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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2025年1月の記事一覧

『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』(アルバート・E・カーン編・吉田秀和,郷司敬吾訳)

『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』(アルバート・E・カーン編・吉田秀和,郷司敬吾訳)

礼拝説教の中で、牧師が紹介した。本書ではないと思うが、パブロ・カザルスの信仰についてだった。この牧師もまた、様々な本を話題に上らせてくれる。私は、そのどれもを読みたくなる。自分では決して求めなかったような本を教えてくれると、私はそこに手を伸ばしてしまうことがよくあるのだ。
 
パブロ・カザルスの信仰については、話には聞いていた。だが、その内実を考えたことがなかったので、その礼拝説教は私の心に刺さっ

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「風、薫る」

「風、薫る」

2026年度前期 連続テレビ小説「風、薫る」に関心をもたれた方へのお知らせ。
 
先ほど主演俳優の一人の発表がありましたが、物語のモデルは大関和(ちか)と鈴木雅(まさ)の二人です。史実を辿るわけではない物語構成が宣言されていますが、恐らくキリスト教会が舞台となります。植村正久と矢島楫子も登場するはずです。キリスト教書店関係の皆さまは、すでに特集記事や書籍へと動き始めているとは思いますが、クリスチャ

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『阪神・淡路大震災から私たちは何を学んだか』(阪本真由美・慶應義塾大学出版会)

『阪神・淡路大震災から私たちは何を学んだか』(阪本真由美・慶應義塾大学出版会)

阪神淡路大震災から30年を経るときに出版された。被災者の悲しみや苦労は、当時には同情や寄り添う気持ちを大いに受けたが、次第に薄れてゆく。他の地域でも震災と呼ばれるものや、豪雨などによる災害も相次ぐ。だが震災の地獄絵は、人の心にずっと残る。被害こそなかったが、私もあの揺れを京都で体験し、体はいまなお覚えている。
 
本書はその地震の被災者の姿を辿るというようなものではない。地震のメカニズムを説こうと

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『傷つきのこころ学 学びのきほん』(宮地尚子・NHK出版)

『傷つきのこころ学 学びのきほん』(宮地尚子・NHK出版)

Eテレの「100分de名著」は、2025年1月に、安克昌さんの『心の傷を癒すということ』を紹介した。もちろん、そのテキストも早速購入した。その本自体は、「増補版」が出たときにすぐに読んでいる。阪神淡路大震災で駆け回った精神科医で、PTSDとかトラウマとかいう言葉が、世に知られるようになったきっかけとなった働きをした人である。
 
同じ題でその姿がNHKのドラマにもなり、それを編集して映画化もされた

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『論理的思考とは何か』(渡邉雅子・岩波新書2036)

『論理的思考とは何か』(渡邉雅子・岩波新書2036)

関心はあったが、発売すぐには手を出さず、評判を待っていた。どうやら評判がよいようだ。いろいろあって迷ったが、ついに購入。なんと面白いのだろう。
 
小中学生に、作文を書かせる指導もしている。推薦入試などで必要なのだ。だが、そもそも文章を書くという経験がないに等しい子どもたちに、筋道の通る文章を綴れ、というのは、バットを握ったことのない人に、さあ打席に入って打て、と言うようなものだ。とりあえず書かせ

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『これからの日本の説教 説教者加藤常昭をめぐって』(説教塾ブックレット・キリスト新聞社)

『これからの日本の説教 説教者加藤常昭をめぐって』(説教塾ブックレット・キリスト新聞社)

説教塾のブックレットの中では、厚いものである。240頁ほどある。「説教塾ブックレット」としては第9巻である。主宰の加藤常昭先生が齢80を数え、「Xデー」なるものも話題になってきた中、「加藤常昭とは何か」ということを問う機会が、このように設けられたのではないか、とも思われる。実際が違ったらお叱りを戴きたい。
 
キリスト教会において、礼拝説教というものに、これほど光を当てて、重視した人は、これまでい

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安克昌『心の傷を癒すということ』

安克昌『心の傷を癒すということ』

NHKのEテレ「100分de名著」は、2025年1月に、ようやく『心の傷を癒すということ』を取り上げる。
 
阪神淡路大震災から30年。全く知らない人もたくさんいるし、知っていても忘れてしまっている人が多いかもしれない。
 
このときの、安克昌さんや中井久夫さんの働きと訴えにより、その後の地震や災害において、「心の傷」をどうするか、という「心のケア」が図られるようになった意義は大きい。
 
自ら被

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