記事一覧
リハビリつれづれ 投稿について
9月から細々と続けて参りましたが、一身上の都合により小説投稿をしばらく休止しようと思います。
スキを付けて下さった皆様、ありがとうございました。
康永 健
リハビリつれづれ 16
なんだか今朝は忙(せわ)しない。いつもであれば目覚ましを止めてからスヌーズ機能を活用して二度寝をするはずなのに二度寝で全然寝れる気がしない。そこで仕方なく出勤前の準備を行う。鏡の自分を見るとどこか違和感を感じる。そしてこの違和感は視覚的な問題だけではない。両耳の上部分を触るとジョリジョリとした違和感がある。いつもであれば洗面所の滞在時間なんて十分もかからないのであるが、今日は昨日美容院の人に教え
もっとみるリハビリつれづれ 15
私は少し緊張している。目の前にある建物の看板には“Wake me up”とおしゃれな横文字が並んでいる。入り口を入ると、ウッド調と白を基調とした明るい雰囲気の中に観葉植物が飾られている。中で座っている人たちが、どこか都会の雰囲気を漂わせているのは、大きな鏡の横にコートがかかっているのと、皆がファッション誌を読んでいるからであろうか。立って仕事をしている人たちは、甘いマスクとハサミを巧みに使いこな
もっとみるリハビリつれづれ 14
「ただいまー。」
「おかえりー。今日はちょっと遅かったね。」
「とりあえず風呂入る。今日の夕飯なに?」
「餃子。チンして食べてー。」
「はいー。」
私は手を洗い、弁当箱を出し、そのまま風呂場に向かう。毎日行っている一連の動作は脳みそが疲れていても、何も考えず行うことができる。シャワーを浴び、少しばかりリラックスしたところでお皿にぎゅうぎゅうになって入っている餃子を電子レンジに入れた。
「あっ、”
リハビリつれづれ 10
次の患者さんは本を読むのがお好きな中野ウメさんである。
「おはようございます。よろしくお願い致します。」
と、小さな体から話される丁寧なあいさつは、私の背筋を伸ばさせる。
「お食事どうですか?食べれてますか?」
「昨日はね、完食しました。お魚のみぞれ煮がでたの。白身でね。タラだったのかしら?私は白身魚が大好きなの。昨日はご飯も全部食べちゃいました。」
「それはよかったです。ご飯を食べなければ力
リハビリつれづれ 9
「おはようございますー!」
本日も最初の患者さんは右膝の人工関節置換術をされた山口さんである。今日も山口さんと同室の田中さんと一緒に女子会をしながらリハビリ室に来室された。
「先生、おはようございます。今日はね、リハビリ室に一人で言っていいって看護師さんに言われたんだけど、ちょっと不安だったからお隣さんと一緒に来ちゃった。今日もよろしくお願いします。」
歩くことが不安であればおしゃべりする余裕
リハビリつれづれ 7
「ただいまー。」
「おかえり。お風呂空いてるよ。」
最寄り駅から十五分、築四十年の一軒家に私は両親、弟の優人との四人で住む。私が帰宅すると、大学生の優人と仕事終わりの父親はリビングでごろごろとテレビを見ており、母親は食事の後片付けをしている。私は、こびりついている疲労感をシャワーでなんとか洗い流し、母親の作ってくれた焼きそばを電子レンジで温める。
母親や実家のありがたみを感じるのは、社会人にな
リハビリつれづれ 6
このあと背骨の手術をしたおじいちゃんと、お腹の手術をして体力が落ちてしまったおじさんのリハビリを行って本日の臨床業務は終了した。
ただ、ここで“はいさようなら”と帰れるわけではない。今日担当した患者さんのカルテを記入しなければならない。そして、今日はお昼にカルテ記入をさぼったため午前中の患者さんの分のカルテも書かなければならない。カルテは電子カルテであり前日の内容をコピー&ペーストができるので