空想お散歩紀行 サンタの流儀
クリスマスイブの夜。空に浮かぶは月と星。
流れていくのは雪とソリ。
そのサンタクロースは2頭のトナカイにソリを引かせ、一人夜の空を飛んでいる。
今夜、空を飛んでいるのは彼一人である。
しかし、それはサンタクロースが一人という意味ではない。
各地にサンタはいる。そうでないと一晩で全ての子供たちにプレゼントを配ることができないからだ。
だが、サンタがプレゼントを配るという目的は時代で変わらないが、手段は時代で変わっていく。
昔は人の手で行っていたものが、装置や機械に取って代わられるというのは当たり前に行われてきたこと。
そして現代、遥か遠い星の海の向こうの人々とも交流できるようになった時代。
物質転送装置と呼ばれる技術が地球に持ち込まれて様々なことが変わった。
物流の世界に革命的な変化が起こり、それはサンタ業界とて例外ではなかった。
サンタは自分の家にいながら、子供たちの家にプレゼントを送り届けることが可能になった。
サンタクロースもリモートワークの時代である。
子供たちからすれば、朝目が覚めたら枕元にプレゼントがあるのは変わりないので、誰もサンタの仕事スタイルの変化に文句を言うことは無かった。
だが、それでも今も昔のやり方で、クリスマスイブの夜にソリで空を飛び、直接プレゼントを届ける昔気質のサンタがただ一人残っていた。
彼はプレゼントを送り届けるのではなく、贈り届けるのだという、ただ個人の気持ちという儚い理由だけで今年もトナカイと共に空を行く。
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