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映画のしずく

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映画の感想とか、映画からインスパイアされた言葉とか。
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【旅日記】東京2024秋|5.エターナル・サンシャイン 〈Bunkamura ル・シネマ〉

【旅日記】東京2024秋|5.エターナル・サンシャイン 〈Bunkamura ル・シネマ〉

彼女たちと

道玄坂からふたたびスクランブル交差点を通って(ほんとうに多種多様な人。しつこいですが)、移転営業中のBunkamura ル・シネマ へ。映画「エターナル・サンシャイン」を観るため。

この映画が公開された20年前のある日、わたしは出張で東京に来ていた。学生時代に暮らした東京ではあったけれど、その頃はもう地元に戻っていて、東京は数年ぶりだったと思う。滞在中にぽっかり空いた自由時間に、新

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【映画感想文】ヴィム・ヴェンダース/PERFECT DAYS

【映画感想文】ヴィム・ヴェンダース/PERFECT DAYS

ひとり、動けなくなったわたしにその「理由」を問うてくる人と、感覚的な部分で分かり合えることは、この先もずっとないだろうな。
そう思ったあの日、わたしは自分の感受性の豊かさを知った。むろん、その時点でそれが"豊かさ"だとは、気づいていなかったのだけれど。

淡々と過ごしているように見えるヒラヤマの毎日は、彼にとっては全然淡々としたものではないのだろう。彼の目に映る世界がどれほど鮮やかなのか、わたしに

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【映画感想文】アキ・カウリスマキ「枯れ葉」

【映画感想文】アキ・カウリスマキ「枯れ葉」

アキ・カウリスマキ監督作品「枯れ葉」を観賞して。

感情の揺れ幅の、小さな映画だと思って観ていた。
ラストシーン、アンサの「ウィンク」までは。

アンサはフィンランド・ヘルシンキで働く独身女性。
頬の両脇にくっきりと彫られたラインに、重ねてきた時間が読み取れる。
決して豊かとはいえない家計状況(いや、生きることがやっとというくらい苦しい)、家族との別離とその原因、ラジオからは今まさに隣国で起こる戦

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【映画感想文】ウォン・カーウァイ「若き仕立屋の恋」

【映画感想文】ウォン・カーウァイ「若き仕立屋の恋」

ウォン・カーウァイ監督作
短編映画「若き仕立屋の恋」の感想。

ラジオで「恋する惑星」の話を聴いてから、どうしても観たくなった、ウォン・カーウァイ監督作品「若き仕立屋の恋」。

昨年、ロングヴァージョンが劇場公開されたときは、スケジュールや心身の状態との折り合いがつかず、観ることができませんでした。

けれど、もともとのヴァージョンは2004年にDVDで観ていて、そのときの感動は今でも忘れていない

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映画「君たちはどう生きるか」ーおそらく何度も観ることになるであろう映画との、はじめての夜

映画「君たちはどう生きるか」ーおそらく何度も観ることになるであろう映画との、はじめての夜

映画「君たちはどう生きるか」を初めてみた夜の、書き付け。

《じぶんのこと》
知恵は良心とともにありたい。悲しみやさびしさは、勇気と行動で乗り越えられる。そしてそれらが人を深く、優しくする。

だんだんと強く、たくましくなろう。本当の声に従おう。
くよくよと落ち込んでいる場合じゃないよな。
眞人の成長と夏子(ヒミ)の美しさは希望。命あることは尊い。
娘は大丈夫。信じよう。
私は娘を産んだ責任と私自

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月明かりの下で

 さっきまでおえつを堪え号泣していたのが嘘みたいに、彼女はケラケラと笑い半歩先を歩く。
「ライアン・ゴズリングのダンス、ぎこちなくて最高だったねー!」
と、たまに振り返りながら。

夜に外出するのは久しぶりとあって「なんか良さそう」とあらすじをよく確かめず映画に誘った。予想に反し決してハッピーエンドとはいえないストーリーの展開に僕はもやもやを抱えてしまったのだけれど、彼女はとても満足そうだ。

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