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自分とか、ないから。 読書感想と「空(くう)」を感じた瞬間。
自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学
著者:しんめいP
監修:鎌田東二
出版:サンクチュアリ出版
を読みました。
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Instagramに簡単な紹介リール載せてます。そちらも合わせてどうぞ。
1.どんな本?
自分とは何か?と探し続ける迷える子羊さん達に、突き刺さる、東洋哲学解説本。
キャラが濃すぎな7人の東洋哲学者の哲学を、しんめいPさんがぶっ飛び?!解説しています。
348ページと若干分厚めですが、軽快なテンポで進むので、読むのが楽しい!
本書の結論を簡単に、要約すると…
自分とか、ないから。全部、フィクションだし。
だから、ありのままが最強だし、もはや言葉なんていらん。ダメな奴ほど救われるから、どんどん欲を持っちゃって!
ってことが書かれてます。
自分について知りたいのに、「結論が、自分とか無いってどういうこと?」って疑問に思った、そこのあなた。
そんなあなたの世界を広げてくれる(かもしれない)本だと思います。
原案となったしんめいPさんのnote投稿は以下です↓。ご参考に。
2.感想
東洋哲学を学びたい人が最初に選ぶ本!というには、変化球すぎる気がしますが(私見)、
読んだら確実に、あなたの虚無感は姿を消します(希望)。
そんな本。
そして、東洋哲学…トウヨウテツガク…
なんか、めっちゃお堅そう〜ってイメージとは、真逆で吹き出して笑えました🤣
題材が東洋哲学で大きくて深い話に対して、
しんめいPさんの解釈や解説になると、身近で、現実的なことに落とし込まれる。
ギャップに驚きつつ、解説のおもしろさに笑えたけど、最後は妙に納得しちゃったり。
正直、全部理解はまだまだできてません。
でも、なんだか『大丈夫な気がする』って思ってます。
きっと、また、私が『現実』と思っているフィクションの世界に戻っているでしょう。
でも、現実と感じているものはフィクションであるという見方を知ったから、だから大丈夫な気がするんです。
すでに本書を読まれた方はどんな感想を抱きましたか?☺️
3. 7人の東洋哲学者について。簡単要約。
ここでは、"自分とか、ないから"に出てきた7名の東洋哲学者について簡単に紹介。
*私的な理解なので、ズレがあるかもしれません。
①ブッダ:無我=自分なんてない
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インド人。実家、激太。職業、王子。自分探しを理由に、王子→ホームレスに華麗なる転職を遂げた男。家族も肩書きも捨て、6年間本気で修行。その修行の断食の際に、いろいろあってお粥を食べた。その時に辿り着いたのが、『無我=自分とか、ないから』。
「自分」とはただの「妄想」。ほんとうは、この世界は、ぜんぶつながっている。よく観察すればわかる。
「自分」のかたらだは、食べもの、つまり「自分以外」のものからできているのだ。
自分なんか、ないというのは、
自分は毎日、いろんなものを吸収しつつ、排出しながら、生きている。ずっと変化し続けているんだから、変わらない"自分“という存在はないという意味(だと私は捉えました)。
②龍樹:空(くう)=この世はフィクション
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インド人。論破王。
ブッダの悟りが広がれば広がるほど、教えが難しくなり、弟子によって複雑化された。それを、超単純な一言でまとめた人物。
その悟りが『空(くう)=この世は全てフィクション』。
「ミッキーマウスは、存在するのか?」と聞かれたら、どう答えるだろうか?
みんなの心には「いる」。でも、実際には「いない」。
「いる」とも「いない」ともきめられない。
この絶妙なかんじ。これが「空」なのだ。
「空」を悟ったひとは、この「こめつぶ」に「宇宙」をみるのだ。
この世はフィクション。私たちが、存在していると思っているものは、"言葉"で表されているから、存在しているように感じているだけ。
だからね、「空(くう)の考え方で言うと、家族も、街も、国もフィクション。全て幻。
その幻から解き放たれた時に初めて、自然と繋がれる、世界と繋がれる、全てのものと繋がれるんだって。
エモいどころか、むずい。むずいけど、なんだか、エモかったです。
③老子と荘子:道(タオ)=ありのままが最強
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老子:中国人。見た目、草。荘子:中国人。威風堂々とした無職。
インドで「空(くう)」が生まれた同時期に、中国で生まれた哲学に「道(タオ)」がある。
「道(タオ)」も
この世界は繋がっている、すべてのものはつながっているという哲学ですが、ゴールが違う。
「空(くう)」のゴールは解脱なのに対し、「道(タオ)」のゴールは、楽しむ。
さて、「道」とはなにか。ひとことでいうと「宇宙を生み出す根源の力」というかんじだ。スケールでかい。
すべての母である「道」のまえでは、「現実」も「夢」も、おなじようなものなのだ。
「自分」とおもってるものも、「世界」とおもってるものも、どんどん変化する。
全ては夢と思ってる現実なのか、現実と思っている夢なのか…そんな世界で勝つためには、ありのままでいればいいと教えてくれる哲学。
④達磨:禅=言葉はいらねぇ
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中国人。見た目ほぼヤクザの無口な人。
ぼくら、どうやったら「空(くう)」や「道(タオ)」という「言葉をこえた」境地にたどりつけるのか?
その一つのこたえが、「禅」なのだ。
とにかく、達磨さんは、言葉を捨てることを体現した人。言葉を捨てると、言葉で型どられた世界から離される。そこで初めて、言葉を超えた「空(くう)」や「道(タオ)」にたどり着けるというのです。
⑤親鸞:他力=ダメなやつほど救われる
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日本人。仏教哲学を破壊的に進化させた人物。自称、ただのアホなハゲ。
親鸞は「浄土真宗」をつくった。浄土真宗では、どうやって「空(くう)」の境地にいくのか?
徒歩か、電車か、飛行機か?
じつは、そんなレベルじゃない。
「空(くう)」のほうが、こっちにくる。
悟らないことを認めると、
「空」のほうからこっちにやってくる。
悟ろうとすればするほど、修行すればするほど、
悟ろうとしている自分というフィクションにはまっていく。だから、できることは、ただ信じるだけ。自力でどうにかしようとしないで、他力に任せる。
⑥空海:密教=欲があってよし
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日本人。仏教の最終形態を作った男。首が太い天才。そして、バリバリの陽キャ。
密教とは、秘密仏教の略。
「自分」や「世界」というフィクションからぬけだして、「生命の秘密」と一体化しよう、というのが、密教である。
すべてがフィクションという哲学は、今まで紹介してきた全ての哲学に繋がるところ。密教はそのさらに奥の奥を見ようとするそう。
ブッダの教えは、自分なんか、ない。全ては繋がっている。そして、密教は、悟れば全てと繋がれるってことは、自分ってのは、宇宙だし、あなたもブッダも宇宙だよ。
だから、悟りたければ、悟りを開いている人をとにかく真似ちゃえばいいんじゃね?ってか、なりきればいいやん?って哲学らしいです。
密教にとって「空」は理解しておわりのものじゃない。人助けしてナンボなのだ。そしたら、「自分」がきえて、めっちゃ気持ちいい。「密教」ってこんな感じ!たぶん!
最近のビジネス界隈でよく言われるギブの精神に繋がるものを感じ、過去も未来も繋がってる!と思った瞬間でした。
4.龍樹の「空(くう)」から、私が感じたこと。
この7人の東洋哲学者の中で、一番沁みた悟りが、「空(くう)」。
ちゃんと理解できてるかわからないけど…
わたしが最近、「空(くう)」を感じた瞬間は、親子遠足での出来事。
出発前、子供達とは一旦別れ、親だけで広場で集合。
周りの保護者の方々が、グループになって話し始めるなか、ひとりポツンとしている状況に。
その瞬間…
『あ〜、これが噂の空(くう)だな〜』って。
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"同じ園に通うお母さんグループ"が"広場"で"会話をしている"ってことはフィクションなのかな。そのフィクションから弾き出され時、私は「空(くう)」を感じた。周りの人の声に隠れた、周りの木が風になびく音、鳥が遠くで遮ってる音、太陽の眩しさを急に感じる。自然と繋がってるな~って。
そう思ったら、輪に入れない自分を惨めに思う気持ちがすーっと消え、なんだか呼吸がしやすくなった気がしました。
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空も、風も、エモフィラも綺麗すぎた。
この「空(くう)」という考えを知ることは、ネガティブな感情を生み出す思い込み(心理学的には思考の歪みと言ったりします)に気づくきっかけになる。そして、行動の選択肢を広げるツールになると思います。
他の保護者さん達が会話してる輪の中に入れない。どうしよーって時、おそらく、自身の思い込み(認知の歪み)が発動しています。
例えば、息子に関わる人とは仲良くしなくちゃいけない!とか、隣にいる人と気まずくならないようにするためには、話しかけないといけない!とか。
それが、「空(くう)」という考え方を採用することで、
輪に入ってない→「あ、これって、空だな。自然と繋がれる瞬間か。」みたいに、同じ状況でも、別の視野や捉え方が生まれる。
別の捉え方が生まれると思う時点で、考え方(認知)は、すでに変化しています。つまり、こうしなきゃいけない!という思考から少し離れて、距離を取れる。
こうやって思考が変わると、心、つまり気持ちや気分は変化します。
私が保護者さん達の輪に入っていない時に、焦るでもなく、「あ〜、いい天気やな〜」って思えたように。
このように、思考や行動を変化させることでつらかった感情を変化させる治療法を、心理学では認知行動療法と言ったりします。
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東洋哲学も心理学(認知行動療法)と繋がってるって思えて嬉しかったです。
きっと、この本は、手に取った読者の未来の選択肢を大幅に広げてくれる一冊になる。少なくとも一人の読者である私の視野は確実に広がりました。
是非、気になる方は手にとっていただきたいです!