諏訪原天祐
やあ! ぼくはナス! ヨシイエおじさんの畑で育った大きくて新鮮なナスさ! ぼくは人間においしく食べられるためにここまで育ってきたんだ。今日の朝収穫されて、袋に詰められて、直売所に並べられて。そしてぼくは今さっき人間に見初められて、ほかの野菜たちと一緒に車で運ばれている。 ああ、ぼくはどんな料理にされるんだろう。ナスをおいしく食べるならやっぱりシンプルな焼きナスかなあ。お肉と一緒に炒め物にされるのもいいなあ。いや、ほかの野菜たちと一緒にカレーになるのも悪くないな。煮びたし
こんにちは、諏訪原天祐です。数か月前に「note積極的に更新していきたいです!」と宣言したくせになんだかんだと理由をつけて約2か月も間を開けてしまいました。反省してま~す。 さて、ものすごく私事ですがついこの間までコロナで寝込んでいました。諏訪原はこう見えてもそこそこ体が丈夫なようで、コロナ禍になってからも一度もコロナにかかることなく毎日ヘラヘラと過ごしていました。 しかしそんな楽しい日常も崩れ去るときは一瞬。そこそこひどい目に合ったので、そのことを備忘録がてら記録してい
こんにちは、諏訪原天祐です。セルフライナーノーツの3回目、今回は5月に発行した新刊『理沙がいた季節』編です。 過去2作はいずれも基本的にはシュールやナンセンスといった要素を基盤としたコメディで、そこにときどきダークな感じもあるかもくらいの作風でしたが、今回の『理沙がいた季節』は前作までとは打って変わって、基本的にダークな雰囲気が作品集全体にあり、ジャンルで言うとホラーに分類される作品が多数を占めています。 今までの諏訪原のイメージとはまた違ったものになっているので、それも
目が覚めると、目の前には女が一人。 「おはようございます。あなたは選ばれたのです」 俺はてんで意味が分からず、「選ばれた?」と間の抜けた声で繰り返す。 「そうでございます。あなたは選ばれたのです」 「選ばれたとは何にですか。そもそもここはどこなのですか。俺は確かに昨日、自分の部屋で自分のベットの上で瞼を閉じたはずなのですが」 「あなたは選ばれたのです。あなたはただ、それを受けいれるだけでよいのです」 女は頑強に繰り返す。その頑強さは岩のようだった。 「受けいれてください
「それじゃあ、俺たちの新たな門出に乾杯!」 益田はそう言うと、グラスを持った右手を高々と掲げた。かちゃんかちゃんとガラスのぶつかる音が狭い部室内に響く。これまで四年間を共に過ごしてきたこの仲間たちとも今日を境に会うことが無くなってしまうのかと思うとどこか寂しく感じてしまう。そんな思いを振り切るようにぼくはコップの中のビールを一息に飲み干した。目の前では鍋がグツグツと煮えたぎっている。 「それにしても、まさか恵美香が卒業まで文芸部にいるとは思わなかったなあ。入部した時、絶対
こんにちは、諏訪原天祐です。今日はセルフライナーノーツ『遺伝子のゴール』編です。 『遺伝子のゴール』は昨年10月に発行した通算3冊目、文庫版の短編集としては2冊目の同人誌となります。「愛」をテーマにし、いろいろな形の「愛」が登場するショートショートを中心に収録しています。 1.愛され続けて、五十年 もしも、諏訪原がベストアルバムを作るならこの作品は誰が何と言おうとも収録します。人間椅子のベストアルバムにいつも「ダイナマイト」が入っているかの如く。 単純な完成度で言えば、
皆さんこんにちは。諏訪原天祐です。皆さんはゴールデンウィークを満喫されたのでしょうか? 諏訪原は家で寝てました。 とはいえ、何もしないというのもどこかばつが悪いので、気まぐれに今まで頒布した同人誌のセルフライナーノーツでもしたためてみようかと思いました。興味ないよという方が大半だとは思いますが、オタクというのは自分の創作を語りたい欲求と日々戦う生き物なので、生暖かく見守っていただけたらと思います。 今回は、昨年1月に発行した『ポプリーpotpourri-』のセルフラ
わたしがまだいたいけな美少女小学生だったころ、近所に「太陽の塔」があった。 といっても、大阪の万博記念公園に鎮座する、なんだか様子のおかしなおっちゃんが作ったほうのそれではない。けれども、わたしたちの町の「太陽の塔」も、本家のそれと同じか、いや突拍子のなさならそれ以上か、まあとにかく非常に奇天烈な物体だった。 わたしの実家からすぐのところにある小さな児童公園のちょうど真ん中にそれはあった。高さにして五メートルほどのそれは、形は何の変哲もない円柱、そう、ちょうどどこにでも
~前回までのあらすじ~ 名門一族の末裔であったブリ村ゴキ右衛門は悪徳貴族のゴキ山一族の策謀によって故郷の村を追われてしまう。さらに最愛の妹ゴキ美の命を目の前で奪われたゴキ右衛門は復讐の鬼となりゴキ山一族を根絶やしにすることを決意する。 修行のために訪れた街で酒屋の娘ゴキ子と恋に落ちたゴキ右衛門はゴキ子の酒屋がゴキ山一族の配下によって経営の危機に追い込まれていることを知る。ゴキ山一族の幹部の一人であるゴキ夫との壮絶な果し合いの末、辛くも勝利を収めたゴキ右衛門はゴキ夫の口から
「ありがとう」 ねぐらの入り口からケンさんはひょっこりと顔を出してそう言った。いつも快活でニコニコとした笑顔を絶やさない彼なのだが、なんだか今日はやけに難しそうな顔をしていた。 「いやいや、何のことですかケンさん。昨日の空き缶のことなら気にしなくていいって言ったじゃないですか」 「ありがとうな、ウッチー」 ぼくの話を遮るようにケンさんは妙に低い声でもう一度そう言うと、ふいといなくなった。なんとなく違和感を覚えたけれど、そんなことをのんびりと考える時間はぼくにはなかった。そ
アロアロアロアロ。アロ。アロアロンアロアロア、アロロアロアロ。アーロアロアロ。アロサウルス、アロアローロアロロアロ。アロロ、アロアロロ。アロンア。 アロアロアロ。アロロ、アロロンアロアロ、アローアロー。アロアロアロ、アロンアロンアロン。アローアーロ。アロンアロンアロンアロアロン。 アロロ、アロン。アロアーロアロアロロアロ、アロアロアロアーロ。 「アロロロ、アロアロアロロ、アロアロ。トリケラトプス、アロロロロロロロ」 アロロアロロ。アロアロアロアロ、アロロ。トリケラトプ
「三郎!またか!」 「はあ、その通りです。誠にかたじけない」 弱々しくうなだれる三郎を見て、鼎蔵は大きなため息をついた。 「まったく、お前は剣の腕は立つのにどうしてそんなに腹が弱いのだ!われわれの悲願成就のために、お前の力は不可欠なのだぞ!」 「そうは言われても、儂にもどうにもならんのです」 「医者にはかかったのか」 「もう何度も。長崎で修行した何某とかいう医者にも見てもらいましたがね。どうも病というより、そういう性分なようで……」 三郎はそう言って、懐から粉薬を出し口に
(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です) 昨日で付き合って一年になるわたしの彼は、今まで一度もわたしを抱いてくれませんでした。理由を聞いても、彼は決まって「亜衣のことは好きだよ。でも今日はちょっと疲れているんだ」と言って悲しそうな眼をしてそそくさと自分の部屋へ入っていきます。 なのでわたしはその謎を解くため、彼の部屋へと突入することにしました。 「ひろくん! 入ります!」 普段わたしは必ずノック
(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です) あたしの名前は炎田萌果、どこにでもいるフツーの中学三年生! だったんだけど、ある日突然妖精のみーたんが現れて「魔法少女になって地球の平和を守ってほしい」ってお願いしてきたの! おじいちゃんの遺した借金の金利を減らすことを条件に魔法少女になったあたしは、今日も地球の平和を守るため、このマジカル自動小銃(SKSカービン)片手に悪の組織ワルワル団と戦っています!
時はデス令和五〇〇年。将棋界は未曾有の危機に瀕していた。AIの発達は凄まじく、もはや人間の思考は対局に介在することなく、人間の皮を被ったAI同士の戦いの如き様相すら見せていた。 そんな最中、かつての名人果糖九段は若手の有望株半尻七段との順位戦での対局中、誰も見たことの無い斬新すぎる新手を繰り出した。AIですら予想することの出来なかったその一手は対局相手である半尻七段の闘気を文字通り根こそぎ奪っていった。 半尻七段、ショック死。 この対局をたまたま見ていた将棋連盟会長細
みなさん、こんにちは。諏訪原天祐こと罪人です。というわけで、 文学の秋だーーーー!!!!! はい、そういうことです。いよいよ暦の上では秋、誰がなんと言おうと、30度越えの日がまだまだ続こうとも秋なんです。一年で一番同人イベントがカービィのボスラッシュが如く立て続けに開催される季節です。諏訪原も9月10日の文学フリマ大阪11を皮切りに、11月まで各地のイベントに出没します。しかも、諏訪原が文学フリマに出店するのは4年ぶり!!それも以前の名義だったり大学のサークルだったり