マガジンのカバー画像

Music Lover.

21
音楽に関するエッセイを集めました。
運営しているクリエイター

#文学

CDは買う派、だったよね私。

CDは買う派、だったよね私。

CDは買う派だった。
好きなミュージシャンのCDを
例えばタワレコで買う。
帰り道でも早く聴きたくて
そわそわして落ち着かない。
家に帰り着き
いよいよオーディオにCDを差し入れる時の、
あの期待感。わくわく。

1曲目は重要だ。
1曲目というのはカッコいい曲がくる。
そうに決まってる。
そうじゃなきゃ、厭。
歌詞カードの紙の匂いが好き。
つるつるした紙ならば、
なるべく指紋をつけないように
気を

もっとみる
結局は、愛。

結局は、愛。

影ができるのは、照らす光があるから。
ただただ底抜けに陽気な空間も
悪くはないけれど、
足元を見て
自分の影ができることを確かめながら
歩き続けることは、
大切な行為のように思う。



藤井風のニューアルバムを聴いた。

花の舞う美しいガーデンで
穏やかに安らかに生きていけたらいいのに。
けれども人生には
辛いことや悲しいこと、
迷いや悩みもつきまとう。
それらを抱いて
目指す場所へと一歩ずつ

もっとみる
真夏のクリスマスツリー

真夏のクリスマスツリー

夏真っ盛りだというのに
クリスマスグッズの断捨離を
することになってしまった。
物置きが手狭になり、
もう何年も出番がない物たちを
処分するべしとのお達しがあったのだ。

埃をかぶった箱を開けると、
キラキラ輝く懐かしい物たちが
目に飛び込んできて

これを捨てるなんて私にはできないよ!

と、あっさり降参のポーズで
天に向かって両手をあげるしかなかった。

だが感傷に浸っていては先に進めないのも

もっとみる
My first ocarina.

My first ocarina.

オカリナを買った。

オカリナのくぐもったやさしい音色に
以前から惹かれてはいたのだが、
自分で演奏しようという思いとは
なかなか結びつかなかった。
それがどういう風の吹き回しだろう。
普段は行かない楽器店に並ぶ
色とりどりのオカリナを眺めていたら、
心がときめいた。
ちょっとだけだから!
やってみようよ!
と自分を説得している私がいるのだった。

居並ぶオカリナの中から
さんざん迷って、
温かみ

もっとみる
イパネマの娘・エイリアンズ・インザモーニング

イパネマの娘・エイリアンズ・インザモーニング

もしもこの世の記憶から
音楽が消えてしまったとしても、
心の奥底で眠り姫のように横たわる歌がある。
時空を彷徨うマッチ売りの少女が暖をとるために、
売れ残りのマッチ三本に火を灯す間。
そこでだけ音楽が流れることが許されるとしたら、
あなたの火の中には
ゆらりゆらり
どんな音楽が立ち現れるだろうか。

星の数ほどある音楽のなかで、
これは自分のためのものなのだと
美しく誤解するほどに、
気持ちに寄り

もっとみる
ギタボがギターを棄てる時。

ギタボがギターを棄てる時。

そんなに簡単なことじゃないんだ。

そう言うと彼は
ペットボトルの炭酸水をぐいっと飲んだ。
それから
にがい水を飲んだかのように、顔をしかめた。

「ギターを弾きながら歌うことは、
みんなが思ってる以上に大変なことなんだよ。
ボクが当たり前みたいに弾き歌いをするから、
みんなも当たり前にできるのだと思っているかもしれないけれど。」

高校時代からの友人男子は、
今も3ピースバンドで歌っている。

もっとみる
Hey Jude,don’t make it bad.

Hey Jude,don’t make it bad.

自分の小さなお財布の中から、
折り畳まれたお札を3枚出した。

それは小学生にはとても高価な買い物で、
後ろめたさでどきどきしていた。
今もその時のことをよく覚えている。

私が初めて自分で買った音楽は、
THE BEATLES の《Hey Jude》の
『レコード』だった。

お小遣いをセコセコと貯めて、
ようやく金額を満たした日。
電車に乗って何駅か先のお店に
私は出向いた。
今日こそ。ついに

もっとみる