読書記録・2010/06/28「人間を幸福にしない日本というシステム」を読んで

カレル・ヴァン・ウォルフレン著、
「人間を幸福にしない日本というシステム」を読んで
2010年6月28日
常に私の考えの中には“いい社会を作っていきたい”というのが念頭にある。
しかし、いい社会とはなんなのか非常に曖昧で、一人一人がどうしていきたいか考え行動すること、という結論までしか出せていなかった。
この本は、そんな私の考えに、何がいい社会の形なのかヒントを与えてくれた。
日本の民主主義は完全に偽りであり、制度によって人の身動きは封じ込められている。企業と行政機関が固く結びつき、日本の産業を成長させるためだけに政策を展開してきたのである。日本の民主主義は経済組織の利害に従わされてきたのだ、と著者は指摘する。
制度によって日本人を統制し、際限のない産業拡大に人々を駆り立てるやり方は、個人の幸福を著しく損ない、充実した人生を送りにくくしてきたのである。
これを打開するためには、私たち一人一人が“政治的な主体である市民”になり行動することが必要不可欠だ。仕事により疲弊させられ政治について考える気力を奪われている上に、江戸時代から伝統的に政策はお上にまかせておけという意識が形作られてきた日本人である。仕方がないという言葉を発するのみで、市民になりきれていない。身の回りの世界がどう組織されているかに自分の生活がかかっていると自分に言い聞かせ、それを何とかしようとする態度を身につけなければならない。そして、制度や政策すべてに説明責任や正しい情報を求めることで、企業や行政機関を野放しにせず、私たちが求める政治により近づけることができるのである。
民主主義達成のためのこのような道しるべは、私たち日本人に意識改革が必要であることを明確にしたが、同時に、教育の重要性も示していると思う。教育を受けていなければ、正しい情報をつかめるはずはなく、容易に操作されてしまうのは明らかである。教育を受けていたとしても、日本の社会に染まるよう教育されていた場合も然りだ。マンニャン族に当てはめて考えてみれば、選挙に利用されることはあまりにも露骨だが、鉱山開発その他の問題に対しても、正しい情報を得る力と抵抗する力をつけることによって解決できること、そして教育の普及が何よりも大切であることが改めて明確なった。
今回改めて確認した、いい社会を作っていくために必要な民主主義である。そしてそれを実現するための一つの方法も明確になった。今後も、いい社会の実現のためには何が必要なのか、そしてそれに付随する教育方法はどんなものか探っていきたい。

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