小説と文鳥

小説を投稿しています。 たまに読書日記。文鳥日記。

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    読んだ本についての日記や感想文です。 noteの記事の感想文もこちらに入れています。

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    文鳥二羽に関する記事の置き場です。

  • 短編小説

    短編小説、ショート・ショート、掌編小説などの置き場所です。 短編小説はだいたい4000字程度です。

  • 長編小説『少女と言祝の筆』(完結済)

    (しょうじょ と ことほぎのふで) 「書道の成績が0点だった高校生が平安貴族の幽霊と出会う話」です。だいたい1話4000字程度です。全6話。

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【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(1/6)

 私立灘が丘高校は、海のそばにあるわけではない。   海(灘)が見える丘にある高校、だから「灘が丘」。   丘の上にあるせいで、生徒たちは校舎へとたどり着く前に、猛烈な坂道を義務付けられる。   二〇〇m続く急勾配の坂道、通称「地獄坂」。  七月二十二日月曜日。八時五分。  この地獄坂を、私は殺意を抱きながらのぼっている。   八色透花。高校一年。    夏休みの初日に地獄坂をのぼる理由は、部活でも、夏期講習でも、委員会活動でもない。  私は、書道の一学期の成績が

    • 【読書日記】〈道草〉を忘れてしまった大人たちへ(『ボクの道草』)

       日々の運動不足解消のために近所を散歩することがあります。  といっても、一度決めたルートをただ歩くだけ。  なかば義務的に歩いているので、 「きょうはこっちの道を通ってみよう」 「きょうはあえて遠回りしてみよう」  そんなことを思うことはありません。  そういう寄り道を、「道草」と言いますよね。  みなさんは最近「道草」しましたか?    もしかしたら「道草」って、そもそも子どもの特権みたいなものだと私は思うんです。  私も思い返せば、長い通学路をあえて遠回りして帰

      • 【文鳥の日】抱きしめられない幸せ

        10月24日は「文鳥の日」です。 由来は「10(手)」「2(に)」「4(幸せ)」という語呂合わせで、「手のり文鳥」とも呼ばれる文鳥らしい記念日だと思います。 わが家には文鳥が2羽います。 シルバー文鳥と シナモン文鳥です。 2羽ともメスです。 私が北斗百烈拳ばりに十円はげが出来まくって仕事を辞めた年に、我が家に来てもらいました。 我が家に文鳥が来て三年目です。すなわち仕事を辞めて三年目ということです。 新しい自分の歩みと文鳥の成長が(だいたい)同じスタートラインから始まっ

        • 【創作漫画】紙飛行機の天才

          タイトル 紙飛行機の天才 著者名 小説と文鳥 使用フォント(UDフォント)UDモトヤマルベリ印刷しての最小フォントサイズ 4mm 記事内本文の字数  本文文字数 246字 ※漫画文字数 39字  こちらの素敵な企画に参加いたしました。  すーこさま、素敵な企画と運営をありがとうございます。  どうしても文字が浮かんでこず、拙いですが漫画を描きました。  お読みいただきありがとうございました。 (紙飛行機といえば、19(ジューク)の「あの紙ヒコーキ くもり空わって」が頭に

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        【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(1/6)

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          【短編小説】図書室のエミちゃんと友達

           今日は週に一度の「出張図書館」の日だ。  と言っても、大それたことをするわけじゃない。  〈とある人〉のために、代理で本を選書し、宅配するだけのことだ。 「今回は『友達』をテーマに選書しようと思うんです」    僕がそう言うと、同僚の司書たちは次々に候補を挙げてくれた。 「ねぇ、真野くん、『ふたりはいっしょ』はどう?」 「いいですよねぇ、がまくんとかえるくん。だけど『ふたりはいっしょ』はすでに持っていらっしゃるんですよ」 「あら、そうなの。それじゃあね……」  みん

          【短編小説】図書室のエミちゃんと友達

          【掌編小説】入道雲の裏側

           私は立ち止まり、踊り場の窓からの景色を見上げた。  学校の裏山の向こうから入道雲が、この小さな田舎町すべてを抱きかかえるかのように立ちのぼっている。  ぼうっとしていると不意に声をかけられる。振り返らずとも、その柔らかな声で先生だと分かった。 「1年5組、今から演劇リハだよ」 「分かってます。先生を待ってたんですよ」  どちらからともなく、私と先生は並んで階段を降り始めた。 「演劇の進捗はどう?」 「やばいです。お盆休みでみんなセリフぬけちゃってるし、そもそも髪の

          【掌編小説】入道雲の裏側

          【読書日記】平和について考えるための3冊

          1:読書日記①馬場朝子『ロシアのなかのソ連 さびしい大国、人と暮らしと戦争と』(現代書館)   著者の馬場朝子さんは、1970年よりソ連に6年間留学、その後NHKでロシアに関するドキュメンタリー番組を数々製作、そして退職されてからも2012年よりロシアに5年間住んだ経験がおありで、ロシアだけでなくウクライナにも訪れ、ロシア人、ウクライナ人両方を友に持っている、ロシア(ソ連)の暮らしのにおいから政治までお詳しい方だ。  馬場さんの、ロシアという国への眼差しは、古くからの友人

          【読書日記】平和について考えるための3冊

          【読書日記】創作で傷を描く意味(『利他・ケア・傷の倫理学』)

            1:はじめに  二年前、10円ハゲが五個できたので仕事を辞めた。 (五個から数えるのをやめたのでそれ以上あったと思う。ハゲを繋げば多分ちょっとした星座をつくれるくらいには)    退職するまでの最後の二か月、もう来年度のことは何も考えなくていいので暇になった私は、高校以来ほとんど読まなくなった小説を手にとってみた。  その小説は、表紙が童話調のイラストで可愛らしく、心が病んでいる私を癒してくれるだろうと、表紙と題名以外の情報なしでさっそく読んでみた。 「……」

          【読書日記】創作で傷を描く意味(『利他・ケア・傷の倫理学』)

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(6/6)

            創作小説『少女と言祝の筆』 最終話 甘味  七時三十二分着の市営バスに乗り込む。  乗客は私と、運動部らしき女子生徒が数人。    途中のバス停で、菜乃花たちは乗ってこなかった。昨日のショックで家に引きこもっていても無理はない。  結局、昨日ホームセンターに現れた不審者は逃亡したままだ。  石灰や肥料などの商品が物色され、一部が盗まれた。刃物を持っていたこともあり、地域の防災放送が朝から注意喚起を、そして灘街駅周辺では、警察官が巡回しているのを見かけたりした。  

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(6/6)

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(5/6)

          ※物語の終盤なので、今回のみ2倍ほど長いです。前半後半に分けております。下の目次を参考にしていただけたらと思います。 前回までのあらすじ  創作小説『少女と言祝の筆』  第五話 凶事◆1    その日の補習が終わっても、私は「書」から解放されなかった。 『いざっ! 言祝、言祝、言祝!』  元気いっぱいの平安貴族の幽霊が、私の周りを蝿のようにはしゃぎ暴れ狂うのだ。  結局私は幽霊の彼女に言われるがまま、制服から着替えることも許されず、〈言祝の筆〉を使い、社宅周りの草花

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(5/6)

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(4/6)

          創作小説『少女と言祝の筆』第四話 教師 『……さればこそ、あなたとわたしの縁がつながったのね』  書道教室に現れた平安貴族の幽霊。  彼女の言葉を追うように、窓から夏風が一瞬強く教室に吹き込み、私の前髪をさらりと揺らした。 (それって、どういうこと……?)  彼女に尋ねようとした瞬間、私の心臓が跳ねた。  書道教室の扉が開いたのだ。    ガタッと椅子の音を立てさせ、扉の方を見ると、見覚えのない、若い女性の先生が立っていた。 「あ、ご、ごめんなさい。貴方が、一年五組

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(4/6)

          【読書日記】本が難しすぎて泣いたことがある貴方へ(『「読み」の整理学』)

          1:はじめに  日本語なのにどうして読めない?  本を読んで泣いた経験は、読書好きならほとんどの人にあると思う。  その「泣いた」本の多くはきっと、小説や絵本など、物語の本だろう。  時に、心震えるエッセイ本や心理学系の本、伝記や手記もありえるかもしれない。    大学三回生の冬の夜。  私は一人、自室で泣きながら本を読んでいた。  それはゼミの発表用に用意した一冊の哲学の解説書だった。  私はその本が、難しすぎて泣いていた。 「どうして、日本語で書かれているのに、意味

          【読書日記】本が難しすぎて泣いたことがある貴方へ(『「読み」の整理学』)

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(3/6)

             夕方頃、担任の佐藤先生から電話がかかってきた。 『八色ごめんなぁー!』  そのうるささにスマホを耳からぐんっと遠ざける。体育教師の佐藤先生の声量はグラウンドにいるはずなのに、四階まで聞こえてくるほど凄まじい。 『書道の高井先生、一学期終わりで産休に入ってさぁ、八色の補習は芸術科の先生たちに代行頼んでたらしいんだけど、その、なんというか……やり取りがうまくいかなかったらしくて。ほら、美術の田村先生も音楽の岩田先生も部活ガチだから超忙しいじゃん? って知らない? そり

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(3/6)

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(2/6)

            創作小説『少女と言祝の筆』第二話 並走     私はその日、人生で初めて、廊下を走った。  乱暴に開けた書道教室の扉を閉めることなく、すれ違う先生に会釈することもなく、ただ、無我夢中で校舎を飛び出し、地獄坂を駆けおりた。  正門を抜けて五分ほどにあるバス停「団地口」に停車していた市営バスに乗り込む。飛び込んできた私の尋常でない荒い呼吸と形相に、団地に住んでいるだろう白髪のご婦人がぎょっとした。  間もなくバスは出発した。  バスは山の麓から海辺の街へと続くゆるや

          【創作小説】書道の成績が0点の高校生が平安貴族の幽霊と出会う話(2/6)

          【小説と文鳥】サイトマップと簡単な自己紹介

          自己紹介 はじめまして。「小説と文鳥」です。  いつも読んでいただいたり、関心を持っていただいたり、貴重なお時間を割いていただいてありがとうございます。  noteを始めて一か月が経ちましたので、今回は自己紹介をさせていただければと思います。  このアカウントでは主に創作小説を投稿します。  誰かの、そして自分の古傷を癒せるような、  誰かの、そして自分の、日々を生きる勇気になるような、  そんなお話を創りたいなという一心で創作しております。    時々、おすすめした

          【小説と文鳥】サイトマップと簡単な自己紹介

          【短編小説】ある銅像の雄弁

          『ある銅像の雄弁』    とある丑三つ時。摩擦音、そして衝撃音が夜の街に響き渡った。  けたたましい音と同時に、俺の視線の先に、血だらけの男が現れた。  いつもなら俺の視線の先には、右手に持たされた、石でできた偽物の本があるだけだ。時折、俺の胴体と本の間に、猫が体をおさめて昼寝をしたり、鳩が巣をつくろうと小枝を運んできたりする。百四十年ほぼ同じ世界を見るしかない俺の目にとっては、どんな出来事も良い暇つぶしだ。    ただこの男を暇つぶしだと言うにはあまりにも不謹慎だ。

          【短編小説】ある銅像の雄弁