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スピノザと中井久夫 / 今月読んだ本(2024年8月)

今月読んだ本をご紹介します。
先月と比べて今月は全然読めていないです。というのも8月からエンジニアとして初の現場へ配属されていまして、あまり余裕をもてなかったのが理由でしょう。


1. 飯田真・中井久夫『天才の精神病理』

抜群に面白い。今年はスピノザとプルーストを中心に読むことにしているが、そういったこと関係なく中井久夫はぽつぽつ継続的に読んでいきたい。ある程度の客観性を前提として自然科学の知の体制(パラダイム)でさえ、その発見=創造にはその学者個人のの精神病理があらわれていること、言いかえれば自然科学においてさえ科学の歴史は全くの別様であり得たことを、各科学者の病跡学の記述からリアルに感じ、空恐ろしくも視界が開けるように感じた。

2. 國分功一郎『スピノザ』

スピノザ関連書籍。7月からぽつぽつ読んでいたが、お盆の帰省中に一気に読み終えた。最初100ページくらいは少し退屈だったが、それ以降はとても面白い。スピノザがあまり触れず、スピノザを読解したドゥルーズが貶めている人間の「意識」を取り上げて、それをポジティブなものとして描くところが面白い。「意識」は確かに自分の行動原因を明晰判明に十全に認識することはできず、どうしても目的論に囚われて「自由意志」をでっち上げてしまうが、それでもその意識=意志はその個人だけのものである。また、スピノザの「第三種の認識」=「直観知」が「第一種の認識」と「第二種の認識」による内的”過程”として”感じる”ものであるとする視点も自分にはなかった。私自身の解釈では「第三種の認識」は「いま・ここ」にしか「この私」があり得ることはなかった、そしてあることが確実だ、とふと驚くように去来する感覚だと理解している。

3. 中井久夫スペシャル(斎藤 環 NHK 「100分 de 名著」テキスト)

「100 de 名著」の中井久夫スペシャルのテキスト。斎藤環によって中井の主著3冊と、2本のエッセイが紹介されている。<エッセイの思想>の体現者である中井の著作の中で、どれを中心に読んでいけばいいか、ポイントは何かコンパクトにまとまっていてよかった。

4. デカルトの哲学原理 形而上学的思想 (スピノザ全集 第Ⅰ巻)

今年はスピノザを中心に読んでいる。『エチカ』に続いて読んだのはこれ。スピノザの名で彼の生前に出版された唯一の本。デカルトの哲学をコンパクトに、多少のスピノザ流の手入れを施しつつまとめている。やはり『エチカ』と比べてしまうので、そこまで面白くはなかった。出てくる用語もデカルトと近世のスコラ哲学のもので、どちらにも明るくないので分かりにくかっった。解説が充実していたが、スピノザ自身の言葉よりも解説の方が読みにくい。またいかにも研究者らしい細かなところを取り上げた解説で、スピノザ本文の射程と比べると、スピノザの研究をしているわけではない読者からすればこれも退屈だった。


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