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諏訪原小説コレクション

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#ショートショート

【小説】野菜の一生

 やあ! ぼくはナス! ヨシイエおじさんの畑で育った大きくて新鮮なナスさ!
 ぼくは人間においしく食べられるためにここまで育ってきたんだ。今日の朝収穫されて、袋に詰められて、直売所に並べられて。そしてぼくは今さっき人間に見初められて、ほかの野菜たちと一緒に車で運ばれている。
 ああ、ぼくはどんな料理にされるんだろう。ナスをおいしく食べるならやっぱりシンプルな焼きナスかなあ。お肉と一緒に炒め物にされ

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【小説】苦悩の人

 目が覚めると、目の前には女が一人。
「おはようございます。あなたは選ばれたのです」
 俺はてんで意味が分からず、「選ばれた?」と間の抜けた声で繰り返す。
「そうでございます。あなたは選ばれたのです」
「選ばれたとは何にですか。そもそもここはどこなのですか。俺は確かに昨日、自分の部屋で自分のベットの上で瞼を閉じたはずなのですが」
「あなたは選ばれたのです。あなたはただ、それを受けいれるだけでよいの

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【小説】想い出がいっぱい

「それじゃあ、俺たちの新たな門出に乾杯!」 
 益田はそう言うと、グラスを持った右手を高々と掲げた。かちゃんかちゃんとガラスのぶつかる音が狭い部室内に響く。これまで四年間を共に過ごしてきたこの仲間たちとも今日を境に会うことが無くなってしまうのかと思うとどこか寂しく感じてしまう。そんな思いを振り切るようにぼくはコップの中のビールを一息に飲み干した。目の前では鍋がグツグツと煮えたぎっている。
「それに

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【小説】太陽の塔

 わたしがまだいたいけな美少女小学生だったころ、近所に「太陽の塔」があった。
 といっても、大阪の万博記念公園に鎮座する、なんだか様子のおかしなおっちゃんが作ったほうのそれではない。けれども、わたしたちの町の「太陽の塔」も、本家のそれと同じか、いや突拍子のなさならそれ以上か、まあとにかく非常に奇天烈な物体だった。
 わたしの実家からすぐのところにある小さな児童公園のちょうど真ん中にそれはあった。高

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【小説】ブリ村ゴキ右衛門一代記

~前回までのあらすじ~
 名門一族の末裔であったブリ村ゴキ右衛門は悪徳貴族のゴキ山一族の策謀によって故郷の村を追われてしまう。さらに最愛の妹ゴキ美の命を目の前で奪われたゴキ右衛門は復讐の鬼となりゴキ山一族を根絶やしにすることを決意する。
 修行のために訪れた街で酒屋の娘ゴキ子と恋に落ちたゴキ右衛門はゴキ子の酒屋がゴキ山一族の配下によって経営の危機に追い込まれていることを知る。ゴキ山一族の幹部の一人

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【小説】ありがとう

「ありがとう」
 ねぐらの入り口からケンさんはひょっこりと顔を出してそう言った。いつも快活でニコニコとした笑顔を絶やさない彼なのだが、なんだか今日はやけに難しそうな顔をしていた。
「いやいや、何のことですかケンさん。昨日の空き缶のことなら気にしなくていいって言ったじゃないですか」
「ありがとうな、ウッチー」
 ぼくの話を遮るようにケンさんは妙に低い声でもう一度そう言うと、ふいといなくなった。なんと

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【小説】溺れるアロサウルス藁をも掴む

 アロアロアロアロ。アロ。アロアロンアロアロア、アロロアロアロ。アーロアロアロ。アロサウルス、アロアローロアロロアロ。アロロ、アロアロロ。アロンア。
 アロアロアロ。アロロ、アロロンアロアロ、アローアロー。アロアロアロ、アロンアロンアロン。アローアーロ。アロンアロンアロンアロアロン。
 アロロ、アロン。アロアーロアロアロロアロ、アロアロアロアーロ。
「アロロロ、アロアロアロロ、アロアロ。トリケラト

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【小説】胃もたれ侍、異世界へ行く

「三郎!またか!」
「はあ、その通りです。誠にかたじけない」
 弱々しくうなだれる三郎を見て、鼎蔵は大きなため息をついた。
「まったく、お前は剣の腕は立つのにどうしてそんなに腹が弱いのだ!われわれの悲願成就のために、お前の力は不可欠なのだぞ!」
「そうは言われても、儂にもどうにもならんのです」
「医者にはかかったのか」
「もう何度も。長崎で修行した何某とかいう医者にも見てもらいましたがね。どうも病

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【小説】メシマズヒロイン地獄変

(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)

 昨日で付き合って一年になるわたしの彼は、今まで一度もわたしを抱いてくれませんでした。理由を聞いても、彼は決まって「亜衣のことは好きだよ。でも今日はちょっと疲れているんだ」と言って悲しそうな眼をしてそそくさと自分の部屋へ入っていきます。
 なのでわたしはその謎を解くため、彼の部屋へと

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【小説】魔法少女マジカルフレア!第八十九話「史上最強の敵、ドジョウ伯爵!」

(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)

 あたしの名前は炎田萌果、どこにでもいるフツーの中学三年生! だったんだけど、ある日突然妖精のみーたんが現れて「魔法少女になって地球の平和を守ってほしい」ってお願いしてきたの! おじいちゃんの遺した借金の金利を減らすことを条件に魔法少女になったあたしは、今日も地球の平和を守るため、こ

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【小説】神の一手

 時はデス令和五〇〇年。将棋界は未曾有の危機に瀕していた。AIの発達は凄まじく、もはや人間の思考は対局に介在することなく、人間の皮を被ったAI同士の戦いの如き様相すら見せていた。
 そんな最中、かつての名人果糖九段は若手の有望株半尻七段との順位戦での対局中、誰も見たことの無い斬新すぎる新手を繰り出した。AIですら予想することの出来なかったその一手は対局相手である半尻七段の闘気を文字通り根こそぎ奪っ

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【小説】カレーにズッキーニを入れた男

 休日の朝。家の近所を散歩していると、見知らぬ男に呼び止められた。
「お前、カレーにズッキーニだけは絶対に入れるなよ」
「はい?」
「だから、カレーにズッキーニは入れるな。さもなければ、お前をここで殺さねばならない」
 そう言うと、男は肩にかけたカバンから、布に包まれたなにやら細長いものを取り出した。あっけにとられる俺を尻目に、男は布をするするとほどいた。青黒い刃が朝日に照らされギラリと光る。

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【小説】アヴェンジャー・ババア~怒りの中国自動車道~

 中田洋子(81)はその日、四年ぶりに我が家を訪問するというひ孫をもてなすため、郊外のショッピングモールに買い物へ行く予定を立てていた。洋子は運転免許を数年前に返納して以来、郊外への移動は決まって路線バスを利用している。その日も洋子は十時三十八分に近所のバスターミナルを出発するために家を出たのであった。時刻は十時二十二分。
 洋子の家の近所にあるバスターミナル――鳥鳥駅前バスターミナルは、ゴールデ

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【小説】スペース節分

 皆さん、準備できましたか?
 ……、いい返事ですね。今年もこうやって四年一組の仲間たちで季節の行事を楽しめることが、先生とっても嬉しいです。きっとこれも皆さんが毎日お勉強を頑張っていることとあのお方が海のように深く深く深く我々を愛してくださっているからでしょう。
 あっごめんなさい、先生ったらついついまたお話が長くなっちゃったわ。
 じゃあ気を取り直して、元気にスペース豆まきを始めましょうか!

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