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[ 言葉を埋めた夢の跡地 ]

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詩や小説などの創作物たち。
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#短編小説

「何もしたくない」と、「何かしたい」は、同じかもしれない。

「何もしたくない」と、「何かしたい」は、同じかもしれない。

「何もしたくない」

そう呟いた言葉が、空を舞った。

「本当に何もしたくない」

別に言葉を吐いたって、誰かから返答が来ることもない。

この小さな部屋で、私は嘆いているだけだ。

何もしたくないと言いつつ、スマホを触り、どこか、何か、と探している。

何かをしていない自分に、落ち着かないのだ。

「ゲーム飽きてきたなぁ…」と呟いきながら切った電源ボタンを、翌日また押してみる。

そして何となく

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窓に映る私の顔。

車の後部座席から窓の外を見て、
私は子どもだなと感じた。

バスの窓に映る顔を見て、
大人になったなと感じた。

飛行機の窓に映る顔を眺めて、
何処へでも行ける自由を感じた。

電車の窓から見える遠くの景色を見て、
胸が高鳴った。

車の助手席に座って窓に映る私を見ると、
幸せそうに微笑んでいた。

今、あなたの瞳に映る私はどんな顔をしていますか?
#ショートショート #ショートストーリー

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白い紫陽花を、君に。

降った雨が、心に染みをつくる。

君とのデート場所が変更になったからだとか、
理由はそんな単純なものではなくて。

梅雨の時期は、どうしても自問自答しちゃうんだ。

(あのとき、あのばしょ、あのせんたく…)

そんなものは意味がないってわかっている。

「困り顔、禁止。」

考え事をしていた僕の下の方から声がする。

そうだね、せっかくのデートなんだ。

「今日はとことん楽しもう。」

そう返すと

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小さい頃の夢は、現在停滞期。

小さい頃の夢は、現在停滞期。

小さい頃。私の将来の夢は「可愛いお嫁さん」になることだった。

28歳になって3日目の昼下がり。

手作りの弁当をつつく私はため息をついて、雲ひとつない空を見上げた。清々しいまでの青い色。

「こんないい天気なのに仕事してんの?」って太陽にも笑われている気がしてならない。

上村もと子、28歳。独身な上に今現在付き合っている人もいない。

そして実家暮らし。

しかし、3つ年の離れた妹は、20歳の

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金平糖は、魔法のお薬。

「おねぇちゃん、げんきないね」

え・・・?

ベンチで腰掛けていた私の頭上から降ってきた声に、そっと顔を上げる。

そこには5、6歳くらいの女の子が立っていた。

「これ、あげる。」

差し出した拳の中のものを受け取るように、私は手を出した。

手から渡されたものは、小さなキラキラとした星の形。それは金平糖だった。

「星の形が

可愛いね。」
そう女の子に言うと、

「げんきがでる、まほうのお

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未来は、わからないから面白いらしい。

未来は、わからないから面白いらしい。

昔の人が描いていた未来は、車は空を飛ぶし、高い場所に作られた道は建物に沿ってくねくねと曲線を描いており、さらには不思議な建物が立ち並んで複雑…さらには、そこら中に全身タイツを着た案内人がいる感じだった。

現実は、車は空を飛ばないけど、環状線とかはちょっとそれっぽいかな。新しいショッピングモールとか国立競技場とか、ビルとか、近未来的な建物と言えばそうかもしれないけど、さすがに全身タイツの人はハロ

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私の「人生」は、どこへ行ったの?

私の「人生」は、どこへ行ったの?

「お金持ちなんて大嫌い」だと皮肉ってる私が、友達の中では1番稼いでいます。

周りが遠くなるのを感じながら、「今の私が嫌いだ」と、はっきり言った友人を切り捨ててまで遊んだ、夜の友人との思い出の方が色濃く残っているからこれまた不思議なことです。

きっと周りは、決して綺麗なお金じゃなかったから、私の使うお金を嫌ったんだと思いました。

でも、私は「生きるためだ」と言い聞かせ、そして言い訳のよう

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SNSの渦の中に閉じ込められて。

SNSの渦の中に閉じ込められて。

ふと目が覚めた、午前3時。
まだ起きるのには早い時間。

そういえば、終電で帰ってきて、そのまま寝ていたと気づいたのは、5分後のこと。

二度寝をしようと思ったのに、どうしてだか全然眠くならない。

メイク落として、お風呂でも入ろうかと思ったけど、明日はお休み。という事実が何もかもを吹き飛ばしてくれた。

28歳の私のお肌には大ダメージかもしれない。でも動けそうにもない。

「別に1日くらい怠惰し

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ずっと、空っぽだったんだ。

ずっと、空っぽだったんだ。

「じゃあ、別れる?」

この単語が彼から出るのは、もう何回目だろう。

なんだかここ半年くらい、ケンカをするたびにその言葉が自然と出てくるようになった。しかも、些細なことで。例えば、時間に遅れてきたりとか、行く予定だったお店が閉まっていたとか。決まって彼が不機嫌になって、私はそれが嫌で指摘してしまう。

遅れた時に「もー遅いよー!」「ごめんごめん」とか、お店が閉まってたら、「お休みだったね」「残念

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将来なんかより、今が大事。

将来なんかより、今が大事。

眠たい。眠たい。眠たい。

先生の声は子守り唄のようだし、ノートに書き込むみんなの筆記音は、それを促しているかのような心地よいビートを刻んでいる。

学校生活も最後の年か。

まだ4月だというのに、新入生を歓迎する準備で盛り上がるものかと思ったが、現実は受験モードで気が重い。

学校でもお家でも、1に勉強、2に勉強だ。

将来どうなりたいかなんて、まだわからないのに。なんだったら、私が大人になるま

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桜が咲く頃、君が居なくなる。

桜が咲く頃、君が居なくなる。

桜の開花が発表されると、嬉しかった。

でも、今年はまだ咲かないでと強く願う。

お世話になった学び舎も、

大嫌いだった先生も、

思い出を刻んだクラスメイトも、

放課後毎日一緒に過ごした親友も、

大喧嘩したまま仲直りできてないあの子も、

ずっと片思いをしていたアイツとも、

全部ぜんぶお別れしなくちゃいけなくなる。

もう少しこのまま居たいのに、

だけどこの先の未来も見たくて、

全部

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春のうたを口ずさんで。

春のうたを口ずさんで。

その足音は、突然聞こえてくる。

少し前まで、まだ暖房を入れなくちゃ耐えられないほどだったのに。

どこもかしこも桜を連想させる商品ばかりが並ぶ。

あぁ、もうすぐ春だ。

街がピンク色に染まりつつある今日この頃。
僕は昨日見た夢を思い出していた。

母に手を引かれて歩いた、小学校までの桜の道。懐かしい。そういえば、隣に住んでた幼馴染は東の都へ行ったそうな。いつも一緒に学校に通ってたよなぁ。

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私は猫だ。名前は匿名希望よ。

私は猫だ。名前は匿名希望よ。

私の前世は猫なの。

急にこんなこと言われて、驚いたかしら。だって、こんなに自由気ままでマイペース。とてもツンデレだと言われるし、甘え上手だとも言われる。

でもそんなの、私は気にしたことがないわ。だって、私にぴったりな天職だってあるのよ。

猫って夜行性って言うでしょ?だから、私は夜しか行動しないの。

次々くる人の群れ。子猫のように甘えたら、キラキラした高級な大人のドリンクがもらえるし、飼い猫

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