
アーティキュレーションは歌って覚える!
楽譜にはリズム(音価)と音の高さだけでなく、作曲者が頭の中に描いた音楽を誤解なく演奏者に伝えるため、様々な記号や文字を書き込みます。
アーティキュレーションを意識できていますか?
その中で、スラーやスタッカート、テヌートなどを「アーティキュレーション」と呼ぶことがあります。アーティキュレーションの書き方で同じメロディであっても印象が大きく変わることもあり、とても大切な情報のひとつです。
しかし、テンポをキープすることや運指を間違えないことばかりに意識を向けてしまうと、アーティキュレーションまで気が回らず、かなり適当に演奏している方も多い印象です。特に管楽器に多いのが、スラーからタンギングに復帰できずに、吹きやすいところまでスラーのまま繋げてしまうパターンです。
アンサンブルで「合っていない感じ」の理由かもしれません
この「ついやってしまう」曖昧なアーティキュレーションの表現は、アンサンブルの質の低下を招いてしまいます。例えば、演劇で同じセリフを複数で喋るシーンがあったとして、その中のひとりだけ読点「、」の位置が違えば、同じセリフなのに意味合いが変わってしまったり、タイミングがずれてしまいます。
吹奏楽の合奏やアンサンブルで「合わせる」という言葉がよく使われますが、ほとんどの場合「合わせよう」と意識しているのが「テンポ」「リズム」「ピッチ」「出だしのタイミング」といったものばかりで、今回のテーマであるアーティキュレーションなど、実は他にも大切な要素がたくさんあって、そうしたイメージや表現の統一ができないと本当の意味で「合わせる」ことはできないのです。
間違って覚えるとなかなか直せない
なのでまずは楽譜に書かれたアーティキュレーション通りの演奏を心がけるわけですが、一番最初、楽譜を手に入れた最初の譜読みでテキトーな読み方、吹き方をするとクセになってしまいなかなか直らないのです。初見で演奏する時、やはりリズム、テンポ、音の高低しか意識を向けられないことが多いのですが、できればその中にせめてスラーの付け方は一緒に理解しながら演奏したいものです。
よく吹奏楽コンクール直前にパートレッスンなどに伺うと、もう何ヶ月も間違ったアーティキュレーションで吹いてしまっている子がかなりの確率でいるわけです。その子たちにアーティキュレーションの付け方が楽譜と違っている点を伝えて、本人たちも頭では理解しているのだけれど、習慣的、感覚的、フィジカル的に曲を毎日のように吹き続けてしまった結果、どんな手段を使ってレッスンしても直せない、ということが多々あります。
声に出して歌う練習
そうなる前に正しく楽譜を読むことが大切で、その際ぜひやってもらいたいのが「声に出してアーティキュレーションを表現する練習」です。
音の高さに関しては正しく歌えるならベストですが、リズムとアーティキュレーションだけでもこの問題を解決するには十分です。「ティヤーティヤティー」など、タンギングをする音は「ティ(トゥやトォなど口の中を大きくする母音はトランペットの奏法的に相性が悪いので避けたほうがいいです)」、スラーでつながる音は「ヤー(ラはトランペットのタンギングと相性が悪いのであまり積極的に使わないほうがいいです)」がオススメで、試しに今練習している曲や教則本など何でもいいので声で歌ってみてください。楽譜通り歌えていれば楽器でも同じようにして歌えるはずですが、そうでない場合は楽器で演奏する際、間違って演奏していないか慎重に確認してみましょう。
また、声に出して歌う際に少しでも突っかかってしまうようであれば、きっと楽器で演奏した時にも同じようなことが起こる可能性が高いです。
この正しいアーティキュレーションで歌う練習、ぜひ積極的に実践してみてください。休憩時間でも家でもできる効率良い練習ですし、楽器を吹いて声で歌っての繰り返しをしていると練習時間吹きっぱなしの非効率な練習から脱却でき、体力温存にも繋がります。
パターンを作って練習してみる
また、音階練習などシンプルな練習時に、あらゆるパターンのアーティキュレーションで同じ楽譜を次々に演奏する、というのも効果的な練習の一つです。
アーティキュレーションの付け方が思いつかなかったり、楽譜を見ながら吹きたい方はあらかじめスラーやスタッカート、テヌートなどをいろいろなパターンで書いた楽譜を用意しましょう。書き出すとわかりますが、パターンは無限にあります。これを歌っては吹いてを繰り返して即座に違うパターンが演奏できるようになったらかなり譜読み力が身に付いているはずです。
ということでアーティキュレーションのお話でした!
荻原明(おぎわらあきら)
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