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長編小説「アンブローシア・レシピ」

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*創作大賞2024応募作品*18世紀、フランスに拠点を置いていた錬金術師集団『オルダス・マイン』が作り出した不老不死の霊薬『アンブローシア』。フランスで王政が倒れたのち、『オルダ…
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記事一覧

「アンブローシア・レシピ」第1話

1793年1月21日 パリ その日、曇り空で覆われたパリの町は朝から騒々しかった。  昨…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第2話

1794年8月3日 ロンドン 夏の陽射しで水面が輝くテムズ川のほとりに立つウェストミンス…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第3話

1914年9月30日 ケンブリッジ 1914年9月30日午後8時。  ケンブリッジのプラ…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第4話

1798年7月21日 ロンドン 夏のロンドンほど劣悪な環境はない、と金曜日は窓越しに鉛色…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第5話

1914年10月3日(1) ロンドン(あぁ、もう、納得できないことだらけだわ!)  深く…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第6話

1914年10月3日(2) ロンドン「リーデンホール街の教会前で! すぐここに運んでくれ…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第7話

1914年10月3日(3) ロンドン ミリセントは1896年に南アフリカのトランスヴァールで生まれた。  父親はイングランドのポーツマス出身だがミリセントが生まれる前からヨハネスブルグの鉱山で働いており、両親と三人の兄と三人の姉の一家九人で暮らしていた。  1899年にトランスヴァールでボーア戦争が勃発し、翌年にはその頃グレイ一家が住んでいたヨハネスブルグの町での戦闘が激しくなってきたため、家族で両親の母国であるイングランドへ戻ることになった。  ところが、イングランドへ向か

「アンブローシア・レシピ」第8話

1914年10月3日(4) ロンドン 夕方まで外科の診察室で眠っていたウェインは、目を覚…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第9話

1914年10月3日(5) ロンドン「でも、刺された場所によっては命が助かっても身体に障…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第10話

1914年10月3日(6) ケンブリッジ サイモン・エイプリルはその日の午後、ひたすら主…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第11話

1914年10月4日(1) ロンドン「ウェイン! これ見て!」  午前7時、ミリセントは…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第12話

1914年10月4日(2) ロンドン オニールに食事を運んだ後、ミリセントはウェインの部…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第13話

1914年10月4日(3) ロンドン 朝食後、ウェインの傷の状態を確認したバートランドは…

紫藤市
6か月前
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「アンブローシア・レシピ」第14話

1914年10月4日(4) ロンドン 午後6時を過ぎて、露店で購入した夕食のフィッシュアンドチップスを立ったまま食べ終えたその男は、丸めて捨てようとした包み紙代わりの新聞の紙面に目を留めた。  新聞は今日の日付のものだった。  いくつもの記事が並ぶ紙面の一部に『プリースト診療所の医師、襲われる』と書かれていた。  男はその新聞を手早く広げると、西の空に傾きかけた太陽に紙面を向けるようにして、字を目で追う。 (昨日、俺が襲った奴のことだな。そうか、死んだわけではないのか)  相