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空想お散歩紀行 この夏おススメスポット

私は世界を股にかける冒険家。私は世界の謎を明かすことが一番の使命だと感じているが、同時に世界の素晴らしさを伝えることも大切だと思っている。
だから、私が今まで訪れた様々な場所を、これから旅に出たいと思っている人たちにおススメのスポットとして紹介していこうと思う。
ちょうど暑くなってきた季節である。これから行くとすれば涼しい場所に赴きたいものだ。
そこでおススメなのが、ザフォニール海北東に位置する、リュランゼ海域、通称船の墓場。文字通り、昔はこの海域で船がよく遭難し、そのまま朽ち果てることが多かった。実際行ってみるとそこかしこに船の残骸が今でも残っている。
今でも遭難の危険は十分ある。だから行く際はある程度腕の立つ船乗り、そして海神の加護が宿ったアイテムを持っていこう。これである程度安全は保障される。
ある程度ってどれくらいかって?
旅というものはどんなに安全に気を付けても常に事故の危険は付きまとう。そこは覚悟しなくてはならない。
さて、そんな船の墓場を進んで行き、だいたい中央エリアのあたりに差し掛かると、一隻の船が見えてくる。
見た目はボロボロに感じるが、思ったよりしっかりした造りでその船は浮かんでいる。
そんな場所にあるのだから、お察しの通り、それは幽霊船ってやつだ。
だが待って欲しい。それはいわゆるイメージされる幽霊船とは少し違う。
それは、その海域では有名な店なんだ。
バー・シップ・イノセント号。船がまるまる一隻バーってわけさ。
もちろん、乗員や店員は全員幽霊やらガイコツやら、魔物分類で言えばアンデッド系がやっている。
でも、ここのやつらは来る者拒まず去る者追わずの精神で、どんな種族、もちろん人間も客として扱ってくれる。
よほどマナー違反な非常識な行動を取らない限り祟られるなんてことはないだろう。
だが、一応念のため対霊の札の一枚でも持って行った方が余計なトラブルに巻き込まれないかもしれない。
さっきも言ったが、これからどんどん暑くなる季節。だがここはそんな世界とは無縁。いつ行ってもひんやりとしている。まあ当たり前と言えば当たり前だが。
さて肝心の飯の話に入るが、バーだけあって、酒の種類は豊富だ。普通の酒もあるが、せっかくここに来たのだから、ソウルワインを飲んでみることをおススメする。
何でもこの海域で死んだ人間の魂の一部を酒造りの材料として使っているらしい。
魂の一部というのは、死んだ後の人間に対する天界やら魔界やらとの取り決めがあるそうだ。初めてその話を聞いたときは感心したもんだ。
人間の魂が入っているということで拒否感があるかもしれないが、味は格別である。同じ人間が二人といないように、ソウルワインも全く同じ味は二つとないそうだ。だから良い味に出会えるのは運とも言える。
ちなみにソウルワインを飲んだからといって普通の酒以上に体に害はないそうだ。私も毎年この時期になると一度は飲んでいる。そしてそれを20年は続けているが特に何も無い。
一つ注意しておくことがあるとすれば、ソウルワインの例えば35年物と言ったときには、その魂の持ち主が35才で死んだという場合と、死んでから35年経ったという場合があるので確認は必要だ。
そして食事の方だが、やはり海の上だけあって海鮮系のメニューが主である。
ただ調理や味付けが、アンデッド好みの物が多いため、ここは好き嫌いが分かれるところだろう。
チーズや生ハム等のメニューもあるため、こちらを選んだほうが無難かもしれない。
むしろ彼らは熟成系の味付けを好むためか、チーズや生ハムは旨い物が揃っている。ただ数は少ないので運が悪いと品切れになっていることは覚悟しておくべきだ。
では最後に一番注意をしなくてはいけないことを伝えておこう。
この船の墓場の海域にあるバー・シップはここだけではない。他にも何隻かある。
中にはいい店もあるだろうが、ぼったくりのような店も多いらしい。
いや、ぼったくりならまだマシだ。
最悪人間を誘いこんで二度と外に出さずに捕らえてしまう悪霊船もあるから気を付けろ。
甲板に美男美女がいて、誘うように話しかけてきたり、ポーズを取ってきたりしたらまず疑え。
まあ、何はともあれイノセント号が一番安全だ。
目印は、二つの三日月と猫が描かれた旗。これは取り決めで同じ旗を違う船が付けることは許されていない。そして船外に取り付けられた7つの緑色のランプ。これが目印だ。
世界中のどんな場所もリスクゼロの場所なんてない。だが、情報と対応策を知っていれば、そこは君の人生に二度とない体験を与えてくれる場所になる可能性を秘めている。
一人でも多くの人が、まだ見ぬ知らない世界へと旅立ち、そして帰ってくることを祈っている。

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