紫藤市

しどう いち です。小説を書いています。主な創作作品ジャンルはライト文芸と女性向けFT。フィクションは書くのも読むのも好きです。

紫藤市

しどう いち です。小説を書いています。主な創作作品ジャンルはライト文芸と女性向けFT。フィクションは書くのも読むのも好きです。

マガジン

  • コドモのころの愛読書をオトナになって再読してみた。

    子供の頃に繰り返し読んでいた本を、大人になったいま読んでみての感想を綴った記事です。不定期で記事を書いては公開していく予定です。

  • 長編小説「代読屋ははざまを繙く」

    大正十一年の東京府。上野にある古書店・春夏冬堂の店先には「代読承リマス、但シ日本語ニ限ル」と書かれた貼り紙が掲示されていた。店主の孫娘で女学生の安芸董子が書いたものだが、代読を請け負うのは春夏冬堂に下宿している帝大生の迫間典也だ。典也は、手書きの文字から書き手の声を聞くという異能を持っていた。苦学生である典也の小遣い稼ぎとして代読屋を始めることを提案した董子は、懸想文、三行半など様々な手書きの物を持ち込んでは典也を悩ませることになる――。 様々な文書の行間、字間から書き手の文字にできなかった声を繙く代読屋と女学生の物語。

  • 長編小説「アンブローシア・レシピ」

    *創作大賞2024応募作品*18世紀、フランスに拠点を置いていた錬金術師集団『オルダス・マイン』が作り出した不老不死の霊薬『アンブローシア』。フランスで王政が倒れたのち、『オルダス・マイン』はこの霊薬と処方箋を大英帝国に持ち込んだが、誰の手に渡ることもなく行方不明になった。1914年9月、ケンブリッジ大学教授オリバー・モーガンが謎の服毒事件を起こす。モーガン邸でメイドとして働いていたミリセント・グレイは事件後に失業し、長兄ウェインが医師として働くロンドンへ戻ってきた。やがてモーガン教授の研究が不老不死の霊薬であることを知ったミリセントは、兄と一緒に霊薬の処方箋『アンブローシア・レシピ』探しに巻き込まれることになる。不死薬の処方箋を巡るファンタジー×ミステリ。

  • 小説「翡翠を填めし鬼の譚」

    *創作大賞2024応募作品* 時は平安、後一条帝の御代。渡辺綱は一条戻橋で襲ってきた鬼・茨木童子の腕を斬り落とし、邸宅に持ち帰って保管していたが、屋敷内で怪異が頻発して困っていた。そこへ、ひとりの若い巫女が安倍晴明の使いで鬼を鎮めるお札を持って訪ねてくる。美鳥と名乗った巫女は、鬼の腕を見せて欲しいと綱に頼んだ。美鳥は、綱が腕を切った鬼が自分の故郷を滅ぼした仇であるかを確認したいと告げ、仇である鬼の手には、翡翠の勾玉が填まっているのだと語り出す。 仇である鬼を探し、越後から都へとやってきた巫女の奮闘の物語。

  • 短編小説集

    自作の短編小説のまとめです。

最近の記事

11月23日(土)

インフルエンザの予防接種を受けてきました。 採血や他のワクチン接種よりも少々痛かったです。 インフルエンザに対する防御力が少しだけアップしました。

    • 11月21日(木)

      昨日の夕食はシチューでした。 今日の夕食は鍋でした。 食卓がすっかり冬になりました。

      • 11月18日(月)

        明日は今日より寒くなる予報なので、フリースのパジャマを着ました。 寝具は毛布を一枚足しました。 今夜も暖かくして眠れる幸せを感じつつ、おやすみなさい。 #3行日記

        • 11月7日(木)

          立冬ですね。 今日から冬ですと言われると、槇原敬之さんの「冬がはじまるよ」を聴きたくなります。 毎年聴きたくなります。 #3行日記

        マガジン

        • コドモのころの愛読書をオトナになって再読してみた。
          1本
        • 長編小説「代読屋ははざまを繙く」
          12本
        • 長編小説「アンブローシア・レシピ」
          30本
        • 小説「翡翠を填めし鬼の譚」
          6本
        • 短編小説集
          8本

        記事

          「怪人二十面相」江戸川乱歩を読んで

          小学生の頃、わたしはポプラ社から出ている江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズを愛読していました。 小学一年生のときに母が「これ、面白いよ」と買ってくれたのが「怪人二十面相」です。 わたしはこれをすぐに読み切り「おもしろかったからつづきかって」と言いました。 すると母は「もう一度読んでみたらいいよ」と言い、それもそうかと思い、その日のうちにもう一度読みました。そしてさらにもう一度読み、「おもしろかったからつづきかって」と言いました。 こうしてわたしのポプラ社の「少年探偵」シリーズ読

          「怪人二十面相」江戸川乱歩を読んで

          「アンブローシア・レシピ」閑話2

          1911年7月24日 ロンドン 夏の眩しい日差しが降り注ぐ月曜日の朝、ロンドンのマイター街は職場へ出勤する人、学校へ登校する学生たちであふれていた。通りでは乗り合いバスやタクシー、自家用車が排気ガスを吐き出しながらひっきりなしに警笛を鳴らして走っている。 「そこのひったくり! 待ちなさい!」  周囲の騒音に負けじと15才のミリセント・グレイが声を張り上げる。 「その鞄を返しなさいっ!」  彼女の視線の先では10才くらいの少年が婦人物の鞄を抱えて人混みを縫うように走っている。

          「アンブローシア・レシピ」閑話2

          「とうきび畑でつかまえて」を読んで

          北海道は、西日本在住のわたしにとっては春夏秋冬いつ行っても楽しめる観光地です。 まだ秋の北海道は行ったことがありませんが、春夏冬は行きました。 北海道って畑の広さがヨーロッパみたいで、日本なのに地平線が見られるんですよね。北海道を旅していると朝から晩までひたすらなにかを食べています。ソフトクリームも1日2個までなら「せっかく来たんだし食べずに帰って後悔するよりは!」と定番の言い訳をしながら食べます。3個でも自分に同じ言い訳をしつつ食べますが。 そんな北海道の観光地のひとつ富

          「とうきび畑でつかまえて」を読んで

          「暗澹を祓う」を読んで

          日本の歴史の中で幕末から明治にかけては、近代化の波が一気に押し寄せてきているものの、まだまだ魑魅魍魎があちらこちらに存在していると思われていた時代です。 「暗澹を祓う」はそんな時代の、ある祓い屋の青年の物語です。 一言で感想をまとめると「幕末っていいよね!」なのですが、さすがに大雑把すぎてなにがいいのか伝わらないと思われるので、もうすこし。 この物語には維新志士とか攘夷志士とか浪士とかは登場しませんが、上野界隈の庶民の暮らしぶりと、世事によって変わる景色などが物語の中で随

          「暗澹を祓う」を読んで

          「俺たちは犯人じゃないのでこれはほぼ密室です」を読んで

          ミステリーに密室、高校生、安楽椅子探偵、というキーワードが並んだだけで「好物です」とわたしは即答します。 この「俺たちは犯人じゃないのでこれはほぼ密室です」は、そんなミステリーの定番かつ重要キーワードが含まれるミステリー作品でした。 バラバラ殺人事件が起きたマンションの、事件現場近くの隠しカメラに映っていた高校生三人。このうちの一人が事件の捜査本部がある所轄の警察官の息子だった、ということで、重要参考人になった高校生の一颯が自分の手元にある情報と伝えられた情報を元に推理を

          「俺たちは犯人じゃないのでこれはほぼ密室です」を読んで

          「翡翠を填めし鬼の譚」第六話(終)

           いつの間にか美鳥は意識を失っていたらしい。目を覚ますと中天に太陽が昇っていた。  妻戸の向こうに広がる庭には、雨が降っていたことなど覚えていないような青空が広がっている。  美鳥の枕元には、陰陽博士が座っていた。 「そなたは三日も眠り続けていたのだよ」  老人は美鳥が目を開けたことに気付くと、皺だらけの顔に安堵の表情を浮かべて告げた。 「渡辺様は、いかがなさいましたか」 「大怪我をしたものだから、療養中だ。十日もすれば傷は癒えるだろう」 「北の方様が亡くなられて、さぞご落胆

          「翡翠を填めし鬼の譚」第六話(終)

          「翡翠を填めし鬼の譚」第五話

          「そして、ようやく都に茨木童子が現れました。かつて大江山で自分に太刀傷を負わせたこちらの殿に復讐するため一条戻橋で待ち伏せ、殿はその右腕を切り落としたと聞きました。わたしはその右腕の手を見たいのです」  美鳥が語った身の上話に、渡辺綱と北の方は胸を打たれた様子で嘆息を吐いた。 「そのような苦労があったとは、なんと不憫な子でしょう」  北の方はまなじりに浮かんだ涙を袖で拭った。 「あの爺は儂が鬼の腕を切り落としたと聞いた途端なにやら面白がっている様子だったが、こうなるとわかって

          「翡翠を填めし鬼の譚」第五話

          「翡翠を填めし鬼の譚」第四話

           春の雪解けを待って美鳥は都へ向かって出発した。  弥彦は、やはり最初に美鳥と出会った当時と変わらず十二、三歳の少年の姿だ。  旅の連れは弥彦の他に、商人の男がいた。  この男は商いのために頻繁に越後と都を行き来しており、かつて美鳥から翡翠の屑石を買っていた縁で、都まで連れ立って行ってくれることになったのだ。陸奥で金や絹布、馬などを買い求め、越後で翡翠を手に入れ、さらに都までの道々で商売をしながらの道中だった。  美鳥と弥彦の路銀は、帰郷後に翡翠で支払うということになった。

          「翡翠を填めし鬼の譚」第四話

          「うそつきサイキック」を読んで

          子供の頃、超能力が欲しいと思ったことがある。 テレポーテーションができたら、とても便利だと思う。行きたいところに一瞬で移動できるなんて、夢のようだ。 いまでも、ドラえもんの道具の中で一番に欲しいのは「どこでもドア」だ。あれが手に入れば、自分だけではなく、家族や友人、知人も一緒に移動ができる。月や火星に移動できなくていいので、地球上であれば「どこでもドア」で移動できると嬉しい。 そして、南極に行きたい。 マンガやアニメの超能力は、万能ではないことが多い。 確か、「エスパー魔美

          「うそつきサイキック」を読んで

          「翡翠を填めし鬼の譚」第三話

           弥彦とともに歩く奴奈川神社までの道中は、七つの美鳥には過酷なものだった。  美鳥の背丈よりも高い草が生い茂った道なき道を、暗闇の中ひたすら歩くのだ。  松明のような灯りはない。灯りは夜行性の獣を遠ざけることはできるが、野盗に居場所を知らせることになる。  美鳥の郷を襲った野盗はすでに頸城の郷から姿を消したと弥彦は言ったが、野盗はどこにでもいるものだ。とくに、人郷外れた山の中に、野盗の隠れ家はある。  空の月は半分欠けていた。雲はほとんどないが、星は見えない。暗闇の中を手探り

          「翡翠を填めし鬼の譚」第三話

          「翡翠を填めし鬼の譚」第二話

           越後の南西部、姫川の下流域に美鳥が生まれ育った郷はあった。  ほど近い場所に奴奈川姫を祀る奴奈川神社があり、美鳥の郷にはその分社が建てられていた。  母方の叔母が分社の巫女を務めていた縁で、美鳥は八つになったら奴奈川神社で巫女見習いとして修行に上がることが決まっていた。父親は頸城郡司の屋敷で下男として働いており、母親も同じ屋敷で下女として働いていた。きょうだいは多く、美鳥には合わせて八人の兄と姉がいた。  兄姉が幼い美鳥の世話を焼いてくれることはあっても、遊び相手にはなって

          「翡翠を填めし鬼の譚」第二話

          「翡翠を填めし鬼の譚」第一話

           時は平安、後一条帝の御代――。  油小路沿いの渡辺綱邸では、朝から使用人たちが騒いでいた。 「今日は朝から風もないのに几帳がばたばたと倒れてしまいよりますわ」 「こちらは御簾が勝手に巻き上がったり落ちたりしてますえ」 「半蔀もきいきいとうるさいったらかないしまへんなぁ」  そう広くはない邸内では調度類がひっきりなしにがたがたと音を立てており、とにかくやかましい。まるでそこだけ夏の嵐がやってきたような様相だ。  庭の杏の木の枝という枝にたわわに実った青い実が、風にあおられてゆ

          「翡翠を填めし鬼の譚」第一話