とりあえずみんながんばろう
僕の趣味は初版本の収集で、去年の1年間で814冊も買い漁るくらいには、狂ったコレクターをしているつもりだ。 特に興味があるのは近代文学。もうちょっとわかりやすく言うと、戦前に刊行された文学書をメインとして収集に励んでいる。 買う方法はいろいろあるけれども、やはり「世界一の古書店街」こと神保町は別格だ。東京でコレクターをしている以上、最低でも月に1回は足を運んでおいたほうがいい。 その理由は、「古書即売会」にある。 古本即売会、あるいは短く「古書展」と呼ばれることもあるが
いつもながら最終日というのはさみしいものだ。荷物をぜんぶ担いで最後の観光に向かう足取りはおのずから重くなってしまう。 ところで、僕は本を買いあさるのが趣味で、今回の旅行でも各文学館・記念館で参考書籍を買いまくっていたから、それをリュックに詰めて帰るのは不可能である。ので、ホテルのフロントで段ボールを購入、チェックアウト前に自宅へ配送して事なきを得たのだった。 ①兼六園 で、朝から訪ったのは兼六園。 僕は金沢駅近くに宿を取ったのだが、そこから兼六園まではグーグルマップによる
旅行中の朝は早い。なにしろ朝食はバイキングだ。食べ逃したら損ではないか。人より食べる量が多いからうれしい、というのもあるけど、安ホテルでも割と地元の物が出たりして楽しめるので、朝食サービスは好きだ。 ①21世紀美術館 朝から向かうのは21世紀美術館。例によってバスは使わないのだが、途中、金沢城城壁を見ながら行けたのは良かった。近世の歴史にはまったく疎いのだが、風情はやはりおもしろい。 美術館に着くと、修学旅行だか遠足だか知らないが、制服を着た生徒たちが大量に来ていた。時
ふと思い立って、単身で金沢へ繰り出した。未踏の地である。 別段とくべつな用事があるでもなかったが、いつか行ってみたい街だったし、こういう思い付きを活かさないと「われ遂に富士に登らず老いにけり」となりかねない。 ということで、余りまくっている有給とGWを利用して2泊3日(5/1-5/3)の旅程ででかけてきた。 飛行機で移動 安かったから飛行機移動にしてみたが、僕は飛行機がめちゃくちゃ嫌いだ。乗るときは常に落ちるものと思ってかかっているため、心理的な負担は計り知れない。離陸の
この土日でお盆休みが終わる。 下等なる遊民生活を送って久しかった僕だが、意外なことに正真正銘の無職であった期間はほぼなくて、休み休みでこそあれ労働はきちんとしていた。が、なにぶん正規の仕事ではなかったので、年末年始とかお盆とかそういう長期の休みとは無縁で生きてきたのだった。 そこにきて、今年から会社勤めになってしまったので、もったいなくもお盆休みをいただけることになった。期間は10日間。短いようで長いような、いかがなもんなんだろうと思っていたが、とってみるとこれはけっこう長
4月以降、なんだか暇が取れない感覚が続いている。 せっかく正社員になったのだからとガラにもなく規則正しい生活を心がけていて、夜は10時半には寝、朝5時半に起きるという生活をずっと続けている。まあ仕事中に寝不足とか人間的に無理をしているような辛さを感じることは現状なかったから、これはやはり良い生活なのだと思う。 一方で、時間の余裕はない。定時退社して家に帰ってからも2時間ていどしか時間がないのは、僕にとってけっこう息苦しいものである。というのも、これまでの生活では帰宅後も5
職種がら、国際色豊かな労働環境であることは分かっていたけれども、実際に3週間やってみると想像をかなり超えていることが見えてきた。 僕はせいぜい英語しかわからないし、業務のこともまだよく判っていないことが多すぎるから、学生の対応を受け付けたとしても、基本的には他の人に振ることしかできない。一番多いのが「中国の先生お願いします」という注文で、あとはご指名の先生があったり、もろもろの申請の場合は僕でも少し案内できることがあったりするような感じ。 中国語、もっとマジメにやっておけば
3月の頭くらいだったか。ようよう4月からの正規採用が決まって、なんとなくほっとした心持で日々を過ごしていたところに連絡が来て、曰く「研修をするのだが、早めに参加できる人は3月最終週から来てもらえないか」とのことだった。 なにぶん遊民暮しなものだから、そのあたりの調整は自由である。あとは己の気分しだいだったけれども、逆に言うと正社員なんかやったことがないぶんの不安も大きいわけで、早めに慣れておきたいと3月から通い始めてみることにした。 で、1週間やってみてということだが、案
金曜付でバイトを辞して、火曜日からは新しい仕事場で働くことになる。それまでにやっておかなくてはいけないこと、行っておくべきところがあまりにも多くて、相変わらず寝る時間がない。 なんとなくタイミングがなく誂えできていなかった眼鏡を変えたのもそのひとつで、今使っているのは大学に入る直前に作ったものだから、軽く10年以上はかけ続けていたことになる。 視力はやや落ちたものの日常生活に支障はなく、どちらかというと眼鏡じたいの劣化、コーティングが剥げに剥げて視界の妨げになっているのはさ
母からお守りを贈られた。聞くところによると、僕は今年が方位厄なのだという。 ありがたく受け取りはしたけれども、そもそも「厄年」ってのすらよくわかっていないうえ、「方位厄」に至っては聞いたこともない。いったいに科学の子であるところの僕は、こういう神がかり的なものに一切興味がなく、信じようとする気持ちすら希薄なのがよくない。 ところで、4月から僕の生活は大きく変わることになった。簡単に言うと、「先生」になることが決まった。 まあ詳細はどうでもいいのだけど、自分が「新生活応援セ
貧乏暇なしとはまことにその通りなのだが、ここnoteに駄文をものす程度の時間すら確保できないようなやんごとない身分ではない。更新の遅滞(あるいは途絶)は、ひとえに僕が持って生まれた怠惰の成果物である。 と、過去のエントリを見返してみたところ、前回記事を書いたのは約4ヶ月前。アリス展のレビューを書いたことなんてすっかり忘れていた。てっきり半年以上は無沙汰を決め込んでいるものと思っていたから、ブックマークツールバーに「note」の文字を見かける度に、記事を書こうとしない自分が厭
みんな大好き『不思議の国のアリス』のはなし。 先々週から、森アーツセンターで「特別展アリス」が開催されている。こないだ横浜でもやってたじゃん、とか思ったけど、記録を遡ったらそれは2019年。すでに3年も前のことになってしまった。 前回のアリス展で会場限定販売された図録は非常に充実していて、いまだにちょっと調べたいことがあったりすると書架から取り出して眺めている。それに展示じたいも、かなり時間をかけて楽しんだような記述があったのだけど、当時僕が書いたレポを見ると次のように書
相も変わらず、YouTubeで音楽を聴くとなったら選択肢はほぼバーバーショップに限られている。 改めて説明をしておくと、Barbershopというのは(基本的に)男性4人で構成されたカルテットがアカペラで歌う音楽のジャンルで、個人的な印象としてはアメリカを中心に盛んな英語圏の文化である。 ここ数年は流行感冒の影響もあって世界大会やらコンサートやらが中止の憂き目を見ていたのだが、今年は2年ぶりに大規模なイベントが催された。 あまりこういうのに縁のない人生を送ってきたのだけれど
少し鮮度の落ちたネタとなったが、スピルバーグ監督作品『ウエスト・サイド・ストーリー』を公開直後に観てきた。 僕は映画に詳しいわけでも、特別ミュージカルファンというわけでもないけれども、1961年のオリジナル版が映画史に残る大傑作であることは、疑う余地がないと思っている。 ただし、人はいったいに記憶を美化するものである。思い出補正込みで考えると、世間で言われる「傑作度」は、必ずしも客観的な評価とは言い難い側面があるとは思う。冷静になると実は凡作だった、というのは往々にして起
父が死んだ。 59歳という享年は確かに早いし、僕からすれば、30年弱しか一緒にいられなかったのはとても寂しい。 父は2015年に仕事場で倒れてから半身が完全に動かせなくなり、それからはずっと隣県の施設で生活していた。当時僕は大学4年で、教育実習をしているときに一報を受けたのだった。 一命はとりとめたものの、なにぶん脳疾患だったものだから、運動障害に加えて言語障害も残った。口は上手く回らないうえ、そもそも頭で文章を作ることも難しくなっていたようだった。 もちろん自宅介護
その時、僕は自宅のパソコンに向かって作業をしていた。 すこし休憩がてら、ちらとツイッターを見やるとTLがなにやら騒がしい。「ええ……」「ショック」「マジか」等々。誰も内容に言及こそしていないが、ただならぬ事態を予感させずにはおかなかった。(言うまでもないが、私のフォローしているのは古本関係者ばかりである) そこから状況を理解するのに時間はかからなかった。 芥川賞作家の西村賢太氏が亡くなったのだ。あまりのショックに僕は己の眼を疑った。 僕が新刊を追いかけている現代作家は