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空想お散歩紀行 神々の戦いin一般家庭

吾輩は犬である。名前はコロ。
だが、実体は何を隠そう神なのである。
事のいきさつはこうだ。
吾輩は、こことは違う世界で戦いを繰り広げていた。
元々は我らの仲間だったある神が、とある理由から闇の力へとその身を堕としてしまった。
その邪神となってしまった者を追って、そして戦いは始まった。
両者ともに一歩も譲らず、満身創痍になったお互いの間に生じた一瞬の隙をついて、やつは逃げ出した。
そして、どうやらこの世界に逃げたらしいことを突き止めた吾輩は、後を追うことにした。
しかし、神である吾輩は、本来の姿でこの世界に顕現することはできない。
なので、この世界の生命の体を借りる必要があったのだ。
本当だったら、肉体的にも精神的にも優秀な個体の体を借りるはずだったのだが、ちょっとした手違いで・・・
子犬の体に入ってしまったのである。
しかもいわゆる野良犬だったらしく、雨風を凌ぐ寝床も無ければ、食べるものもままならないという非常に困った状況から始まってしまったのだ。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
「コロ~。ご飯だよ~」
この家に住む少女、ミクリ殿に拾われたのだ。
「はい、お座り。お手。よーし食べていいよ」
ミクリ殿は吾輩を拾ってくれた恩人であり、今は吾輩の主人である。
主人の設けたルールには従う。そこには神とか人間とかは関係ない。
食事もまあ旨いので問題はない。
しかし一つだけ、どうしても看過できないことがあった。それは・・・
「はい。シャミもご飯だよ~」
ミクリ殿が吾輩の次に食事を差し出した、そこにいるのは、一匹の猫。
しかしこの猫、ただの猫ではない。
こいつこそ、吾輩が追っている邪神だった。
どうやらこやつも、何かしらのトラブルで野良の子猫に入ってしまい、そこをミクリ殿に拾われたらしい。
ちなみに吾輩の方があとからこの家に来たが、お互い目があった瞬間に理解した。
互いに今すぐにでも決着を付けたいところではあるが、お互い小動物の身。
しかも、この家で喧嘩はご法度である。ミクリ殿にきつく言われている。それを破ることはできない。それはあやつも同じだ。
というわけで、この世界の普通の一般家庭で、善神と邪神の戦いが膠着状態に陥っている。果たしてこの戦いがどうなっていくのか、神である吾輩でも未来がまったく読めないでいた。
とりあえず今は食事としよう。
・・・・・美味い。

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