屋に大きなブーケが届いてたんだけどいつもの通り花帆先輩の仕業でしょう!?」
「あー、その件かぁ。確かに花帆せんぱいの実家に頼んで発注したんだけど依頼者はアタシと小鈴ちゃんなんだよねえ」
「えっ…」
「リンドウとブッドレアとエキザカム。『誠実』『あなたを慕う』『尊敬』の花言葉を持つ吟子ちゃんの誕生花をうまくまとめてもらったブーケだよ」
「本当に…?」
「大切な友達の誕生日に嘘なんてつく訳ないじゃん」
「そうだったんだ…姫芽、あんやと」
「吟子ちゃんの貴重なデレにアタシも感謝だねぇ。小鈴ちゃんにも聞かせてあげたいからちょっとムービー撮らせて?」
「そ、それはダメでしょ…小鈴に見せる以外に姫芽何に使うかわからないし…」
「ええ〜!個人でお楽しみする以外にはしないって」
「それが一番ダメ!」
「吟子ちゃーん!お待たせー!」
「花帆先輩…?いや隠してるつもりなのかもしれないけど後ろの鉢、何も隠せてないから…」
「あたしも家に頼んで吟子ちゃんのお誕生日の贈り物用意してきたんだ!何だと思う?」
「鉢植え…盆栽とか?」
「おっ鋭いねえ!正解は〜!ニシキギです!」
「ニシキギ…最近アニメで見ましたねえその名前」
「姫芽ちゃんも鋭いね。苗字をそこから取っているからあの子の衣装も真っ赤なんだよね。原作者さんはお花の名前を人物に当てるの好きみたいだし」
「花帆せんぱいなかなか詳しいですねえ。その辺については今度時間のある時にじっくりとお話ししましょうねぇ」
「……」
「どうしたの吟子ちゃん黙っちゃって。もしかして…あたしのプレゼント、嫌だった…?」
「花帆先輩…姫芽、それに小鈴も。出会って半年も経ってないのにこんなに優しくしてくれて、本当にあんやと。私頑張るから。ふたりだけじゃなくてスクールアイドルクラブ、この蓮ノ空、いや金沢全部に恩返しできるくらいに」
「そっかそっかあ。じゃあ早速レベリングやっちゃう?花帆せんぱいとの下剋上リベンジマッチ!」
「おっ、いいねいいね!やろやろ!」
「ちょ、まだそこまでやるとは…!姫芽!花帆先輩!引っ張らないで!」
「お待たせしました徒町です!姫芽ちゃんとふたりで選んだプレゼントとは別に徒町が実家に船を出してもらってブリを丸々一尾…ごめんね…また徒町お邪魔しちゃったかな…」
「違うの小鈴。いいからふたりを止めて!」
「じゃあ今日の勝負はこのブリを使って吟子ちゃんに満足してもらう勝負!食戟だよ!瑠璃乃ちゃんとさやかちゃん呼んでくるから待ってて!」
「むむっ!魚料理と聞いては徒町も黙っていられません!吟子ちゃんの笑顔の為に精一杯やるぞー!ちぇすとー!」
「アタシもさやかせんぱい仕込みのお弁当技術でフォローするぞー!ちぇすとー!」
「3人とも!もーっ!」
追記 梢先輩達まで巻き込む事になった蓮ノ空食戟のおかげで小鈴が用意した立派なブリは綺麗さっぱりみんなの胃袋に収まりましたが翌日以降みんな食べた分を挽回する為の地獄のトレーニングが行われる事となりました
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