なぜ悪人は上に立つのか? ブライアン・クラースが解き明かす権力構造の闇
「なぜ、あんな人がリーダーに選ばれたのだろう?」
「権力を持つと人は変わるのだろうか?」
最近のニュースを見てるとそう思いませんか?
今日は誰もが一度は抱くそんな疑問に答えてくれる本を紹介します。
ブライアン・クラースという人が書いた『なぜ悪人が上に立つのか』です。
本書は、進化論、人類学、心理学など多角的な視点から、人間社会における権力構造の不都合な真実を解き明かす、刺激的な一冊です。
進化が生んだ「ミスマッチ」
クラースは、現代社会における権力の問題を「進化のミスマッチ」という概念で説明します。
私たちの祖先は、狩猟や部族間の抗争を生き抜くために、体格が大きく、攻撃的なリーダーを選ぶ必要がありました。
しかし、現代社会では、そのようなリーダーは必ずしも適任ではありません。
現代社会で求められるのは、協調性や共感能力、複雑な問題解決能力といった資質ですが、私たちは依然として、過去の環境に適応したまま、大きくて強そうな人物を指導者に選びがちです。
たとえば、企業のCEOを選ぶ際、私たちはカリスマ性があり、断固とした態度をとる人物に惹かれがちですが、そのような人物が必ずしも優れた経営者であるとは限りません。
この「ミスマッチ」こそ、悪人が上に立つ原因の一つと言えるでしょう。
権力に引き寄せられる「ダークトライアド」
本書では、権力に引き寄せられるパーソナリティとして、「ダークトライアド」と呼ばれる3つの特性が挙げられています。
それは、ナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーです。
ナルシシズム
自己中心的で、賞賛や承認を求める傾向。
ナルシシストは、自分が特別で優れていると信じており、他人を利用したり、貶めたりすることに抵抗がありません。
マキャベリアニズム
他人を操作し、目的のためには手段を選ばない冷酷さ。
マキャベリストは、権力や地位を得るためには、嘘をついたり、裏切ったりすることを厭いません。
サイコパシー
良心の呵責や共感性の欠如、衝動的な行動。
サイコパスは、他人の感情を理解することができず、自分の利益のために行動します。
これらの特性を持つ人は、権力を得るために手段を選ばず、周囲を欺き、利用することに長けています。
そして、一度権力を握ると、その力を私利私欲のために利用し、腐敗していく可能性が高いのです。
歴史上の人物で言えば、ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーは、ナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーのすべてを兼ね備えていたと言われています。
制度と個人の相互作用
では、悪人が上に立つのは、個人の問題だけなのでしょうか?
クラースは、制度もまた、権力の腐敗を助長する要因となり得ると指摘します。
チェック・アンド・バランスが機能しない組織や、透明性の低い社会では、権力者は不正や腐敗に手を染めやすくなります。
たとえば、独裁国家では、権力者が絶対的な権力を持ち、その行動を監視する機関が存在しないため、腐敗が蔓延しやすくなります。
逆に、権力者の行動を監視し、説明責任を明確にする制度があれば、権力の腐敗を防ぐことができます。
民主主義国家では、議会や司法、メディアなどが権力者を監視し、不正が行われないよう牽制しています。
権力から身を守るには?
クラースは、悪人が権力を握ることを防ぎ、権力の腐敗を防ぐための具体的な方策も提示しています。
それは、権力者に監視の目を意識させ、責任の重みを自覚させること、そして、模範的な指導者を育成することです。
具体的には、情報公開を促進し、市民が権力者の行動を監視できるようにすること、権力者に対する倫理教育を強化すること、リーダーシップのある人材を育成することなどが挙げられます。
私たち一人ひとりが、権力の問題に関心を持ち、社会全体の意識を高めていくことが重要です。
感想
クラースは、進化論、人類学、心理学など多様な学問分野の知見を駆使し、悪人が権力を握るメカニズムを解き明かしています。
特に、「進化のミスマッチ」という概念は、現代社会における権力の問題を理解する上で非常に示唆に富むものです。
しかし、本書では、個人のパーソナリティや制度の問題に焦点が当てられており、社会構造や文化的な要因については十分に考察されていないという側面もあります。
まとめ
『なぜ悪人が上に立つのか』は、権力という普遍的なテーマを、進化論、人類学、心理学といった多様な視点から分析し、権力構造の闇に光を当て、悪人が台頭するメカニズムを多角的に分析した一冊です。
進化のミスマッチ、ダークトライアド、制度の問題など、本書で提示された様々な要因は、私たちが権力について深く考えるきっかけを与えてくれます。
権力に魅了される人間の心理、権力の腐敗を防ぐための制度設計、そして、リーダーシップのあり方など、本書は現代社会における重要な課題を提起し、より良い未来を創造するための指針を示唆しています。
本書で提示された知見は、より良い社会を築くためのヒントになるはずです。
みなさんもぜひ読んでみてください!