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    日本イエナプラン教育協会 研究部員による共同作成記事をお届けします。

最近の記事

読書記録・2010/11/06「考えるヒント」を読んで

2010年11月6日 小林秀雄著、「考えるヒント」を読んで 本居宣長曰く、「姿は似せがたく、意は似せやすし。お早う、という言葉に対し、お早うと応ずる他に道はない。言葉にはすべて歴史の重みがかかっている。ある特殊な歴史生活が流した汗の目方がかかっている」 福沢諭吉曰く、「私立、学者は学問にて私に事を行うべき。」 この二人の偉大なる師の言葉に、本書「考えるヒント」全体を貫いて作者小林が伝えたかったことが凝縮されている。 作者は、文章には「形」あるいは「姿」がある、と上記の言葉を解

    • 2011/03/04「アウェー脳を磨け!」を読んで

      2011年3月4日 茂木健一郎著、「アウェー脳を磨け!」を読んで 最終的には、すべてが“ホーム”になっている状態をめざす。これが本書の極意だと思う。 まず、“アウェー”、“ホーム”とは一体何のことを指しているのか。サッカーの試合でよく聞かれる言葉だが“アウェー”は国外での普段の環境とは違った慣れない対戦、“ホーム”は日本でのいつも慣れている場所で自由自在に動ける対戦といった意味だ。 本書ではこの表現をもじっている。“アウェー”の脳を磨くというのは、今まで自分が持っていたのとは

      • 読書記録・2011/02/23「フリーズする脳」を読んで

        2011年2月23日 築山節著、「フリーズする脳」を読んで 本書に書かれていた、ボケの予備軍である「フリーズする脳」は実際に自分の身にまさしく起こっていることであると気づかされた。現代の私たちの生活はあまりにも便利になりすぎており、その便利さに依存し、自分の脳を使わないでいることが多い。脳は使わないとどんどん衰えていくものであるといい、自分の生活を振り返って考えてみると、便利さに頼って脳を怠けさせているということが明らかで、著者の忠告に該当する。 怖さを感じると共に、日々の生

        • 読書記録・2010/10/04「構造主義」を読んで

          2010年10月4日 北沢方邦著、「構造主義」を読んで 時代は今、支配する者と支配される者との関係で成り立っている。これを打ち破るためには構造主義的思考を人々の間に回帰させる必要がある。 我々の住む社会、とくに日本社会は徹底した管理社会として運営されていると思う。操作する者として権力エリートが存在し、操作されるものとして一般大衆が存在する。著者の言葉を引用すると、「操作するもの」は操作対象の統計的な<行動>の観察によってその行動パターンを認識し、どのような刺激と誘因によって操

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          読書記録・2010/09/29「異文化の中の日本人-日本人は世界のかけ橋になれるか-」

          2010年9月29日 渡辺文夫著、「異文化の中の日本人-日本人は世界のかけ橋になれるか-」 異文化を体験することは大変面白い。今までに出会ったことのない世界には、驚きと発見が詰まっている。またその一方で異文化を体験したときに生ずるショックは結構大きいので、とても体力のいる作業でもある。 本書では、作者が経験した東南アジアや欧米での体験、その他アジアに派遣歴のある人の聞き取り調査から得られた体験がまとめてあり共感できる部分が多々ある。 筆者は、異なる文化で育った人たちと出あうと

          読書記録・2010/09/29「異文化の中の日本人-日本人は世界のかけ橋になれるか-」

          読書記録・2010/09/20「座右のゲーテ 壁に突き当たったときに開く本」を読んで

          2010年9月20日 齋藤孝著、「座右のゲーテ 壁に突き当たったときに開く本」を読んで この本の目次をひらくと、本の題の通りに座右の銘がちりばめられている。 ゲーテの言葉をかみ砕き、齋藤孝流の考えを付け加えながら解説してくれるこの本は、生活の教科書のようだ。自分を向上させるためには、日々どのようなことに心がけながら過ごしていけばいいのかを学ぶことが出来た。 そもそも、ゲーテとはものすごい人物である。ベストセラー作家であり、詩人でもあり、古代からの芸術にも造詣が深かった。また脚

          読書記録・2010/09/20「座右のゲーテ 壁に突き当たったときに開く本」を読んで

          読書記録・2010/09/06「この国のかたち 二」を読んで

          2010年9月6日 司馬遼太郎著、「この国のかたち 二」を読んで これを読むと、日本がどのようにして成り立ってきたのか、どのような歴史を積み上げてきたのかがわかる。著書は江戸期頃から昭和にかけての様子が描かれており、今現在の日本の事情の原型が垣間見られる。私自身の物の見方や感じ方が、まさに日本の歴史の土台の上に立っているものというのがよくわかる。また、著書のような日本の歴史について書かれた本を読むことで、自分自身のものの考え方のくせとその理由が明らかになる。他の国、他の地域も

          読書記録・2010/09/06「この国のかたち 二」を読んで

          読書記録・2010/08/16「日本の米」を読んで

          2010年8月16日 富山和子著、「日本の米」を読んで 歴史の力は強大である。これが本著を読んで最も深く心に刻まれた感想である。自分と歴史とは決して切り離して考えることはできない。自分自身を知るには、そして日本を知るには、これまで積み重ねられてきた歴史をひもといていくことで実現される。今ある私というのは、これまで培われてきた歴史という文脈の中で活かされており、確実に自分もそれを継承しているのである。そしてそれが、「米」だったのである。 日本人は、生きていくために「米」という栄

          読書記録・2010/08/16「日本の米」を読んで

          読書記録・2010/08/29「人間の集団について-ベトナムから考える-」を読んで

          2010年8月29日 司馬遼太郎著「人間の集団について-ベトナムから考える-」を読んで 著書の舞台はベトナムであるが、読みながら同じ東南アジアであるフィリピンを重ね合わせずにはいられなかった。 世界には、各地に違う民族がいて、違う人間の集団がある。そして、その民族を構成する人間の能力は、それが属している社会の質に影響すると著者はいう。これは、それぞれが違う文化、違うものの見方、違う価値観という、それぞれの土台に立ち、その社会で必要な能力やよしとされるものを身につけようとするこ

          読書記録・2010/08/29「人間の集団について-ベトナムから考える-」を読んで

          読書記録・2010/08/10「公共哲学とはなにか」を読んで

          2010年8月10日 山脇直司著、「公共哲学とはなにか」を読んで 公共哲学とは、「活私開公」という、個人が異質の他者とのコミュニケーションのなかで活かされ、そのことにより公共性が開花されるという理念を基礎に、「政府の公」、「民の公共」、「私的領域」相関関係にある三元論です。本著では、文化的歴史的多様性の中で国家の枠組みを超えた人類の課題と取り組む公共哲学を目指します。 今日本に多く見られるのは、自己を犠牲にして公に尽くすといった「滅私奉公」的思想、そしてその逆に、自分一人の世

          読書記録・2010/08/10「公共哲学とはなにか」を読んで

          読書記録・2010/08/03「パーマカルチャー-農的暮らしの永久デザイン-」を読んで

          2010年8月3日 ビル・モリソン著、「パーマカルチャー-農的暮らしの永久デザイン-」を読んで アムナイ川流域集落、そして私たちの暮らすミンドロオフィスに、どのようにしてパーマカルチャーをデザインしていくかというのが、今私たちが取り組んでいるテーマである。 今回再びパーマカルチャーを学習し直し、改めて多くの発見やすぐに実践したい例との出会いがたくさんあった。 パーマカルチャーの核心はデザインである。デザインとは物と物のあいだの関連のことであり、各構成要素を適切な関係に置いた護

          読書記録・2010/08/03「パーマカルチャー-農的暮らしの永久デザイン-」を読んで

          読書記録・2010/07/26「脱学校の社会」を読んで

          2010年7月26日 イヴァン・イリッチ著「脱学校の社会」を読んで 著者の主張はこれまでの私の考え方に一石を投じるものであった。 私の考えとは、学校は社会を作る基盤であり、その学校教育を改善していくことによって、民主主義を実現し、社会全体を住みよいものにかえていく、というものである。 著者は、社会が制度化されていること、物の増産と消費だけがすべての人間の生き甲斐のようになってしまっていること、またそれによって自分たちの首を絞めていることに疑問を投げかけている。またさらに、学校

          読書記録・2010/07/26「脱学校の社会」を読んで

          読書記録・2010/07/19「ジャガイモのきた道-文明・飢饉・戦争」を読んで

          2010年7月19日 山本紀夫著、「ジャガイモのきた道-文明・飢饉・戦争」を読んで マンニャン族が今後繁栄していくためには、様々な文化をうまく選択し、受け入れるしかないと再確認させられる1冊だった。 食糧の採集から生産への生活体系の変化について考古学者サンダーズは、食糧の採集から生産への変化は、定住の発達、人口の増加、余剰時間の増加をもたらすのである、という。 この記述から、狩猟採取、焼き畑農業で転々と居住場所を移動させながら暮らすマンニャン族は、どうしても人口を増やしていく

          読書記録・2010/07/19「ジャガイモのきた道-文明・飢饉・戦争」を読んで

          読書記録・2010/07/11「傷は絶対消毒するな」を読んで

          2010年7月11日 夏井睦著、「傷は絶対消毒するな」を読んで 今回の本で常識だと思っていたことが覆された。世の中には嘘がまかり通っている。安全だ、本当だと信じていたものが、実は人間に害を及ぼすものであったりする。すべてのものを簡単に信じてはいけない。巻き込まれないためには、判断するための目を養うこと、科学の目を養うことが大切だ。 常識とされていることは、真実であるかどうかは関係なく、皆が信じているということだけが問題なのだという。この、その時代の人々が皆、正しいと信じていた

          読書記録・2010/07/11「傷は絶対消毒するな」を読んで

          読書記録・2010/07/05「日本人辺境論」を読んで

          内田樹著、「日本人辺境論」を読んで 2010年7月5日 私が今希求していることは、いい社会とはどんなものなのかということである。日本をどんなふうにいい社会にしていきたいのか、目標を見いだすためには、まず日本を知る必要がある。文化や歴史的背景、日本社会の仕組みなどがそうだ。 今回の著書からは、いい社会のあり方を探求するための日本人の傾向や性格といったところの補強となる知識を得ることができた。  著者は日本人は“辺境人”であると主張する。他国があっての自国であり、周りとの比較によ

          読書記録・2010/07/05「日本人辺境論」を読んで

          読書記録・2010/06/28「人間を幸福にしない日本というシステム」を読んで

          カレル・ヴァン・ウォルフレン著、 「人間を幸福にしない日本というシステム」を読んで 2010年6月28日 常に私の考えの中には“いい社会を作っていきたい”というのが念頭にある。 しかし、いい社会とはなんなのか非常に曖昧で、一人一人がどうしていきたいか考え行動すること、という結論までしか出せていなかった。 この本は、そんな私の考えに、何がいい社会の形なのかヒントを与えてくれた。 日本の民主主義は完全に偽りであり、制度によって人の身動きは封じ込められている。企業と行政機関が固く結

          読書記録・2010/06/28「人間を幸福にしない日本というシステム」を読んで