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書評

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#書評ブログ

あまりに敏感すぎるとどうなるのか?非HSPの人にこそ読んでほしい「敏感すぎる日常」【高橋敦『敏感にもほどがある』きこ書房】

あまりに敏感すぎるとどうなるのか?非HSPの人にこそ読んでほしい「敏感すぎる日常」【高橋敦『敏感にもほどがある』きこ書房】

世の中の5人に1人はいると言われているHSP(Highly Sensitive Person:過度に敏感な特性を持つ人)。これが多いのか少ないのかというのはさておき、そのへんの職場や学校には必ず1人はいる計算にはなる。「うちにはいないけどなぁ・・・」と心当たりがなくても、それはおそらく敏感であることを悟られないようにただただひた隠しにしているだけかもしれない。

課長に怒られている同僚を見て、自分

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「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」が表す言葉って?想像以上にたいへんな、国語辞典を作る裏側を知れる一冊。【飯間浩明『辞書を編む』光文社新書】

「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」が表す言葉って?想像以上にたいへんな、国語辞典を作る裏側を知れる一冊。【飯間浩明『辞書を編む』光文社新書】

「南を向いた時、西にあたる方」(『広辞苑』第6版)
「北を向いたとき、東にあたるほう」(『チャレンジ小学国語辞典』第3版)
「アナログ時計の文字盤に向かった時、一時から五時までの表示のある側。〔「明」という漢字の「月」が書かれている側と一致〕」(『新明解国語辞典』第7版)
「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」(『三省堂国語辞典』第4版)

異なる国語辞典から引用したこの意味を表す言葉はな

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科学的側面から考える人間の過敏さとは?そして精神科医から見た「HSP」とは?自分の敏感さを違った視点で見たい人向けの一冊。【岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち』幻冬舎新書】

科学的側面から考える人間の過敏さとは?そして精神科医から見た「HSP」とは?自分の敏感さを違った視点で見たい人向けの一冊。【岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち』幻冬舎新書】

「HSP」(Highly Sensitive Person:過度に敏感な特性を持つ人)にまつわる本は、HSP研究の第一人者であるエレイン・N・アーロン博士の『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』を筆頭として、5人に1人該当する性格の一部である、生まれ持った特性である、という視点で書かれているものが多い。

この本はその「HSP」を、科学的(ここかなり重要)に考察・研究してまとめられ

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たしかに、「あたりまえのこと」が書いてあるが、問題はそのやり方だ。【ロン・クラーク『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』草思社】

たしかに、「あたりまえのこと」が書いてあるが、問題はそのやり方だ。【ロン・クラーク『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』草思社】

この本には、たしかに「あたりまえのこと」が書いてある。
しかも50個もある。
原著では55個だったそうだが、日本の教育現場でそぐわないものを5つ削ぎ落としたらしい。

・誰かが話しているときには、その人の顔を見る。
・人から何かをもらったときは「ありがとう」とお礼する。
・すべての人にあいさつをする。
・物を落としたら拾ってあげる。
・劇場や、どこかへ入るときは静粛に入場。
・いじめやいやがらせが

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「不登校は不幸じゃない」。でも、「学校は必要」?その理由も腑に落ちる、不登校経験談の集合体の1冊。【小幡和輝『学校は行かなくてもいい―親子で読みたい「正しい不登校のやり方」健康ジャーナル社】

「不登校は不幸じゃない」。でも、「学校は必要」?その理由も腑に落ちる、不登校経験談の集合体の1冊。【小幡和輝『学校は行かなくてもいい―親子で読みたい「正しい不登校のやり方」健康ジャーナル社】

この本の書評はどうしても今日書いておきたかった。

もうすぐ夏休みが終わる。実はこの時期に「18歳以下の自殺者数」というものが格段に増える。それは、2学期が始まるにあたって学校に行きたくない、学校が辛くてしんどい子どもたちが、耐えきれずに「死」の道を選んでしまうからだ。

でも、それっておかしくないか。
「学校に行く」以外に、選択肢が許されないのっておかしくないか。
もし「学校に行く」以外の選択肢

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あまりにも緻密すぎる佐藤氏の京都での学びの記録。学習意欲を刺激されたい人は手にするべし。【佐藤優『同志社大学神学部』光文社】

あまりにも緻密すぎる佐藤氏の京都での学びの記録。学習意欲を刺激されたい人は手にするべし。【佐藤優『同志社大学神学部』光文社】

正直な話、この本は読みにくい。

まず、章立てが一切ない。348ページとかなり分量は多いが、目次もなく物語がいきなりはじまり、終わるまでノンストップで駆け抜けてゆく。それに本作で扱われる神学の話や、その当時の学生闘争の話も、非常に難解かつマニアックで、予備知識なしではいったい何のことかさっぱりわからない。

しかしこの本には、仮にそれらを読み飛ばしてもなお、ある魅力がある。

この本を簡単に説明す

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広島カープが強い今だからこそ、読み返しておきたい物語。あの年、「広島」でいったい何が起こっていたのか?【重松清『赤ヘル1975』講談社】

広島カープが強い今だからこそ、読み返しておきたい物語。あの年、「広島」でいったい何が起こっていたのか?【重松清『赤ヘル1975』講談社】

広島カープが強い。気がついたら今年のペナントレースでもマジックを点灯させている。このままいけば2016年から3連覇、ということになる。

そもそもカープがはじめて優勝したのは1975年のことだった。帽子の色を赤に変えたその年、決して下馬評が高くない中で、序盤にルーツが監督を退任するアクシデントがありながらも後任の古葉竹識監督が立て直し、山本浩二、衣笠、大下、外木場らが活躍して栄冠をもたらす。それは

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