成功した失敗に学ぶ未来!『インベンション・アンド・イノベーション』/バ-ツラフ・シュミル
「画期的な発明が世界を救う!」
そんなニュースを目にするたびに、ワクワクしませんか?
でも、ちょっと待ってください。
歴史を振り返ってみると、素晴らしい発明が必ずしも私たちの生活を豊かにしたとは限りません。
ノーベル賞の歴史を見ていくと、成功した失敗に彩られていることに気付くはずです!
原子力発電や超音速旅客機コンコルド……期待された技術が、なぜ社会に浸透しなかったのか?
この本は、そんな疑問に答えてくれるだけでなく、私たちが本当に未来を形作るために必要なことを教えてくれます。
今回紹介するのは、発明(Invention)とイノベーション(Innovation)の違いを歴史的な視点から解説し、未来を形作るためのヒントを教えてくれる本です。
主な内容
発明とイノベーションは異なる 発明は新しい技術やアイデアを生み出すこと。一方、イノベーションはそれを社会に実装し、価値を生み出すプロセスのこと
イノベーションは必ずしも加速しない 現代社会ではイノベーションが加速しているという見方が一般的だが、シュミル氏は歴史的な事例を分析し、必ずしもそうではないと異論をとなえる
過去の事例から学ぶ 原子力、脱炭素化、指数関数的成長など、現代社会における重要なテーマについて、過去のイノベーションの成功と失敗から学ぶべき教訓を提示する
このようなことが、詳しい事例を挙げながら解説されています。
もっと詳しく見ていきましょう!
主なポイントをまとめてみた
開発とイノベーション、イノベーションは加速しない
現代社会ではイノベーションが指数関数的に加速しているという言説が一般的。だが。著者は歴史的事実を検証し、この言説に疑問を投げかける
原子力発電や超音速旅客機コンコルドなど、かつて期待された技術が必ずしも社会に浸透しなかった事例を挙げ、イノベーションの進展は必ずしも直線的ではないエビデンスを提示
ムーアの法則に代表されるように、技術の進歩が指数関数的に加速するという考え方が広まっているが、著者はこの考え方に疑問を呈す
コンピュータの処理能力の向上は、物理的な限界に直面しており、無限に加速することは不可能であるという
発明とイノベーションの違いを明確化し、発明は新しいアイデアや技術を生み出すこと、イノベーションはそれを社会に実装し、価値を生み出すプロセスであると定義づける
現代社会におけるイノベーションの重要性を説きつつも、一方で過剰な期待や誇大妄想にとらわれる現実に警鐘を鳴らす
物理的な限界や資源の制約などを考慮すると、技術の進歩は必ずしも指数関数的に続くとは限らないと鋭く指摘する
失敗から学ぶ(成功した失敗)
チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故などの事例を挙げ、原子力発電のリスクと限界について詳述。原子力発電は、かつてエネルギー問題の解決策として期待されたが、事故やコストの問題などから、その普及は停滞している
原子力発電の失敗から、技術的な課題だけでなく、社会的な受容性や経済的な持続可能性も考慮する必要があると持論を進展させていく
原子力発電は、技術的には成功したものの、社会的な受容性や経済的な持続可能性の観点から見ると両義的であり、失敗となり得る正負の側面をもつという
気候変動(技術だけでは解決しない)
気候変動は、現代社会が直面する最も深刻な課題のひとつ。だが、技術的な解決策が存在しない
脱炭素化に向けた取り組みにおいて、技術革新だけでなく、むしろ社会システムの変革や個人の行動変容こそが重要であることを問いただす
イノベーションは社会をかたち作る
イノベーションは、単に新しい技術や製品を生み出すだけでなく、社会のあり方や人々の生活様式を大きく変える可能性があると指摘
過去のイノベーションが社会に与えた影響を振り返り、未来のイノベーションがどのような社会を形作るのかを考察している
期待と現実
歴史的に、多くの発明が過剰な期待とともに登場したが、必ずしも社会に浸透せず、期待外れの結果に終わった事例をいくつも紹介
例えば、1950年代に未来のエネルギー源として期待された原子力発電が、安全性やコストの問題から、限定的な普及にとどまっていることを指摘
脱炭素化を急いではいけない
気候変動対策として脱炭素化が急務とされているが、拙速な取り組みはかえって逆効果になる可能性があると警告する
むしろ再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上など、現実的な解決策を模索する必要性を説く
イノベーションのリスクと責任
イノベーションは、社会に大きな利益をもたらす可能性がある一方で、予期せぬリスクや負の側面も伴うことを認識する必要があるという
遺伝子編集技術や人工知能など、新たな技術の開発と利用には、倫理的な配慮や社会的な責任が求められると論じていた
このように、本書はイノベーションに関する楽観的な見方に警鐘を鳴らし、過去の失敗から学ぶことの重要性を訴えています。
技術者、研究者、ビジネスパーソンだけでなく、一般読者にとっても、イノベーションをより深く理解するための貴重なことを教えてくれます。
感想
この本は、新しい技術や発明が必ずしも良い未来をもたらすとは限らない、ということを教えてくれる本です。
この本を読んで良かったと思うのは、過去の失敗例から学ぶことができる点です。例えば、原子力発電や超音速旅客機など、かつては夢の技術として期待されていたものが、実際には様々な問題を抱えていたことを知ることができます。
著者は、豊富な知識と鋭い視点で、イノベーションの複雑な問題を分かりやすく解説しています。難しい言葉を使わずに、データに基づいた冷静な分析で、読者に深く考えさせる内容になっています。
ただ、少し残念だったのは、イノベーションのマイナス面ばかりが目立ってしまい、著者の悲観的なビジョンが文節に垣間見えることです。しかし、著者は必ずしもイノベーションの可能性を否定しているわけではなく、むしろ現実をしっかりと見据えることの大切さを訴えているのだと感じました。
全体として、この本は、イノベーションについて深く考えさせられる、とても価値のある本だと思います。
特に、新しい技術や発明に関心のある人や、未来をより良くしたいと願う若い世代にぜひ読んでほしいと思います。
こちら、単行本だと1980円ですが、Kindleだと半額(990円)で買えるので、Kindleで読んでしまうのがおすすめです。
成功は失敗し、
技術の未来は過去にあるという。
一見、矛盾するようで整合性の取れたこの理論。
あなたも知りたくなりませんか?
【編集後記】
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