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空想お散歩紀行 もう一つのクリスマス

今年もこの時がやってきた。
12月25日。
この日は世界にとって悪夢と言っていい一日だ。
普段どんなにいがみ合っている相手同士でも、この日ばかりは共に手を取り合う。
ある意味では、一年の内で一番平和な日とも言えるかもしれない。
もちろん皮肉だ。
誰もが力を合わせるのは、共通の敵がいるからだ。
その敵とは、私たちと同じ人の形をしていながら、人の力を遥かに超えた何かを持っている。
やつの目的は資源だ。鉱石や木材、液体、この世界にある様々な物を毎年獲りに来る。
それらの資源は私たちの生活を支える上でも重要な物だ。だから当然やつとは衝突することになる。
しかしやつはこちらの常識の外にいる存在だ。
赤い衣に身を包み、2頭の巨大な角と携えた赤い鼻の牡鹿に引かせたソリで空を自由自在に駆けまわる。
そのスピードと機動性は、私たちのどんな武器でも捉えることが難しい。
なぜやつが私たちの資材を獲りに来るのか、いまだに謎である。何せ、やつとは今まで意思疎通が成立したことがないからだ。
一方的に来て、一方的に奪い、阻止しようとすれば一方的に攻撃される。
全てが謎の存在。
だが、やつに関する古文書が一冊だけ私たちの世界にはある。
そこにはこう書かれている。
やつは、この世界の者ではない。別の世界から来ている。
そしてその別世界では、やつはこんな悪魔のような存在ではなく、逆に慕われているらしい。何でも毎年12月24日の夜に世界中の子どもたちにオモチャを配っているのだとか。そして、来年子供たちに配るオモチャを作るために、その材料集めのために私たちの世界に来ている、と古文書には書かれている。
何でも、やつが獲っていく資源は全て、別世界には無い物ばかりらしい。
その古文書はいつ誰によって書かれたのかは一切分かっていない。
だが、例えそれが本当だとして、どこかの世界の子供たちのためだとしても、そんなことは知ったことではない。
こっちの世界にも子供たちはいるのだ。
やつが獲っていく資源があれば、もっと豊かな暮らしができる子供たちが大勢いるのだ。
だから私はやつを許すことなどできはしない。
必ず今年こそ、やつを倒してみせる。
同じ想いを抱いた者が毎年何人も戦いから帰ってこなかった。
それでもやつに屈するわけにはいかないのだ。

聞こえてきた。
やつが現れる前に必ず聞こえてくるベルの音だ。今年もまたやってきた。
真っ白な雪原で自分の存在を隠そうともしないあの真っ赤な服の悪魔が、今年もやってきた。
この一年に一回の戦いの名前は、別世界と同じらしい。やつの世界ではさぞかし平和な祭りとしての名前なのだろう。
だが、こちらは血なまぐさい戦の名だ。
さあ、始めようか、今年のクリスマスを。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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