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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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#奨学金

国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行

国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行


国公私立大学の学費格差問題国公立大学と私立大学の学費には大きな格差が存在します。年間の学費で言えば、国公立大学の場合は学部を問わず約60万円、私立大学の場合は文系学部で100万円強、理系学部や医療系の場合150万円程度、医学部の場合700万円程度(均等割りすると)と言われており、同じ学問を学ぶに際してのコストは大きく異なっています。

とはいえ、この50年で国公立大学の学費は値上がりが続いており

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千葉の新規採用教員の奨学金肩代わり政策を文科省が許せば、小規模県の衰退を加速させる

千葉の新規採用教員の奨学金肩代わり政策を文科省が許せば、小規模県の衰退を加速させる


全国的な教員不足教員不足が全国的に問題になるなか、各地の自治体、教育委員会は様々な方法を駆使して採用試験の受験生確保に躍起になっています。

例えば6月に試験を前倒しにしたり、大学3年時に受験を可能にするなどの手法が実際に行われているようです。また、いまだに教員の遣り甲斐アピールの広報活動を行っているところもあると聞きます。

正直な話、これらの手法は教員不足に対し本質的な解決をもたらすものでは

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「大学無償化」反対のネオリベラリストが見ようとしない、高等教育機関のインフラとしての価値

「大学無償化」反対のネオリベラリストが見ようとしない、高等教育機関のインフラとしての価値


都立大学無償化東京都の小池都知事はは2024年度から授業料無償化の方針を打ち出しました。

その件に関して、経営コンサルタントかつ通信制大学の学長を務める大前研一氏は「大学まで無償化」ということに反対の立場をとっています。

大前氏の主張大前氏が大学無償化に反対を以下のロジックで主張しています。

大学は成人が通う場所である

そのため大学に進学するのは自己責任である

また、大学は社会人になっ

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大学無償化制度や奨学金が抱える、成人なのに「親の収入」が条件になるという謎


奨学金と無償化制度大学進学に際して学生支援機構の奨学金を利用する人は少なくありません。

高校在学中に予約奨学生制度を利用して申し込む生徒も多いようです。
(この業務が高校の教員に振られることは問題ですが)

かくいう私も学生支援機構(当時は日本育英会)の奨学金を利用していました。

また、大学の学費を納付することが難しい家庭の生徒ならば大学無償化制度の対象となります。

こちらも高校在学中に手

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教員就職者の奨学金の返済免除は教員不足の一手としては不足、そして…


かつて存在した返済免除制度かつて日本育英会(現:学生支援機構)の奨学金は教員に就職した場合は返済免除となる特例制度が存在しました。

この制度は平成10年に対象を大学院で受けた奨学金のみと改正がされました。

さらに、団体の再編に伴った動きとして、返還免除規程を含む日本育英会法が平成15年に廃止となったため、全ての制度も廃止されました。

ところがその廃止された制度が復活する可能性が出てきました

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現役高校教員の視点から見た大学入学一時金と「教育ローン」

現役高校教員の視点から見た大学入学一時金と「教育ローン」

大学への進学に際してはそれなりにまとまった金額のお金が必要です。

今回はお金の話に関して、奨学金以外の方法、「教育ローン」を取り上げてみます。

大学進学にかかる費用大学進学において最も直接的な費用は学費ですが、これは国公立大学と私立大学で、私立の場合は大学や学部によって大きく異なります。

国立大学の場合は初年度が入学金と282,000円と授業料が535,800円となり、合わせて817,800

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「奨学金の返済苦」を気にして進学を諦めるべきではないが、奨学金に関して進路指導担当者は最低限の知識を持つべき

「奨学金の返済苦」を気にして進学を諦めるべきではないが、奨学金に関して進路指導担当者は最低限の知識を持つべき

日本経済は長引く不況の中で停滞していますが、大学進学率や家計における教育支出率は増加しています。

とはいえ無い袖は振れぬわけで、多くの人達は奨学金を借り入れることで学費を捻出しています。

私自身、大学進学に際し奨学金を借りており、返済までには15年近くかかりました。

「返済苦」による自殺先日、「奨学金の返済苦」によって自殺をするというニュースが上がっていました。

奨学金の借入額と就職先によ

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「貧しいからこそ、四年制大学に奨学金を利用してでも進学すべき」という考え方

多くの学校と同じように、私の勤務校にも多様な生徒が在籍しています。

そうした生徒達を送り出し、その後の彼らの人生の続きを伝え聞くたびに、四年制大学へ進学すべきと強く感じることがあります。

高卒と大卒の収入や社会的立場の差その理由として挙げられるのが、高卒と大卒の生涯賃金の大きな格差です。

私が最初に送り出した生徒はすでに30半ばを迎え、今の時点でも卒業後の進路によって経済格差は広がっているの

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