ずっと、空っぽだったんだ。
「じゃあ、別れる?」
この単語が彼から出るのは、もう何回目だろう。
なんだかここ半年くらい、ケンカをするたびにその言葉が自然と出てくるようになった。しかも、些細なことで。例えば、時間に遅れてきたりとか、行く予定だったお店が閉まっていたとか。決まって彼が不機嫌になって、私はそれが嫌で指摘してしまう。
遅れた時に「もー遅いよー!」「ごめんごめん」とか、お店が閉まってたら、「お休みだったね」「残念だけど、また今度のお楽しみにしよう」なんてポジティブな言葉を掛け合ってた日が懐かしいほど。
私は別れたくなんかないのに。むしろ別れないためにケンカして、話し合って、お互いが納得して、仲直りするんじゃないのか。ケンカして別れたって、よく聞く別れの理由だけど、私も今まさに直面している。
「私は、そんなことで別れたくないよ」
私は彼が好きだ。だから、その問いには必ずこう答えるし、そして彼も
「俺も別れたくないけどさ…」
なんて言葉でしめる。そのあとは「ごめんね」とか謝罪の言葉を曖昧にして、ぬかるんだ道を歩いているような、浮かない気持ちになってまた元通りになるまで過ごしていくのだ。
時々、彼は私の愛を確かめるために「別れる?」なんてことを言っているのではないかと思うようにもなってきた。空っぽな心を満たしたくて、誰かの愛がなきゃ寂しくて、孤独の中では生きていけなくて、だから私と彼はただ一緒にいるのではないのだろうか。ぬるま湯に浸ったままの、私たち。そこに"愛"なんて、もうこれっぽっちもないのかもしれない。それでも一緒にいることを望んでいる。
進展しない2人の関係に、疲れが溜まって抜けない日々が続いていた。
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「じゃあ、別れる?」
今日もきました、彼の常套句。今日は私が変化球を投げてみることにした。
「うん、別れよう」
この会話をするのはもうやめたい。平行線のままの2人には、もう良い頃合いだろう。すがりついてまで、私はこの人問いたいのだろうか。彼をチラッとみると、とても驚いた顔をして、
「俺は別れたくないけど、別れたいって言うなら…」
なんて台詞を吐き出した。4年間付き合ってきたけど、なんだか久々に刺激がもらえた気がする。
「うん、じゃあ別れよっか。バイバイ」
最高の笑顔で、私は彼を見て手を振り、何か言いたげな彼の顔を微笑みで交わして、騒がしい街中へと歩き出した。
新しい恋は、しばらくお休みかな。でも、我ながらよく決断したなと、自分を褒める。そして帰り道、彼とのお別れ記念日として、タピオカミルクティーを飲もう。と決めたのだった。
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お仕事中のドリンク代にさせていただきます。ちょっといい紅茶を買いたいです。