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「暗澹を祓う」を読んで

日本の歴史の中で幕末から明治にかけては、近代化の波が一気に押し寄せてきているものの、まだまだ魑魅魍魎があちらこちらに存在していると思われていた時代です。
「暗澹を祓う」はそんな時代の、ある祓い屋の青年の物語です。

一言で感想をまとめると「幕末っていいよね!」なのですが、さすがに大雑把すぎてなにがいいのか伝わらないと思われるので、もうすこし。

この物語には維新志士とか攘夷志士とか浪士とかは登場しませんが、上野界隈の庶民の暮らしぶりと、世事によって変わる景色などが物語の中で随所に描写されています。徳川幕府が解体され明治の新政府となり、時代が混乱する中でもたくましく生活している人々の姿がいいです。
時代小説としても、お薦めです。

また、主人公である亘は祓い屋をしているものの、なにか特別な才能があるわけではなく、評判が良かった父のおかげで細々と祓い屋としての仕事を得ている状態です。そんな亘が、ある依頼先で出会ったアキと交流する中で状況が変わっていくのですが、急になにかの力に目覚めたりするものではなく、亘はひたすら足掻いたり落ち込んだりしています。それでも時代は待ってくれず、変わっていきます。
そんな世界で、亘の人柄と出会いによって少しずつ状況が開けてくるところが好きです。

わたしはホラー(怪談)は苦手なのですが、こういう妖異の物語は好きです。
どちらも怪異の根源は人なのでしょうけれど、ホラーって怪奇現象がループするから苦手なのかもしれません。

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