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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2023年3月の記事一覧

「高等教育無償化」は少子化対策ではなく、産業育成、技術革新の文脈で語るべき

「高等教育無償化」は少子化対策ではなく、産業育成、技術革新の文脈で語るべき

公明党が統一地方選の選挙対策の一環として政策提言をしています。

個人的には「高等教育無償化」には大賛成です。しかし、この政策を「少子化対策」の文脈で語ることに対して違和感を拭えません。

「高等教育無償化」の内容と対象のミスマッチそもそも公明党が掲げる「高等教育無償化」とは具体的にどのような内容を指しているのでしょうか。

多子世帯への拡大という方向性は理解はできますが、地方に住む現実とこの政策

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教員不足を学級定員を増やすことで対応するという本末転倒な対策

教員不足を学級定員を増やすことで対応するという本末転倒な対策

山口県では教員不足を理由に学級定員数を引き上げることで対応できた、という発表をしました。

このニュースを見る限りでは、山口県は教員不足に対応したのに加え、不登校未然防止向けの教員を配置まで行った成功例のような印象を受けます。

学級定員を増やすという荒業文科省の指定する学級編成基準は現在、中学校におては40人となっています。

山口県では県の基準で小中学校の全学年が35人学級となっていました。と

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「教育学部の教授に小中高教員経験者、起用を義務化」は何のために行うのか?

「教育学部の教授に小中高教員経験者、起用を義務化」は何のために行うのか?

教育学部の教授に教員経験者採用を義務化するという話がニュースになっていました。

この目標自体は決して大幅な増員というわけではなく、現状では16.1%であり、そこまで難しい数値ではなさそうです。

実効性があるのかこの施策にはどういった目的があるのでしょうか。

私が学生時代に教員養成系の講義を受講した際も、ほとんどの教官は小中高の経験がない人だったように感じます。

しかし、一方で教員経験のある

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学習塾における「定期試験の過去問利用」の雑感

学習塾における「定期試験の過去問利用」の雑感

主に中学生向けの学習塾において「定期試験の過去問利用」がなされている、ということは昔から知られています。

今回はこの件に関しての雑感をまとめたいと思います。

法律的な問題まず、議論になるのはテストが著作物であるか、ということです。

著作権上、「試験」と呼ばれるもののうち、入学試験や入社試験、資格や検定など人の将来を左右する可能性のある試験は秘匿性が高いとして事前に著作権者の承諾を得ずに利用出

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WBCの決勝戦を授業で見せることの是非

WBCの決勝戦を授業で見せることの是非

先日、日本チーム(侍JAPANという呼び名を使うのは個人的には恥ずかしい…)の優勝に終わったWBCの決勝戦に関して、教員界隈のSNSでは話題になっています。

決勝戦は3/22の月曜日の午前中であり、小中学校は終業式前であり、この時間に授業があった学校も多いようです。

WBCを授業中に見せたことへの賛否その授業時に試合を生徒に見せた(という体で自分が見た)クラスが存在したようです。

このような

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「子供たちの気持ちに寄り添った」教員人事異動の発表前倒しより「大人の現実に即した」内示の前倒しが優先すべき

「子供たちの気持ちに寄り添った」教員人事異動の発表前倒しより「大人の現実に即した」内示の前倒しが優先すべき

都教育委員会は本年度より教員人事の発表を前倒しで行ったようです。

これまでは4月1日に発表されていたようですので、2週間弱ほど早い発表となっています。

理由は“先生とお別れの時間確保へ”こうした変更を行った理由として記事内で挙げられていたのは以下のようなものです。

こうした声があったことは事実でしょうし、別れを惜しむ時間が必要な方がいるのも理解はします。

ただ正直なところ、こうしたウェット

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ChatGPTなどの生成型AIを授業利用と高校数学での活用に関する考察

ChatGPTなどの生成型AIを授業利用と高校数学での活用に関する考察

2023年に入ってからChatGPTに関する話題が注目を集めています。

また、3月に入ってからはGPT-4が利用可能(制限有り)となり、生成型AIの可能性に関しては多くの人が関心を持っています。

学校における種々の活動や授業などでもその利用について議論されていますが、そうした議論の中には利用を禁止すべきといった安直な反対意見も存在します。

制作物の結果での評価は不可能によく言われるのが読書感

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「マイナンバーカードの普及を学校に頼る」という安直な考えは教員の業務を圧迫する

「マイナンバーカードの普及を学校に頼る」という安直な考えは教員の業務を圧迫する

マイナンバーカードの普及が急ピッチで進んでいます。

その中で以下のようなニュースが報道されていました。

どうやら政府が都道府県の教育委員会に対し普及促進に協力するよう呼びかけていたという文書を配布していたことが発覚したようです。

マイナンバーカード制度には賛成の立場私自身の立場としては、マイナンバーカードという制度やそれが大きく普及することは賛成です。

公的手続き、税金、医療などでマイナン

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学校マスク「原則不要」通知の「原則」が現実的には難しいという事実

学校マスク「原則不要」通知の「原則」が現実的には難しいという事実

文部科学省は17日に、小中高校では4月の新学期から生徒や教員が新型コロナウイルス対策のマスクを基本的に着けなくてもよい、とする新指針を全国の教育委員会に通知したとのことです。

これによって、名目上は学校におけるマスクの「強制」は終了することになります。

「ただし」という条件とはいえ無条件というわけではないようです。

リンク先の記事にあるように、「登下校時に混み合う電車やバスに乗る際や、病院・

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「教育長が街頭でティッシュ配りをする」という笑い話

「教育長が街頭でティッシュ配りをする」という笑い話

全国的な教員不足が深刻化しています。

この対策に各地の教育委員会が的外れ、見当違いの改革を進めているニュースが連日にわたって報道されています。

ここ最近流行っているのは大学3年生から採用試験の筆記試験を受験可能にするというものです。これ以外にも教員免許の無い人を受験可能にするなどの施策もあるようです。

「ティッシュ配り」で求人高知県ではそうした人材不足に対して、街頭でのティッシュ配りを行って

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公立教員の残業手当不支給に関して、最高裁で敗訴という結果は当然、だが教員の扱いは不当

公立教員の残業手当不支給に関して、最高裁で敗訴という結果は当然、だが教員の扱いは不当

公立教員に関して残業手当が支給されないという問題に関して、県に未払い賃金約240万円の支払いを求めた訴訟の上告が棄却され、教員側が敗訴した1審、2審の判決が確定しました。

教員の働き方改革に関しては、教員採用試験の倍率が低下する中で社会問題となっていましたが、今回の結審はそうした動きとは逆行する判決のようにも見えます。

SNSでの反応教員界隈のアカウントではこの判決に対して落胆する声も大きいよ

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「60代男性が女子生徒の楽器や手鏡をく咥え、腹部を触る」に関する部活動や報道への雑感

「60代男性が女子生徒の楽器や手鏡をく咥え、腹部を触る」に関する部活動や報道への雑感

「60代男性が女子生徒の楽器や手鏡をく咥え、腹部を触る」という事件が報道されています。

この見出しやリンク先のABCニュースの動画を見る限りでは、非常に悪質な事件で、いわゆる「変態」が部活動指導者として紛れ込んでいたような印象を受けます。

またそうした指導へのクレームに対して教頭は対応を拒否したというニュースも出ています。

ここまでの流れだけを見れば、「学校に変質者が入り込んで、その対応を教

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教育実習におけるハラスメントの問題は教育業界の体質が影響している可能性がある

教育実習におけるハラスメントの問題は教育業界の体質が影響している可能性がある

先日、高知県において教育実習生が実習先の高校で担当教員からハラスメントを受けたことで記者会見を行った件が報道されていました。

ハラスメント被害を訴えたのは22歳の女子大学生で、高知市内の県立高校において教育実習を行っているときに繰り返しハラスメントに当たる言動を受けたということのようです。

詳しいハラスメントの内容ハラスメントは具体的には以下のようなものが行われたということです。

作成した指

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「予習」と「教材研究」の相違から小学校課程の学びや指導を共通テスト対策に生かしたい、という管見

「予習」と「教材研究」の相違から小学校課程の学びや指導を共通テスト対策に生かしたい、という管見

教員の日々の業務の重要なものに「教材研究」と呼ばれるものがあります。

これは授業に関して知識や理解を深めるために行うもので、業務であると同時にある種のスキルアップでもあります。

近年は教員の多忙さから「教材研究」の時間が取れない、といった問題が噴出しており、これが公教育の質の低下につながるとも言われています。

「予習」と「教材研究」の違いこう聞くと、門外漢の方はそれは「教材研究」とは授業の予

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