【書評】『クリスマス・キャロル』を再読。良い評価が欲しいんだよね。だって人間だもの。
ロッシーです。
新年あけましておめでとうございます。
ディケンズの『クリスマス・キャロル』を読みました。
とっくにクリスマスが終わってもう正月なのに、なんで『クリスマス・キャロル』を読んでんねん!時期外れやろ!
というツッコミは想定内です(笑)。
なんとなく、新年になったら読みたくなったのです。なんででしょうね?
まあ、それはともかく、楽しく読みました。
改めて今回読み直してみると、やはり昔読んだときとは、受けた印象が違います。
今回読んで思ったのは、『クリスマス・キャロル』は、承認欲求について描いた物語なんだなぁ〜ということ。
そういう切り口から俯瞰すると、ざっくり以下のようなストーリーになりました。↓↓↓
「俺は他人の評価なんかどうでもいい。」
と思ってビジネスで成功した人間(スクルージ)が、自分の死後の様子を体験することで価値観が逆転し、
「やっぱり、めっちゃ評価欲しい!」
となり、生き方が変わりました。めでたしめでたし。
違ってますかね? まあ、私には今回そう思えたということなのでお付き合いください。
そもそも、スクルージは悪い人間ではなくて、単に「弱さ」を抱えている人間なんですよね。
貧乏で孤独だった幼少時代、恋人との別れなど、過去の色々なトラウマがあって、そのままこじらせているキャラというわけです。
そのせいで、お金に対して非常に吝嗇だし、他人に容易に心を開くことがないわけです。でも、それが悪いわけではないですよね。そんな人はこの世の中に沢山いるでしょう。
でも、彼の「弱さ」は、ビジネスの世界では一転して「強み」になったようで、ビジネスマンとしては、成功しているわけです。人間万事塞翁が馬ということですね。
つまり彼は、個人としては結構とっつきにくい陰キャですが、ビジネスマンとしてきちんと社会に貢献してお金を稼いでいるわけです。
いいじゃないですか。そういう人間がいたって。
でも、スクルージの周囲の人間達は、そういうことには気が付かないわけです。
彼らは、スクルージが自分にどう接するのか、どういう言葉をかけてくれるのか、どういう利益をもたらしてくれるのかに、大いに関心があるわけです。
スクルージは、そんな「大衆」の評価については全く気にしていなかったのでしょう。彼が興味があったのは、とにかくビジネスに徹して蓄財をすることでした。まさに「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を具現化したような人間だったのかもしれません、と書くとちょっと褒めすぎかもしれませんが(笑)。
しかし、そんなスクルージもやはり死という恐怖には勝てません。精霊により自分の死後の扱われ方や噂話、評判がいかにひどいのか、まざまざと見せつけられると、
「やっぱりもっと生きている間に『いいね!』が欲しい!」
と思うようになり、それまでの生き方を180度変えるわけです。
スクルージが生き方を180度変えるこの瞬間こそ、この小説の真骨頂であり、読者が最もカタルシスを感じる部分なのでしょう。
「やれやれスクルージさんよ、やっと分かったか。それでいいんだよ。」
「俺たち(大衆)のところに帰って来たな!おかえり!」
「そうそう、金貯めたって天国には持っていけないぜ。」
「金で愛は買えないんだよ。大事なことは、親しい仲間達との連帯、家族の団らんだよ。」
「結局、私達庶民の暮らしが正しいってことよね。」
「人は独りでは生きられないんだよ。周囲のことをもっと大切にしなさい。そうすれば、あなたも大切にされますよ。」
・・・などなど。
そういう風に読者は思うことで、自分達はやはり正しいんだという感覚をくすぐられるわけです。
「他人の評価を気にしないことが大事」
という言説は昨今ありふれていますが、どんな人間であっても、良い評価をもらいたいものなのだと思います。たとえ死後であっても。
それはおそらく、評価を気にする人間で構成されている集団のほうが、生き延びるために有利だったからではないでしょうか。
もし、本当に他人の評価を気にしない人間ばかりが集団を構成していたら、自分だけ資源を独占し、周囲に分配する輩ばかりになるでしょうし、下手をすると、犯罪者とか「無敵の人」ばかりになってしまうかもしれません。そういう集団が生き延びることはないでしょう。
だから、評価を気にするのは人として自然なことなのだと思うのです。それが行き過ぎて、無理に良い評価を得ようとすると、しんどくなるわけですけどね。
noteも同じです。
「私は、スキを得る目的で記事を書いているわけじゃない!」
といったところで、普通の紙のノートに記事を書いて誰にも見られないままよりは、スキをもらえる「可能性」のあるプラットフォームに投稿するほうを選択するわけです。
良い評価をされるって嬉しいものですよね。
同意される方は、ポチっとハートマークを押してくださると幸いです(笑)。
今年もよろしくお願いいたします。
Thank you for reading!