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空想お散歩紀行 地下深くから笑みをたたえて

地下深くにその女はいた。
氷の魔術を得意とし、決して誰とも交わることはない。
たった独り、地の中で怪しげな魔法を作っている。
「・・・って噂されてますよ」
「マジで?」
一匹の黒猫が自分の主に外での話を告げる。
その話を受けた当の主人は、上下ラフな格好でとてもではないが魔女としての威厳などどこにもない。
「だからいつも言ってるんです。たまには外に出ましょうと」
「え~。今暑い時期じゃん。外に出たら溶けちゃうよ」
「そう言って、寒くなったらなったで外に出るつもりないでしょ」
使い魔の猫に言い負かされ何も言えない主人。
「だいたい、この間も久しぶりに外に出たと思ったら氷の結界で周辺を凍らせちゃうし」
「だって暑かったんだもん」
「だってじゃないです。そういうことすると魔女の評判が悪くなるっておばあ様もいつも言ってるでしょ」
「魔女の評判なんて、元々いいもんじゃないよ」
ああ言えばこう言い返してくる主人に使い魔の黒猫はただただため息をついた。
「それよりも、ほらいっしょに水晶通信見ようよ。今遠くの国でおっきなイベントやってるから」
「ひきこもりのくせに、スポーツは好きなんですよね」
「やるのはごめんだけどね。観るだけなら」
やれやれと首を横に振る使い魔。仕方ないと主人の横に座って壁に取り付けられた大型水晶に目を向ける。
「よーし、いけーー!!」
満面の笑顔で画面に夢中になっている。
ひきこもり魔女の生活は今日も緩やかに流れていくようだ。

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