蓮ノ大三角VS玉笹花菜(1)
「どうしたんだい花菜。さっきからずっと神妙な顔をしてるけど」
久しぶりに会った親友はスマホの画面を見ながらずっと何かに悩んでいるように見える。少し、いや長めの逡巡の後、彼女は口を開いた
「あのね、菜月。お願いがあるの。力を貸してもらいたい」
人生の約1/3くらいはつるんでいる仲だ。今更こんな事を言うなんて水臭いじゃないか。そう思っていたが次に彼女が発した言葉で全てがひっくり返った
「私と一緒にLiveに出て欲しい。私と菜月の二人で戦いたい相手がいるから」
口に含んでいたお茶を噴き出さなかったのは最大限の理性の発揮だ
「つまり…本職の君の横でボクが歌ったり踊ったりしてくれと…?」
「そう。これはグループの他の子たちにも頼めない。私と同い年でずっと一緒にいた菜月だからできる頼み。無茶苦茶だという自覚はある。駄目…かな」
駄目だ。花菜にこの目をされるとボクは勝てない。理屈というより経験則として理解している
「…わかった。けどひとつ教えてくれないか。そこまでして君が戦いたい相手ってのは誰なんだい?」
彼女が口を開き、告げる。ボクの人生で唯一にして最大の強敵として立ちはだかるそのアイドルの名は
「『蓮ノ大三角』」
「…!?わかったよ花菜。ボクの出せる力の全てを貸そう」
「ありがとう菜月!」
欣喜雀躍の表情を浮かべるその姿は何年経っても本当に変わらない
それにしてもこんな所で蓮ノ空の名を再び聞くとは思わなかったな。確かにあの子達は本物の煌めきを放つスクールアイドルだった。そこに並び立たないといけないとなると…
「昔はふたりで歌って踊ったりしたけどブランクが長いからな…頑張らないと」
「それなら任せて!菜月向けのトレーニングメニューも組んであるし徳ちゃんさんや穂波さんとも色々調整はしてあるから!」
本当に手回しの良さは天才的だ
「それじゃあこのお茶を飲んだら最初のトレーニングに行こうか。時間は待ってくれないからね」
「うん!」
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