冬花火の下に、散る恋心 8 [星野 カナタ] 2019年7月15日 22:26 君と観た、いつかの花火を、私は忘れてしまいたい。だって、本当に本当に綺麗だったから。 真冬の花火は珍しいそうだ。「たしかに、珍しいかも」と呟きながら、吐いた息は白く闇に消えていった。 クライマックスを迎えるころ、手はキンキンに冷えて、いつの間にか君と繋いでいた手を離したことさえも忘れていた。 寂しそうに見つめる君の目を、私は見ることもなく花火に夢中だった。 澄んだ空を色とりどりの光が、染め上げて消える。儚さと美しさのコラボレーションにため息が出る。私は、その綺麗さばかりに見惚れていた。 「もうそろそろ最後だね」と君はいう。「寂しいね」と応える私。本当に寂しかったのは君の方かもしれないのに。それでも私は、花火の間、君と目線を交えることはなかった。 最後の花火が上がるとき、私の心に君はいなかった。君もきっと、同じだろう。寒い寒い冬の日のこと。私は早く、君と観た花火を忘れたい。 #写真 #毎日note #小説 #毎日更新 #毎日投稿 #創作 #短編小説 #ショートショート #ポエム #ショートストーリー #超短編小説 #散文 #花火 #フォトエッセイ #iPhone写真 #フォトポエム #花火写真 8 お仕事中のドリンク代にさせていただきます。ちょっといい紅茶を買いたいです。 サポート