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Tale_Laboratory
2021年7月31日 11:13
『・・市外の廃屋が全焼。中から焼死体が二人見つかり、警察は身元と火事の原因の調査を・・・』テレビから流れるニュースの一つ。特に全国に流れるでもない、あくまでローカルな一つの出来事にすぎないそれを見ながら、ニヤニヤと笑う一人の女がいた。「どうだい?また私はやってしまったよ」両手を広げ鼻高々に語るその女の言葉を聞いているのは、少し離れた所で椅子に座っているもう一人の女しかいない。おそらくたった一
2021年7月30日 10:49
地下深くにその女はいた。氷の魔術を得意とし、決して誰とも交わることはない。たった独り、地の中で怪しげな魔法を作っている。「・・・って噂されてますよ」「マジで?」一匹の黒猫が自分の主に外での話を告げる。その話を受けた当の主人は、上下ラフな格好でとてもではないが魔女としての威厳などどこにもない。「だからいつも言ってるんです。たまには外に出ましょうと」「え~。今暑い時期じゃん。外に出たら
2021年7月29日 10:38
都会の喧騒から離れ、一人自然の中にいる時が一番自分というものを感じ取ることができる。普段周りにたくさんの人がいて、常に比較の応酬をしているからか、独りになれる時間と場所が僕にとっては何よりも貴重に感じる。今日は休日を利用して前から来たかった山へと来ていた。やっとこさ人が通れるだけの道を慎重に進んで行くと、突然人工物が目に入った。それは石造りの階段だった。「こんなところに・・・神社?」よ
2021年7月28日 10:31
「今、どのあたり?」手に持ったランプの灯りで地図を見る。地図に落ちる顔の影は全部で3つ。「さっきここ通って来たから・・・」「じゃあ、今はここらへんね」「やっと半分を過ぎたくらいかあ」3人の顔には、やっと半分まで来れたという安堵と、まだ半分かという疲れが同時に浮かんでいた。「ここまで来るだけで大分消耗してるなあ」一人がランプの残り燃料を確認する。ここは太陽の光が届かない地下。暗く冷
2021年7月27日 14:54
その惑星は、外から見るとそれは美しく青色に輝いていた。だが、外側がきれいだとしてもその内側はどうなのか、それは別問題だ。その惑星は地表の9割以上が海で占められている。少ない陸地をめぐって太古から争いが続いており、今現在、陸で暮らしている人々はその戦いで勝ち残った選ばれし者たちである。そしてその他の負けた多くの人々はどうしたかというと、海に出ざるをえなかった。その人々は海で取れる特別な植物や
2021年7月26日 11:05
最後に思ったのは、無念、それだった。そこで俺の意識は途切れ、永遠の闇に堕ちた、はずだった。だが、「初めまして!騎士リベイア。300年ぶりの外の空気はいかが?」周りを見渡す。分かるのは、夜、雨、そしてここが墓場だということ。俺は裸で土の上に座っている。そして背中側にある墓石に刻まれているのは、俺の名前。そう、俺は死んだのだ。あの時に。俺の前に立って声を掛けてくる女は一体誰だ?黒い服、黒
2021年7月25日 14:56
吾輩は犬である。名前はコロ。だが、実体は何を隠そう神なのである。事のいきさつはこうだ。吾輩は、こことは違う世界で戦いを繰り広げていた。元々は我らの仲間だったある神が、とある理由から闇の力へとその身を堕としてしまった。その邪神となってしまった者を追って、そして戦いは始まった。両者ともに一歩も譲らず、満身創痍になったお互いの間に生じた一瞬の隙をついて、やつは逃げ出した。そして、どうやらこ
2021年7月24日 11:02
昼間の炎天下から一転、夜の闇に包まれた街。しかし、その熱はもしかすると昼間よりなお熱く人々をたぎらせているのかもしれない。そんなとある街の一角のとある夜の店。クラブ。夜にだけ輝く蝶とそれに引き寄せられる者たちが集う場所。世間にクラブは数あれど、その店はさらに普通とは違ったものだった。そのクラブは夏の間だけしか開店しない、知る人ぞ知る店であった。ワンシーズンのみの店にも関わらず、その店に
2021年7月23日 15:03
清潔感溢れる空間。白い壁に天井。床にはゴミ一つ塵一つ落ちていない。それは当然、ここは病院なのだから。病気の不安を抱えた患者さんが少しでも安心できるように設計された建物。全てが回復と癒しに特化したこの場所で、「ちょっ!待てーーーッ!!」けたたましい叫び声が入院病棟の廊下に響き渡る。しかし部屋で寝ている患者。廊下を歩く患者。それからお見舞い客。誰一人として、その声に反応していない。驚い
2021年7月22日 11:35
「では、よろしくお願いします」記者生活10年目にして、おそらくこれが今後の生涯でも一番の山場になりそうに私は感じていた。「ああ、よろしく」何せ今、私の目の前にいるのは、最悪最凶と謳われている魔導士、ノーブル・アロガンテなのだから。今や、世界中からお尋ね者として手配されているこの男にひょんなことからコンタクトが取れて取材を申し込んでみたところ、あっさりと承諾が取れてしまった。最初は大スクー
2021年7月21日 10:56
あるところに一人の人間がおりました。その人間の隣にはいつも火が赤々と燃えていました。だからいつも体が熱くてたまりません。一体いつからその火があるのか、本人曰く、気が付いたらここにあった。だからこれは自分の物なのだろうと、そう考えていました。しかしあまりに熱いので、その人間は常に氷が手放せません。体の熱いところに氷を当てている時だけは、熱さから解放されるからです。しかし、氷はいつもすぐに
2021年7月20日 11:57
「我が生涯一生の不覚ッ!かくなる上はッッ!!」「ああもう!やめやめやめッ!!」・・・・・・・・・「落ち着いた?」「かたじけない」自分の一生というのはどういうものになるのだろうか。どんな風に生きて、どんな人と出会って、どんな風に死ぬのか。中学生という年齢になったら一度は考えるものだろう。と、思っていたら、私の人生はあっけなく終わった。私、片桐風音(かたぎりかざね)は14才という若さで
2021年7月19日 10:37
私は世界を股にかける冒険家。私は世界の謎を明かすことが一番の使命だと感じているが、同時に世界の素晴らしさを伝えることも大切だと思っている。だから、私が今まで訪れた様々な場所を、これから旅に出たいと思っている人たちにおススメのスポットとして紹介していこうと思う。ちょうど暑くなってきた季節である。これから行くとすれば涼しい場所に赴きたいものだ。そこでおススメなのが、ザフォニール海北東に位置する、
2021年7月18日 15:22
夏。気温が上昇し、人々の熱気も上昇し、恋の季節なんて呼ばれる始末。しかし、「はっきり言って、関係無いよね~」一人愚痴をこぼす者がいた。旅行代理店勤続135年。エルフのリンナはまだ客のいない店内で一人だらけていた。「な~にが恋の季節よ。こちとら冷房効き過ぎの室内で一日中座ってるってのに」ひざ掛けの位置をそっと直す。これがないと業務どころではない。「・・・まずいな。このまま華の200才代を