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空想お散歩紀行 多種族年末

市場は見渡す限りの人。まるで人が地面そのものかのように、至る所で人が行き交っている。あまりの人の多さにその移動速度は極めてゆっくりだったが、人々の顔はどこか急いでいるように見えた。
毎年この時期に市場が混むのはもはや風物詩だが、今年はいつもと事情が違った。
毎年律儀に年が明けるのを特別なこととして迎えるのは人間くらいだ。
他の種族はいちいちそんなことはしない。
なぜなら時間の感覚が違うからだ。
人間族より長命な種族にとっては、いちいち一年が過ぎる度に何かをすることなんてない。
エルフ族や魔族にとっては10年に一度程度、
スギやクスノキなんかの樹木族に至っては100年に一度、年明けを祝うくらいだ。
だが今回は違う。今年はそんな違う種族たちの年末年始の行事が重なってしまったのだ。
だから国中はちょっとしたパニック状態。
帰省で各種交通機関は破裂寸前で、いろいろな店や市場は買い出し客で溢れている。
しかし、こんなに盛り上がる年末年始はおそらくもうないだろうと、皆どこか楽しそうに過ごしていた。

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