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#古本

古本装丁探索

古本装丁探索

以前、古本の魅力について語った記事で、本の装丁も購入の決め手として大きな割合を占める、という話をした。

単純に見た目がカワイイ本というのも欲しくなるわけだが、小村雪岱とか竹久夢二とか、有名な装丁家の手による本はとりわけ購買意欲を誘うし、従って古書価も高いことが多い。

ところが、近代の古本というのは残念なことに、装丁者が明記されていないケースも多分にあるのだ。現代の本なら、目次の末尾やカバー袖、

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小村雪岱を知っていますか

小村雪岱を知っていますか

(※20210316参考文献を追記)

小村雪岱、という画家をご存じだろうか。

「ご存じだろうか」なんて高慢な書き出しをしてしまったが、不肖僕にしても、おそらく古本を蒐集していなかったら知らなかったであろう画家の一人である。

小村雪岱(本名:安並泰助)は、明治20年川越の生まれ。東京美術学校(いまの藝大美術学部)日本画科を出た日本画家である。縁あって、かねてより尊敬していた泉鏡花の本『日本橋』

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若き書痴は何冊の本を買ったか

若き書痴は何冊の本を買ったか

先に答えを言ってしまうと、2020年は延べ1057冊もの本を買った。
もちろん、というのもなんだが、過去最高記録である。

いや、違うのだ。
12月28日の時点での累計は952冊で、ここまで来てしまったものの1000の大台は超えぬように努めよう、と思ってはいたのだ。

12月29日。
固い意志を持った僕は、取り置きをお願いしてあった数冊を年内に受け取っておこうと、西荻窪のS林堂書店へ足を運んだ。

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本のための環境づくり

本のための環境づくり

今週は1日しか休みが取れなかった。いや休みがいくらあったとて、古書展は場所によって未だに開催を見合わせたりしているし、博物館を行脚したりするのもちょっと憚られる現状。

実を言うと、ちょうど行きたい特別展があるので近々突撃しようと思っているのだけど、そもそも電車に乗って遠出をするのが億劫になりつつあるのは恐ろしいことである。

で、その貴重な(?)休みをいかにして消費したかというと、一念発起して本

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切迫の古本

切迫の古本

マジメに古本のコレクターをやりだして丸3年以上たったのだが、どうも古本者でない人たちからすると理解に苦しむ買い方というものがあるらしい。

一番よく言われる「本にそんな高い額だしてどうするの?」は別にいいだろう。自分の欲しいものについて、金に糸目をつけないのはどの趣味においても同じことだろうし、それが周囲の理解を得られないというのも、ままあることである。

だが、たとえば、「そんなに貴重な本なのに

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ネットで古本漁り

ネットで古本漁り

ふと、この5月中に8冊しか本を買っていない自分に気づいた。

ふだん古書市に行けば1回で軽く20冊は買うし、なじみの店ともなれば均一台だけで一気に54冊掻っ攫ったこともあるくらいだから、最早この少なさは不健康と言って差し支えないだろう。

というのもこの時世、狭い密室でオッサンが犇めき合う古書即売会の開催が認められようはずもなく、どころか、業者市まで中止の憂き目を見たものだから、古書店は仕入れと換

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不要不急の古書展

不要不急の古書展

「継続は力なり」なんてよく言われることだし、実際なにかを毎日なり毎週なり欠かさずに続けていくことは文句なしに偉大だと思う。わかってはいるのだが、僕はそれが極端に苦手である。

日記を毎日つけていた時期もあったが365日はもたなかったし、夏休みの宿題を毎日数ページやる目標なんて2日と続かない。はやい話が飽きっぽいのだろう。

もっと長いスパンでの話をしても、楽器とか武道とか、果ては語学とか勉強の分野

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東急東横 渋谷大古本市

東急東横 渋谷大古本市

東急東横が渋谷のランドマーク的存在だったのはいつ頃までのことだったのだろうか。僕は幼少期からずっと東京に暮らしているので、新宿や渋谷へ赴いて百貨店で買い物するなりレストランへ入るなり、そういう休日を過ごした記憶も少なくない。

ただし百貨店(デパート、というよりこちらの方が響きが好い)の重要性ということで言えば、往時よりは決定的に落ちていると言っていいだろう。今は百貨店どころか、自宅に居ながらにし

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どこまで高い本を買えるか

どこまで高い本を買えるか

古本のコレクターとしてはけっこう精力的に活動している方だと自負している僕だが、実のところ、1冊あたりに出す金額というのはかなり制限している。

といっても意識的に「〇〇円まで!」と絞っているわけではなくて、「さすがに本1冊にこの額は出せないよな」という理性が未だ辛うじて働いているというだけの話である。

具体的に言うと、古書展でガッサリ抱え込む本はだいたい千円まで、その中に数冊紛れ込ませる特に良い

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珍品と出会った話

珍品と出会った話

(ちょっと余裕がないので、パパっと書ける「本の話」)

いつもの神保町。

昨日金曜は「趣味の古書展」初日なので、いつものように9時半には列に加わった。
前を見やるといつものメンバーが既にいて、「おはようございます」と挨拶を交わしてゆく。

好き先輩に恵まれたものだが、10時に開場すると一転して強敵と化す。
いい本はみんな欲しいから、誰も容赦はしてくれない。

実はその弱肉強食たる戦が、案外楽しか

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この頃の古本

この頃の古本

日常ネタでいろいろ書きたいこともなくはないのだけれども、全体のバランスを考えて結局は本の話。

7月は金額的にいうと過去最大級に本を買っていた。ちょっとぼかしていうと、家賃の倍額近く……。

買っちまったものはしょうがないし、生活も逼迫しているわけではないけれど、さすがにやり過ぎたかなという気もしている。

で、先月買った本の中にこんなものがある。

夏目漱石『吾輩は猫である』の、一番最初の大きい

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読みもしない本を集めること

読みもしない本を集めること

よく勘違いされるのだけど、僕は読書家ではない。
もっというと、日常生活においてほとんど本を読まない。

というと、「はて、こいつは古本のコレクターを名乗っているのではなかったか」と訝しがる御仁もあるかもしれない。いかにも僕は戦前の日本文学を中心に収集しているコレクターであり、今年に入ってからの6か月で既に297冊(総額約27万円)もの本を買っているほどの狂いっぷりである。

でも、僕が「本を読まな

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古本コレクターの日常

古本コレクターの日常

僕の趣味は初版本の収集で、去年の1年間で814冊も買い漁るくらいには、狂ったコレクターをしているつもりだ。
特に興味があるのは近代文学。もうちょっとわかりやすく言うと、戦前に刊行された文学書をメインとして収集に励んでいる。

買う方法はいろいろあるけれども、やはり「世界一の古書店街」こと神保町は別格だ。東京でコレクターをしている以上、最低でも月に1回は足を運んでおいたほうがいい。

その理由は、「

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