どんな人生があったとしても
図書館がでてくる本が好きだ。
前々から気になっていて、やっと読みおえた小説が本当にとてもよかった。
主人公のノーラは何もかも上手くいかなくなり、自殺未遂を試みる。
その生と死のはざまで真夜中の図書館の扉をくぐる。
図書館も好きだけど、司書がでてくる話はもっと好き。
図書館司書のエルム夫人は、ノーラに「あり得たかもしれないさまざまな人生」の本を差しだす。
ノーラはありとあらゆる人生を体験して、この人生なら生きたい、と思える本を探し続ける。
水泳でオリンピックに出場した人生もあるし、世界的なロック歌手になってる人生もある。
作家になった人生も、ワイン農園の所有者になる人生も、独身のままの人生も結婚してる人生も、北極圏でシロクマに襲われる人生もある。
そのバリエーションたるや!
ノーラは最後にやっと完璧な人生を見つけだす。そして、生きること自体が可能性に満ちていることを最終的に悟るのだ。
全編を通して哲学者の言葉の引用があるせいか、哲学書を読んでる気持ちにもなる本だった。
真夜中の図書館のシステムが「シュレディンガーの猫」をもとに説明されていて、世界観に深みが増す。
物語が真実に思えるのはこういうときだと思う。
ある意味、物語のなかにしか真実は書けないのだ。(古くは『源氏物語』で語られているように)
シュレディンガーの猫はなんとなく聞いたことあったけど、量子物理学の話だったとは。
パラレルワールドと多世界解釈。
「こうだったかもしれない無数の人生」が表すのは、生きることの未知なる可能性だ。
ソローの言葉がとてもよかった。
『生きのびるための事務』という、ものすごく素敵な本があって、それにもこの言葉がでてくる。
ソローの本も読みたくなってしまう。
図書館にもあったはず。
そして、本屋さんで一目惚れして買ったのがこの本。
とにかくイラストがとても可愛い。
漫画だけど画集のよう。
これから寒くなったとき、ますます家にいるのが愛おしくなる一冊。
ゆっくりページをめくりながら、部屋を整えてみたくなる。
どんな人生があったとしても、わたしは今のままがいい。
司書になって3年めで、お休みの日に小説を書いて、ときどきだけどヨガに行って、本をたくさん読んで、note や日記を書く人生。
今そう思えることは、きっととても幸せなこと。
窓から入る風が心地いい。
一年でいちばん過ごしやすい時季を、少しでも長く味わいたい。