TYMF

「姫芽…これ、お誕生日…おめでと」
始業前、教室に来るや否や自分の席にもつかずにアタシの席にやってきた吟子ちゃんは顔を真っ赤にさせながら綺麗な包みを渡してきた。何だろうこれ。そこまで重いものではなさそうだけど…
「ありがと〜吟子ちゃん!朝からそのかわいい表情を見せてもらっただけでもうアタシ大満足だよ〜」
「…茶化すんならやっぱこれなしにしようかな…」
「う〜…ごめん、ごめんなさいってばぁ!」
アタシの親友は本当にフラグ管理の難しいヒロインだなあ…オタクたるものギャルゲーも嗜んだりはするのですが、正統派のツンデレに見えてこういう芯の強いところもあるから本当に攻略難易度が高くて…2年間できっちりグッドエンドまでいくぞアタシ!
「吟子ちゃん、中見てもいい?」
「勿論。気に入って…もらえるといいんだけど」
丁寧かつ迅速に包み紙を開ける。よく見るとすごいいい紙使ってるからビリビリ破るのがすごく勿体無い。丁寧に梱包された中に入っていたのは…
「ポーチ?」
「そう。姫芽がよく教室でやってるゲーム機と一緒に使ってる小物とかを入れる用にサイズ合わせてみたんだけど」
何という心遣い!気配りの達人!現代に降臨せし慈愛の天使!この前『それ、ちょっと気になるから触ってみても…いい?』って聴いてきたのはこれの為だったのかな…?
「これも加賀縫?」
「うん。鶴とけん玉とトロフィー、私達三人。ばぁ…お婆ちゃんに教わりながらやってみたんだけど、どうかな?」
キャラクターそのものがババーンと書いてあるやつよりそれをモチーフにした普段使いしやすいアイテムの方が嬉しいやつ!お姉ちゃん、オタクに優しいツンデレ和風少女は実在しました
「うっ…うっ…」
「え、泣くほど嫌だった…」
「そうじゃないよぉ!泣くほど嬉しいの!どこまで自己肯定感低いの吟子ちゃん!」
あまりにもおばかな親友を抱きしめる
「ちょっ…姫芽、ここ教室。みんな見てるから…!」
誰が見ていても構わない。出会って半年も経たないのにここまで素晴らしい事をしてくれるのがどれだけ嬉しい事なのか。わかってもらいたいから
「吟子ちゃん、一生大事にするね。本当にあんやと」
「…どういたしまして」
いい感じの余韻をぶち壊すかの様にガラガラピシャ!と元気よくドアが開く音がした
「おはようございます徒町です!姫芽ちゃん!お誕生日おめでとう…!って…ごめん…徒町お邪魔だったかな…」
「小鈴ちゃん待って、違うの!」
「ふーん…違うんだ…」
「吟子ちゃんも違うのぉ…!」
拝啓、お姉ちゃん。人生というゲームのフラグ管理はとても大変です。あと2年間頑張ってみんなで笑いあえるトゥルーエンドに到達しますのでそれまで色々ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします

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