質問135:ボールに集中はできてきた。「その次に」やるべきことは?
回答
▶テニスは初心者ほど「涼しい顔」をしている
文面から拝察すると、ボールへの集中は高いレベルでできていると思います。
足がつったり、呼吸が苦しくなったりするというのは、それだけ動けている証拠。
テニスはレベルが低いほど、ラリーが続かないから走らない、だから疲れないという傾向があるユニークなスポーツです。
初心者ほど、試合が終わっても「涼しい顔」をしています。
プロは疲労困憊で、「動けない」ほどです。
なので●●さんは、運動不足の体調を差し引いても、よりアスリートに近い状態にいると思います。
▶「勝って兜の緒を締めよ」
いずれにしても、勝てるようになっているというのは、客観レベルで進化している目安(格下の相手とばかり試合をして勝ち続けている、というなら話は別ですけれども)。
次の試合では、「勝ちを引きずらないように」注意して、平常心、自然体で臨まれますように。
いわゆる「勝って兜の緒を締めよ」。
使い古された言い回しですが、言い換えれば、使い古されるに値する金言。
勝ちを引きずると、「あれ、前の試合では良かったのに……」と苦しむ思考にとらわれやすくなります。
▶ボールに集中することを「意識しない」
ボールに集中できている段階から次に進むステージは、「ボールに集中することを意識しない状態」を体験することです。
「ボールに集中しろ」と言いながら、「ボールに集中することを意識するな」というのは、おかしな話に聞こえるでしょうか?
禅問答のようですが、ご説明します。
▶何かを身につける必要は「ない」
多くのテニスプレーヤーが、「ラケットを早く引く」「体の前で打つ」「しっかり振り抜く」など、いろんなことに意識を分散させてしまっていますが、●●さんは今、ボールだけに注意を向けられている「一心」を経験しています。
一心不乱の「一心」です。
「心が何かひとつの対象に集中していて、乱れていない」という状態です。
これはプロセスとして順調に上達されている証拠ですから、そのまま継続をお願いします。
これをさらに研ぎ澄ませると、「無心」になります。
「無心状態」では、「何かを身につける必要はない」と分かります。
なぜなら「無心状態」ではあらゆる能力が、ご自身の内側から引き出されるからです。
何かを意識してプレーしているうちは、意識できる範囲内でのパフォーマンスに限定されますが、無心状態では、意識できない過去のあらゆる経験や潜在的な能力を総動員できるようになります。
▶無心は誰もが「経験済み」
「無心状態」というのは、実は誰もが経験済みです。
それは何かというと、子どものころの遊びです。
時間感覚が喪失して「無我夢中」になっていたあのとき、私たちは無心でした。
言い換えると、「ゾーン」に入っていたのです。
▶すぐ身につけられた
雑念がほとんど湧かず、自分自身の存在感覚すらなくなって、対象に没頭している状態。
このとき、頭では考えていないのに、大人になった今と比べると稚拙な知識しかなかったけれど、のめり込んだらいろんなことを「すぐに身につけられた」感覚があったと思います。
誰しも天才(もともと能力は持っている)。
誰もがスーハーサイヤ人です。
ジュニア選手が短期間のうちに上手くなる理由もここにあります。
こちらで述べているとおり、彼ら、彼女たちは、誤解を恐れずに言えば思考能力が未熟なためゾーンに入りやすい状態(意識しない状態)でたくさんテニスを経験できたため、内側から大量の能力を引き出すことに成功し、急速に上達したのです。
とはいえ思考能力が高い人は、ゾーンに入れないわけではありません。
「識」のコントロールしだいです。
▶「外側」に求めず「内側」から引き出す
というわけで前置きが長くなりましたが、ご質問に対する回答は次のとおり。
1.「どうしていいかわからない」ときには、ボールに集中してください。
そうすれば、無意識の領域からの閃きが得られます(どうすればいいかと、プレー中には間違っても、あれこれ考えてしまいませんように)。
2.「次にやるべきこと」、それは「一心」から「無心」へ、です。
新しい何かを外側の世界に求める必要はありません。
今のレベル以上により研ぎ澄ませて自分の内側から能力を引き出すのです。
なおここで言う「外側」か「内側」は、こちらで述べている「外向的」か「内向的」かという話と混同されませんように。
むしろ「外向的」になると、「内側」の潜在能力が引き出されるベクトルです。
▶大人が「ジュニア選手」のように上手くなるには?
そのためには、テニスの練習にもまして(人によっては抵抗を覚えるかもしれませんが…)、坐禅のような集中力トレーニングが効果的です。
これは、理論・理屈っぽい大脳新皮質の働きを沈静化して、本能的な(子ども的な、感覚的な)大脳辺縁系や脳幹を活性化するため、先述したようなジュニア選手が上達の2軸を達成する成長が、大人になってからテニスを始めたレイトビギナーでも見込めます。
無心状態に入ると「意識できない過去のあらゆる経験を総動員できる」と述べましたけれども、坐禅でもアルファ波状態に入ると、意識できなかった過去のさまざまな記憶にアクセスできるというのと似ているかもしれません。
▶表現の違いはあれど「要は集中」
「ゾーン」「フロー」「ピークパフォーマンス」「集中」「アルファ波」「マインドフルネス」「インサイト」など、いろんな表現がありますが、概ね同じことを言っています。
集中のための手段であったり、集中状態に入った結果であったりを表しています。
ただ、それぞれのアプローチが、医学であったり、心理であったり、禅であったり、洋の東西の違いであったりしているだけです。
グーグルやインテルといったビッグカンパニーが、マインドフルネスを企業研修に取り入れて熱狂的に支持されたという話はご存知かもしれません。
▶集中トレは誰であっても「利用可能」
2500年継承されてきた集中力のトレーニングは、現代科学の最先端テクノロジーを駆使した学問的な研究も進み、誰であっても利用可能。
何も「ゾーン」や「フロー」は、トップアスリートだけの特権ではありません。
「マインドフルネス」や「インサイト」は、経済的に余裕のある一流ビジネスパーソンだけのものではないですし、「坐禅」は、僧侶だけに有効なのでもありません。
いつでも、どこでも、誰でも利用できます。
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