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Tale_Laboratory
2023年12月31日 10:12
明日はいつも明日ではなく、特別な明日だ。一年最後の日。明日からは新しい年になる。そんな新年の最初の朝を特別な場所で迎えたいという人間は大勢いる。特に最初の朝日、初日の出を拝みたいという人間はとりわけ多い。その中でも一番いい場所で初日の出を見ようと、この最後の日に一年で一番気合が入っているかもしれないやつらが集まっていた。各々がとてもではないが、穏やかな気持ちで新しい年を迎えようという姿で
2023年12月30日 09:15
もうすぐ年が明ける。多くの人々は今年を振り返ったり、来年を思ったりして静かに過ごしている時期だが、中には今が一年で一番熱くなっている者たちもいた。年が明ければ、人々は動き出す。新しい年の願いをそれぞれの胸に抱いて。向かう先は神々がいる神社。そう、神々にとって一年のうちで一番信仰を集めることができる時と言って過言ではない。そして、それはこの世界の神々に限らない。異世界との交流が当たり
2023年12月29日 08:29
映画館の大きなスクリーンにエンドロールが流れる。黒い背景に白い文字がゆったりを画面の下から上へと流れていく。客席に座っている人たちはまだ誰も席を立とうとしない。ただじっくりと白い流れを見つめている。何を想いながらそれを見ているのだろうか。当然誰も言葉を出す者はいない。ここまでの物語を思い出しているのだろうか。それともこの物語の後のことを考えているのだろうか。すべての文字が流れ終わり、今
2023年12月28日 08:53
市場は見渡す限りの人。まるで人が地面そのものかのように、至る所で人が行き交っている。あまりの人の多さにその移動速度は極めてゆっくりだったが、人々の顔はどこか急いでいるように見えた。毎年この時期に市場が混むのはもはや風物詩だが、今年はいつもと事情が違った。毎年律儀に年が明けるのを特別なこととして迎えるのは人間くらいだ。他の種族はいちいちそんなことはしない。なぜなら時間の感覚が違うからだ。人
2023年12月27日 09:30
おはようございます。今年も私の出番が回ってきことを嬉しく思います。相変わらずこの季節はいつも同じ空ですね。空は一面の灰色。厚い雲が覆っているため太陽なる物は私は見たことがありません。まあ、だからこそ私の出番があるとも言えるのですが。この街はほぼ全ての機能をロボットたちが運用、保守しています。私は冬の間街の機能保全を任される、薪ストーブ型ロボットです。その名の通り、薪による炎が私の動力
2023年12月26日 09:28
クリスマスが終わると一気に新年へと心は向かう。今年一年を振り返り、良いことも嫌なことも全て今年に置いていくために。・・・とそれが普通の人たちの話。でも私は違う。クリスマスが終わっても、私の戦いは終わらない。いや、ここが本番かもしれない。12月25日と、26日は私にとって一番忙しい日だ。サンタの仕事は子供たちへプレゼントを届けること。ただし、ただ届ければいいというわけではない。今年も朝か
2023年12月25日 06:27
今年もこの時がやってきた。12月25日。この日は世界にとって悪夢と言っていい一日だ。普段どんなにいがみ合っている相手同士でも、この日ばかりは共に手を取り合う。ある意味では、一年の内で一番平和な日とも言えるかもしれない。もちろん皮肉だ。誰もが力を合わせるのは、共通の敵がいるからだ。その敵とは、私たちと同じ人の形をしていながら、人の力を遥かに超えた何かを持っている。やつの目的は資源だ。
2023年12月24日 08:10
クリスマスイブの夜。空に浮かぶは月と星。流れていくのは雪とソリ。そのサンタクロースは2頭のトナカイにソリを引かせ、一人夜の空を飛んでいる。今夜、空を飛んでいるのは彼一人である。しかし、それはサンタクロースが一人という意味ではない。各地にサンタはいる。そうでないと一晩で全ての子供たちにプレゼントを配ることができないからだ。だが、サンタがプレゼントを配るという目的は時代で変わらないが、手段
2023年12月23日 08:14
おひさしぶりです。いや、あなたにとっては初めましてですね。私は時の管理人。過去から現在、そして未来に至るまでの時間の全てを管理している者です。そして同時に研究者でもあります。今回あなたに接触したのは、その一環であり、既に決まっていることなのです。さていきなりですが、あなたにこれを与えます。これはあるブログのログインパスワードです。あなたは、過去一つのブログを見てきたはずです。そしてそこ
2023年12月22日 07:58
男は探し続けていた。自分に足りない物を。男は全てを持っている、と周りの全ての人間は思っていた。金、名声、権力、女、この世界に彼が味わっていないものは無いとさえ言われていた。それでも彼は感じていた。自分には足らないものがあると。それは例えるなら10000ピースのパズルの最後の1ピースが無いような状態だった。1ピースだけ無いものだから、かえってそこだけが目立ってしまい、そこばかりが気になっ
2023年12月21日 08:50
冬と言えば。何が思い浮かぶだろうか。食べ物、風景、いろいろあるだろうが、やはりここは温泉だろう。ここは私が長年の夢を追い求めて作り上げた温泉施設。そんじょそこらのものとはわけが違う。何と言っても売りは、7つの性質の違う温泉があることだ。それだけなら、探せば同じような所はいくらでもあるだろう。だがそうではない。私の7つの温泉は全て、異世界と繋がっているのだ。異世界移動が一般的になっ
2023年12月20日 09:17
窓から外を眺める。目の前に広がるのは背の高い建物たち。マンションやビル群の間に辛うじてずっと向こうの山が薄っすらと見える。そして自分の目線も地面からはずっと高い。高層マンション42階、そこが私の住処だ。高い所に住むのは、成功者かバカのどちらかと相場が決まっている、と昔は言っていたらしい。今の時代、高い所、正確にはこんな高層建築が立ち並ぶような街に住むのはバカだとはっきり言えるだろう。
2023年12月19日 07:46
「よし、行くぞ」気付かれないように小声で、しかし意志ははっきりと。結局付いてくる仲間は8人だけだった。確かに不確かな情報だ。何もせず、指示に従っていたほうが結局は幸せになる可能性だって十分に高いのだ。しかし、彼はどうしても、あの偶然手に入れた情報をガセと捨てることはできなかった。彼も薄々と気付いていた。このままでは幸せになることはできない。ここから逃げ出さないといけない、と。仲間と共に
2023年12月18日 07:21
企画会議のプレゼン。ここほど緊張することはない。どれだけ念に念を入れ準備してきたとしても、アイデアが通るとは限らない。その原因は様々だ。プレゼンの準備不足、企画に対する掘り下げが甘い、というのならまだ納得できる。だが、時には判断を下す上役のその日の気分とか好みで、通ったり通らなかったりするから気が落ち着くことなどない。「ふぅ・・・」精一杯はやったはずだ。ここまで来たら後は天命を待つのみだ。