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「ちょっと思い出しただけ。」きっと、そんな日々を生きていくんだろう。これからも、ずっと。

「ちょっと思い出しただけ。」きっと、そんな日々を生きていくんだろう。これからも、ずっと。

東京タワーが好きだ。

ただほんと、それだけの理由で、映画「ちょっと思い出しただけ」を観た。予告の節々に東京タワーが映るから。

" ちょっと思い出しただけ "

観終わった後に、本当にタイトル通りの感情になる映画だ。

来月、私の元カレと私の親友が、結婚する。

もっと言うと、17から22歳までの6年間の青春を捧げた私の元カレと、小学校1年の時「ともだちになってください」と手紙を渡して以降、20

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お茶の上で(その1)

お茶の上で(その1)

映画『街の上で』における再生 令和3年4月9日に公開された今泉力哉監督の映画『街の上で』は、日常あるような光景が描かれ、大きな出来事が起きるわけではないと言われる。実際、そのとおりなのだが、ではなぜこの映画がこれだけ人を惹きつけるのか。それは私たちの日常の何気ない生活の中にも気づかぬうちに大きな出来事は生まれていて、この映画はそれをすくい上げているからではないか、と思う。そのことを、この映画の白眉

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好きな小説の話(横道世之介)

好きな小説の話(横道世之介)

ただ読んだ感想をツラツラと書きます。あらすじの紹介とかはしないです。

横道世之介を読んだのは自分が大学生ぐらいの時だったと思います。
この小説はその名の通り、横道世之介という若者を主人公にした青春小説です。
自分自身、この小説の中の主人公(世之介)が、その後の人生において、憧れの存在となりました。

この本にはドラマチックで小説的な展開などは特にありません。
主人公(世之介)の大学時代が淡々とつ

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横道世之介

横道世之介

「あいつのこと知ってるってだけ得してる」

誰かにこんなふうに思われることができたらいいのにな、と思う。

出会えただけでしあわせで、可笑しくて、思い出す度に笑ってしまう。

どうしようもないくらいお人好しで、不器用な世之介に、私も昔どこがで会ったことがあるような気がしてくるから不思議だ。

「世之介さん!」といつも笑顔で駆け寄る祥子ちゃんも魅力的。

好きって気持ちに真っ直ぐなのっていいなあ。

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『きみの鳥はうたえる』の交情と疎外

『オーバー・フェンス』(16)が公開されたとき、「佐藤泰志の函館三部作」などという惹句を目にして私は憤激した。

村上春樹と同学年に生まれながら四十一才の若さで世を去った佐藤泰志という作家は、熊切和嘉の手で『海炭市叙景』(10)が、呉美保の手で『そこのみにて光輝く』(14)が映画化されたことなどを契機としてすこしずつ再評価の波が寄せはじめていた。二作のあとを継ぐようにして山下敦弘の『オーバー・フェ

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「きみの鳥はうたえる」のような夏の話

「きみの鳥はうたえる」のような夏の話

6/1、ついについに30歳になりました。
もう30歳だよやばくない!?どうする!?的な会話を何万回も乗り越えてきたので、一周して凪…という感じではいたけど、0時になる瞬間はちょっと緊張して、でも清々しくて、変な感情を味わいました。
独身30歳は肩身狭い瞬間も多いですが、のんびり心地良い状態を保ちながら過ごしたいなと思います。

20代の思い出はありすぎて振り返りきれないせっかくだし20代の振り返り

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きみの鳥はうたえる/体を重ねることよりも言葉がもつ強さ

きみの鳥はうたえる/体を重ねることよりも言葉がもつ強さ



「寝ても覚めても」とともに話題にあがっている「きみの鳥はうたえる」を観てきた。
先に言うと「寝ても覚めても」は俳優の力点で強行突破した映画だったけれど、「きみの鳥はうたえる」は3人の俳優が掛け合いながらじっくりと作り上げていく。そんな印象だった。

原作を読んでいないので正確な比較が出来ないのだけど、舞台を東京から函館に移したのは正しいと思う。この関係を今の東京で描いてしまうと単調な生活の中で

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【みんな、ちゃんと、めんどくさい。『きみの鳥はうたえる』の話】

【みんな、ちゃんと、めんどくさい。『きみの鳥はうたえる』の話】

(2018年10月8日  無人島キネマ・ブログ版 初掲)

“ダメふわ系男子”に対するコンプレックスが、僕の中でスゴい。
「ダメ男なのに(だから?)フワフワしていて、なんだか放っておけない。」そんな感じ系男子。
僕の人格“ダメ重系男子”の対極的な存在だ。ウシダを形容するワードの筆頭には「めんどくさい」がデーンと鎮座してるわけだけど、“ダメふわ系男子”は「めんどくさくなさ」の象徴であるとも言える。

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『横道世之介』  written by 吉田修一

『横道世之介』 written by 吉田修一

横道世之介。東京に上京してきた大学生。
私には彼の気持ちがよく分かる。
同じ「地方出身で東京都内の大学に進学し一人暮らしを始めた」私だからこそ、
世之介の気持ちがよく分かる。

何気ない日常の中で感じるやるせなさとか、空虚感とか、ちょっとしたことに自分でも驚くほどに動揺したりとか、1つの恋でワクワクしたりとか、「あぁやっぱり都会は違うんだなぁ」って感じる瞬間とか。
1人でいるときにふと感じる孤独さ

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