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読書日記

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読んだ本についての日記や感想文です。 noteの記事の感想文もこちらに入れています。
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記事一覧

【読書日記】〈道草〉を忘れてしまった大人たちへ(『ボクの道草』)

 日々の運動不足解消のために近所を散歩することがあります。  といっても、一度決めたルートをただ歩くだけ。  なかば義務的に歩いているので、 「きょうはこっちの道を通ってみよう」 「きょうはあえて遠回りしてみよう」  そんなことを思うことはありません。  そういう寄り道を、「道草」と言いますよね。  みなさんは最近「道草」しましたか?    もしかしたら「道草」って、そもそも子どもの特権みたいなものだと私は思うんです。  私も思い返せば、長い通学路をあえて遠回りして帰

【読書日記】平和について考えるための3冊

1:読書日記①馬場朝子『ロシアのなかのソ連 さびしい大国、人と暮らしと戦争と』(現代書館)   著者の馬場朝子さんは、1970年よりソ連に6年間留学、その後NHKでロシアに関するドキュメンタリー番組を数々製作、そして退職されてからも2012年よりロシアに5年間住んだ経験がおありで、ロシアだけでなくウクライナにも訪れ、ロシア人、ウクライナ人両方を友に持っている、ロシア(ソ連)の暮らしのにおいから政治までお詳しい方だ。  馬場さんの、ロシアという国への眼差しは、古くからの友人

【読書日記】創作で傷を描く意味(『利他・ケア・傷の倫理学』)

  1:はじめに  二年前、10円ハゲが五個できたので仕事を辞めた。 (五個から数えるのをやめたのでそれ以上あったと思う。ハゲを繋げば多分ちょっとした星座をつくれるくらいには)    退職するまでの最後の二か月、もう来年度のことは何も考えなくていいので暇になった私は、高校以来ほとんど読まなくなった小説を手にとってみた。  その小説は、表紙が童話調のイラストで可愛らしく、心が病んでいる私を癒してくれるだろうと、表紙と題名以外の情報なしでさっそく読んでみた。 「……」

【読書日記】本が難しすぎて泣いたことがある貴方へ(『「読み」の整理学』)

1:はじめに  日本語なのにどうして読めない?  本を読んで泣いた経験は、読書好きならほとんどの人にあると思う。  その「泣いた」本の多くはきっと、小説や絵本など、物語の本だろう。  時に、心震えるエッセイ本や心理学系の本、伝記や手記もありえるかもしれない。    大学三回生の冬の夜。  私は一人、自室で泣きながら本を読んでいた。  それはゼミの発表用に用意した一冊の哲学の解説書だった。  私はその本が、難しすぎて泣いていた。 「どうして、日本語で書かれているのに、意味

【読書日記】君は孤独を感じたことがあるか(『ヨーロッパ思想入門』)〜私の大学受験記〜

0:n年前の12月、某私大の文系キャンパスにて   その日、私は文学部哲学科の公募推薦入試を受けていた。  午前は小論文試験。  午後は面接試験。  面接試験で、強面の面接官(教授)が私に尋ねた。 👨🏻‍💼「君は孤独を感じたことがあるか」 😅「え、いや……、ないですね……」 👨🏻‍💼「孤独を感じたことが無い人は哲学できないよ」 1:私の進路を救った一冊   本当の本当に信じられないことに、  私はその面接試験に合格した。  当時の私は、絶対に確実に百パーセント落

【読書日記】心に大きなマンションをつくりたい(『82年生まれ、キム・ジヨン』)

1:長すぎる前振り  「心のマンション」ってなに?  大学時代から、「心が広い大人になりたいなぁ」と、漠然と考えるようになった。   ・人の些細な言動に容易にムカつきたくない。 ・周りをよく見て、なるべくたくさんの人に気を配れるようになりたい。  そういう人になりたいなぁと思っていたら、とある「知恵」と出会った。  おそらく内田樹さんの本で出会った知恵だ。  なんの本だったか、それともレポートの課題や小論文対策で読んだ文章だったか、大学を卒業してn年経ってしまったいま